100日後にくっつくいちじろ96日目
「兄貴、おつかれさま!」
「一兄お疲れ様です!」
一郎が帰宅すると、弟達が玄関へ駆けつけた。
「おっ、気が利くなー」
数時間前、依頼に出掛けた一郎から『仕事用の資材をホームセンターで買ってから帰る』とメッセージがあった。今朝、車で仕事に行ったはずなので、きっと沢山の荷物を抱えて帰ってくるだろうと予測し、二人は荷物運び要因で兄を出迎えた。案の定、一郎の両手には大きなホームセンターの袋。まだあるらしく、一旦、荷物を二人へ任せて車へ戻る一郎。三郎は重い……とほぼ引きずりながらどうにかリビングまでそれらを運ぶ。その間に二郎はリビングまで荷物を運び終え、弟の非力に呆れながら代わりに運んでやった。
「おーっし、これで全部だ」
再び戻ってきた一郎。バタンとドアを閉め、車のキーを所定のフックに引っかける。
一郎の購入品を覗き込むと、中身は工具やら資材ばかり。大掛かりな日曜大工でもするのだろうか。顔を上げて兄へ尋ねる。
「どんな仕事?」
すると一郎は、アー、と少し言い淀んで、それから答えた。
「あー、二泊三日で泊りがけの仕事が入ったんだ」
「ええっ!?」
弟達は声を上げて驚いた。一郎は荷物をリビングの床に下しながら続ける。
「いや、急な依頼でさ。古民家のリノベーションを手伝うことになったんだ」
「じゃ、じゃあ俺も行くよ!」
「そうですよ、僕も行きます」
「お前らは学校あるだろ」
「そ、そんなあ……」
明日、朝に出発して、戻ってくるのは三日後の水曜日、夜。
「悪いが俺が留守の間、二人で留守番頼んだぜ」
ぽん、と頭を撫でられる。泊りがけの依頼ならこれまでも何度かあったけれど、基本的に日帰りで行ける場所であれば兄は夜遅くなってもその日のうちに帰ってくれていたし、泊りがけなら兄弟三人で行ったり、どうにか一泊でおさめていた。それが今回は丸三日も不在にするという。
「子供じゃないんだから、大丈夫だけど……」
「ハハ、頼んだぜ」
仕方がない、仕事なのだから。二郎と三郎は肩を落としながらも頷いた。
「俺がいないからって、喧嘩ばっかするんじゃねえぞ」
「しないよ……!」
「二郎が馬鹿なことしなければ、しません」
「んだとコラァ」
「もうはじめてんじゃねえか」
まったく、と苦笑いしながら水を一杯飲み干す一郎。カレンダーに目を向け「ああ、そうだ」と零した。
「帰ってきたら二郎の誕生日パーティーしような」
「そっか、もう二月ですもんね」
「い、いいよ……そんな。忙しいんだし」
「馬鹿、祝わせてくれよ」
な、と笑った一郎に「ありがと……」と二郎は頷いた。
2025.2.1