もちもち 談話室前の廊下を、俺は横切ろうとする。用は特に無かったけど、ちらっと横目で覗いてみた。ソファーに大きな背中が一つ視界に入る。座っている人物が誰なのかは、すぐに分かった。だって俺の大好きな人の背中だから。
沢北は他に誰も居ないことを確認して、ゆっくりそーっと近づいていく。
「かーわたさん」
俺はその大きな背中に、ぎゅーっとバックハグをした。河田さんがこっちを振り返る。
「バレバレだべ、沢北」
河田さんは、やれやれって呆れた顔をしている。ちょっと素っ気ない態度だけど、声が温かい。河田さんの顔をじっくり見ていたら、何だか嬉しそうにも見える。しばらく河田さんと目が合っていたら、
「あんま見んでね」
って顔を片手で掴まれてしまった。
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