社会人🎋✕高校生🦩 プリクラ『カメラはこっち! いっくよ~! 3、2,1』
妙に明るい女の声が備え付けのスピーカーからカウントダウンを始めると間を置かず、シャッター音が響いた。
「おい、少しは笑えって」
隣でピースを裏手にして、チャラついたポーズを取った口元に当てたドフラミンゴが肘でつついてくる。
「いや、笑えったって」
ぐるりと四方を照明に囲まれた眩しい光は、ドフラミンゴの目に悪いのではないかとヴェルゴは気が気ではない。
学校帰りの彼と合流したヴェルゴは「デートをしよう」という高校生らしい可愛い誘いを受け、迷うことなく首を縦に振った。
車は邪魔になるからと、徒歩で腕を引かれるままにやってきたのは、若者でごったがえす繁華街だった。
自分が高校生の頃だって、こんな場所へは遊びに来た事がない。いや、正確には数度来たことがある。ドフラミンゴを探しているときに何度か通りかかった。
その頃から、騒がしくて品のないこんな場所に彼がいるとは思えず、すぐにヴェルゴはここへ来るのをやめていた。
その場所に、まさか当の本人に誘われてくることになるとは思いもよらなかった。と、ヴェルゴは感慨に浸りながら、ふわふわの金髪が揺れながら人並みを割って歩く後を嬉しそうに見つめた。
どんな人混みの中でもドフラミンゴは目立つ。
その身長の高さもあるが、華やかな外見は注目を集めずにはいられない。前世からずっとそうだったが、人々の特徴が平準化された今世ではさらに顕著だった。
ずいぶんと慣れた足取りで、ドフラミンゴは女子高生だらけの店内を進む。
時折、声をかけられているが軽く手を上げるだけで、がっちりと組んだヴェルゴから離れる様子はない。
「いったいなんだ、ここは」
同じような筐体がずらずらと並んだ少々異質な店内に、ヴェルゴはため息交じりの声を上げた。
「知ってるだろ、プリクラぐらい」
「そりゃ名前くらいは。おまえ、よく来るのか?」
「まぁ、誘われりゃな。断る理由もない」
「そうか。今度、撮ったやつ見せろ。しかしプリクラって、こんなに大仰なもんだったか?」
ヴェルゴの遠い記憶にあるプリクラ機はこんなに大がかりなものではなく、簡素なカーテンだけがついたものだったはずだ。
「フフフ、良いからいくぞ」
液晶タッチパネルを慣れた手つきで操作したドフラミンゴが組んだ腕をほどき、ヴェルゴの手をとり指を絡めて手を引く。
「わかった、そう急くな」
上機嫌な笑顔でそう言われると、この可愛いわがままに付き合ってやるかと大きな体を二人くっつけて中に入り込んだ。
すでに入り口で設定などはドフラミンゴが済ませているようで、指定の位置に立つと間を置かずに撮影始まった。
『カメラはこっち、いっくよ~! 3、2,1』
妙にテンションの高い女の声が備え付けのスピーカーから聞こえると、カシャッとカメラのシャッター音が鳴って目の前の液晶にとったばかりと思わしき写真が反映される。
驚いて棒立ちになっているヴェルゴと、その隣で顔の前で裏ピースをしてポーズを決めたドフラミンゴの姿だ。
何もできないでいるヴェルゴの様子に、ドフラミンゴが声を立てて笑う。
「フッフッフ」
「こんなにいきなり始まるのか」
「おい、少しは笑えって」
「いや、笑えったって」
慣れないことに、まごつくヴェルゴが珍しいのかドフラミンゴがさらに距離を詰め腕にしがみつく。
学生服を着たままの彼と密着するのは嬉しいが、ヴェルゴの肝は少々冷える。
何があっても添い遂げるつもりで入るが、この世界で生きていくには金も仕事も必要だ。二人の生活のためにも、今職を失うわけにいかない。
ヴェルゴは反射的に辺りを見渡す。厚手のカーテンがわずかに床から十センチ程開いているだけで、人目は一切ない。
「大丈夫だ、ここは外からは見えない」
自分よりも倍以上の年齢の心配を見透かしたように言うと、ぴったりととしなだれかかってくる。賢いドフラミンゴがヴェルゴの心情をを察していないはずはないが、この状況を楽しんでいるのは明白だった。
ドフラミンゴはヴェルゴの喉元にちゅちゅと唇を寄せ、態とらしく音を立てる。
「おい、そういう可愛いことは家に帰ってから……」
ヴェルゴがやんわりとドフラミンゴを制しようとそちらを見た瞬間、タイミングを見計らったようにぐっとネクタイを引いた。
不意のことで、ふらついた瞬間を逃さずドフラミンゴが背伸びをしてヴェルゴの唇を塞ぐ。
『次の写真、いっくよ~! 3、2,1』
甲高い女の声の後に表示されたのは、キスをする二人の姿。
「キスプリってやつだな、フフフ」
液晶画面を見てドフラミンゴは声を弾ませた。嬉しそうに画面を指でなぞる。長くてきれいな指先には、今日もクラスメイトに施されたネイルで彩られている。
「これが撮りたかったのか?」
あまりにも可愛いことを言うので、ヴェルゴは後ろからドフラミンゴを抱きしめる。学校指定のカーディガンを緩く羽織っている背中がすっぽりとヴェルゴの腕に収まる。
「いいだろ、……クラスの奴らだって、みんな撮ってる」
ヴェルゴから制服を着ているときに、屋外で密着されることは珍しく、ドフラミンゴも嬉しそうに体重を預ける。
背後や周囲をさりげなくヴェルゴは確認するが、先ほど説明を受けたとおり、まったく人目は避けられた場所のようだ。
「なるほど、それで俺をここに連れてきたのか」
おとなしく抱かれたままのドフラミンゴに気をよくして、ヴェルゴはカーディガンの中に手を差し込む。
安っぽい学校指定のシャツは、化繊らしくつるつると滑った。
「お前がうるさい所が嫌いなのは知ってるけど、たまにはいいだろ?」
『さぁ次の写真だよ~ 3、2、1』
再度、声がかかった瞬間ヴェルゴは指を滑らせてシャツの上から、ドフラミンゴの乳首をきゅっと摘む。
抱きしめられたドフラミンゴの体が、びくんと大きく跳ねた。
「アッ、んっ、……何して」
「しぃ、外に聞こえる。声抑えろ」
そのまま指を擦るとヴェルゴの指に快感をしっかり教え込まれたドフラミンゴの体から力が抜ける。
「ば、かいうな、……アッ、ぐ」
薄い胸元でツンと尖り始めた乳首は芯を持ち始める。ヴェルゴは敏感になっているドフラミンゴの乳首の先をクリクリと弄り続ける。
「ほら、見てみろ……、いい顔だ」
目の前の液晶にはヴェルゴに後ろから抱きしめられ、乳首を刺激されたドフラミンゴの顔が大写しになっている。
「くそ、……だれが、ここまでしろってっ、ひぅ」
その間もヴェルゴは指先の動きを止めることなく、捏ねるように動き続ける。中指と親指できゅっと挟み込んで。先端を人差し指で擽るとねだるようにドフラミンゴの腰が揺れた。
「あんまり煽るな」
顔を寄せ背後から唇を耳に押しつけて、低い声で囁くとドフラミンゴの膝から力が抜ける。ヴェルゴはその様子に喉が鳴った。
「くぁ、これ以上は、マジでやばいっ、……アッ」
涙まじりのドフラミンゴの声にヴェルゴは加虐心がそそられる。ぎゅうと力を込めて乳首をすりつぶすように弄りながら、先端にカリカリと爪を立てる。
震える体に合わせて、短い喘声をあげるドフラミンゴの耳のラインを舌でなぞりながら、耳朶に歯を立てる。
「イっていいぞ」
「ひぁ、ぐ……あぁっ、んぁ」
『最後の写真だよ! 3、2,1』
□ □ □
ドフラミンゴは、むすっとした顔のままプリクラ機から写真が出てくるのを待っていた。
すっかり濡れて汚れてしまった下肢を隠すように、カーディガンは腰に巻かれている。
「……このどすけべ野郎が」
「悪かったって、あんまりお前が可愛いから」
言いながら、目の前の白いシャツからぷっくりと弄られ続けた乳首が浮いているのを見たヴェルゴが、自分のジャケットを掛けて隠す。
「寒いから、着とけ」
「それよりズボンが気持ち悪い」
「悪かった」
出てきた写真を受け取りながら、ドフラミンゴが抗議をする。つい、煽られてらしくないことをしてしまったと、ヴェルゴは反省する。
「どうすんだよ、このプリクラ」
できあがりに眉を寄せるドフラミンゴの手元を覗き込む。最後の一枚の表情を見てヴェルゴも思わず大きく咳払いをした。
プリクラ内のドフラミンゴは口元はだらしなく開き、薄い唇からは舌がこぼれ、ズレたサングラスからはとろけた瞳に涙が浮かんでいる様子が写っていた。
「……これは俺が全部もらう」
「ちゅーしてるのは、俺のだからダメだ」
プリクラに写る扇情的な表情と目の前の可愛さのギャップに、ヴェルゴは思わず胸を抑え、うめくように囁いた。
「ひとまず……ホテル行くぞ」