キスの日 どれくらいそうしていただろう。体感では数時間、ずっと座っていたように思える。酒が入ったままのグラスを置いて、一呼吸したあと隣を見る。隣に座る彼はソファにもたれかかったまま、ピクリとも動かない。
恐る恐る手を伸ばし肩に触れれば返ってくるのはおおよそ生きた人間ではありえないぐずりという不快な感触。解っていた筈のその事実にぼろぼろと涙がこぼれ落ちて止まらない。
何を期待していたんだろう。
もしかしたら彼は疲れて眠っているだけで、申し越ししたら起き上がるかもしれない、なんて。そんな事、ある訳ないのに。
彼との記憶が蘇る。現実主義で非情な一面を持っていたけど本当はとてもやさしくて、自分の大切なものを守る為に一生懸命な人だった。
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