仗露道場2025/2/8「ハグ」(2023/5/6お題)「ヘブンズ・ドアー」
温度の低い指先が頬に触れ、静かな声が宣告する。その途端、世界がパッとよみがえった。
「露伴ッ! 大丈夫だったか⁉︎」
メチャクチャになった仕事部屋の中央で片膝ついた露伴は、しかしまったく平然としていた。立ち上がって右手をさしのべ、床にへたり込んでいた仗助を引き起こす。肩をすくめてフンと吐き捨てた。
「愚問だな。ヤツは天敵に遭ったようなもんさ」
「何だったんだ、あれ……?」
探しものをする露伴に付き合って、久しぶりに彼の仕事部屋に入った。午後十一時——ふたりでニューヨークに行った時、露伴がひと目で気に入り買った時計。古い映画をモチーフにしたそれから怪人が次々躍り出てきたのは、重厚な時鐘が鳴りだしたのとほぼ同時だった。
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