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    らいむ

    @lemonandlimejr

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    らいむ

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    同棲仗露が一緒にお風呂に入ります。助くんの髪を下ろすのが好きな先生。

    仗露道場2025/1/11「シャンプー」(2023/4/2お題)「ナアナア仗助、風呂入らないか?」
     露伴が満面の笑顔で言い出す時、それはただ湯を使うとか、逆に色っぽいお誘いとかって意味じゃあねェ。
     ウキウキと鼻歌まじりに、先に立って二階への階段を上っていく。後に続くおれはと言えば、「やれやれだぜ」って気分だった。なんで露伴はよりによって、こんなことをやりたがるんだか。
     露伴はアウトドア用の折りたたみ椅子を持ち出してくると、洗面台の前に広げておれをそこへ座らせた。おれ愛用の櫛と水で湿らせた両手を使って、慎重かつ大胆におれの髪の毛を解きほぐしていく。
    「いつもの仗助くんのほうが断然カッピョイイって、おれは思うんスけどねー」
     ぜってー見られたくねェってほどじゃあねーが(さすがにそれじゃあ生活できねェ)、露伴の前ではできるだけイカしたおれでいたい。まだ陽も高いこんな時間から、わざわざ髪を下ろさせるこたねェんじゃあねーの?
     そんな思いからチコッとイヤミっぽくなったおれを、露伴は「それはそれさ」とこともなげに受け流した。
    「もちろん君のリーゼントはすごくイイぜ。髪型としてもだが、何より信念がある。ぼくはそういうのにグッとくるんだ」
     ならよォ、と言いかけたおれを遮るように、露伴の手が背中をポンとたたく。
    「できたぜ。さっさと服脱げよ」
     言うが早いかするりと自分の上着を脱ぎ落として、相変わらず露伴の脱衣は思い切りがいい。初めて一緒に温泉行った時なんか、ドキドキオドオドするおれに「なんだい君、モノは立派なくせに肝はちっこいんだなァ! カッハッハッハーッ!」とか盛大なセクハラ発言をかまして、周りにいたジイさんたちをドン引きさせていた。
     他人がいてさえ前を隠さねェ露伴が、自宅の風呂でそんなことするはずもねェ。脱いだ服を手際よくまとめ、気安くちょいと手招きする態度は堂々としたもんだった。
     我ながら不思議だが、こういう時の露伴にはまるでエロさを感じねェ。隅々まで意識と手入れが行き届いた身体はいつもと同じくキレーだし、好きって気持ちは何ひとつ変わんねーけど、なぜかソッチの回路に直結しねーっつーか。
     露伴の気分次第ってわけでもねェ。露伴の思いもよらねェとこでおれがムラッときて襲いかかる時もあれば、その逆が起きる時もある。ただ、とは違う空気の時が確かにあって、おれは露伴以外好きになったこともつき合ったこともねーから、これがよくあることなのか、それともおれたちだけの現象なのかは知らねェ。ま、でも確かに、恋人だからって四六時中サカってるわけにもいかねーよな。そんなんじゃあ、海水浴もスポーツジムも一緒に行けなくなっちまう。
     風呂場に足を踏み入れて、まずは手早く身体を洗う。露伴がボディソープを掌でふんわり泡立ててる横で手拭いで胸板をこすっていると、露伴は信じらんねェと言うように顔をしかめた。
    「君の美貌はいろんな意味で驚異的だよな。なんで、その扱いでそのクオリティを維持できるんだか」
     って言われてもなァ。そもそもおふくろが、おれを連れててさえしょっちゅう男に声かけられてたし(当然、ケチョンケチョンにやり返す)。ジジイもあの歳にしちゃいいガタイで、自称「若い頃はイケメンじゃった」らしいし、確かに目なんか今も澄みきってキレーだ。きわめつけが承太郎さんで、血縁があんなんばっかりだったら、そりゃそれなりのツラにもなるだろう。ただ、単なる遺伝で自分がなんかした結果じゃあねーから、特になんとも思わねェ。露伴がえらく気に入ってるらしいのは、ラッキーだったと思うけど。
     ササッと身体を洗って、ひと足先に薔薇色の湯に飛び込む。これも毎日色も違えば香りも変わって、こんなふうにいろんなとこがさりげなくゴージャスな生活は、露伴と住むまで縁のなかったものだった。分担してるのは日々の食費程度、それで本来おれの給料じゃあとてもできねェ暮らしをさせてもらってるのは——長い話し合いの最中に、露伴が「ナア、わかってるのか? 君と同じでぼくにだって、自分の稼ぎで好きなヤツと好きな生活をする権利があるんだぜ」と言い放ったからだ。ほんと、こーいうとこは一生勝てる気がしねーよな。そうやってひとつずつ手探りで折り合いをつけてった同居は、もうすぐまる二年になる。
     マッサージするような手つきで丁寧に全身を、さらに髪を洗いあげた露伴が、ワクワクした顔でおれを振り返る。おれはハイハイと苦笑いすると、ずっとガン見してた露伴にくるりと背を向けた。
     バスタブの側壁に背中を預け、両肘を突いて身体を支える。そうして上半身をのけぞらせると、こっち向きで風呂椅子に座った露伴のほうへ頭を差し出す形になった。前の時にも思ったけど。
    「このカッコってよォ、打ち首になるヤツみてェじゃあねェ?」
     露伴は一瞬目を丸くして、喉笛をさらけ出したおれを見下ろす。それから、さも愉快げに「アッハ」と笑った。
    「いいねえ、君にしちゃ文学的な表現だな!」
     シャワーを手に取り、おれの頭に湯を振りかける。右手で髪を梳くようにされて、おれは気持ちよさに目を細めた。
     紙を扱う指先はどうしても乾燥して固く、節にはペンダコがある右手を、露伴は「きれいなもんじゃあないぜ」と言う。だけどおれは、露伴の身体で唯一無骨なこの右手がすげェ好きだ。「君は漫画を読まないじゃあないか」と露伴はあきれてみせるけど、そーいうことじゃあなくってさ。
     シャンプーの香りが漂う。おれがいつも使うスーパーの特売品じゃあなく、露伴がポケットマネーで買ってる自分用のお高いヤツだ。シャンプーなんかどれも同じじゃあねーのとおれは思ってるが、露伴に言わせりゃ違うらしい。
    「普段は君の好きにすればいいけどさ。これはぼくの娯楽なんだから、ぼくの好きにさせてもらうぜ」
     フフンとしたり顔で、おれの髪を丹念に揉み込んでいく。髪型にこだわりがあるおれはガキの頃から決まった美容院に行ってるが、露伴のシャンプーの腕前はそこの新人美容師より上だと思う。そもそも手先が器用だから、何やらせてもうめェんだろうな。
     たっぷりした泡をすすぎ、タオルでくるむようにそっと水気を拭われる。やれ終わった、と思うのは間違いで、すでにそれも経験済みのおれは姿勢を変えずにおとなしく待っていた。
     これまたいい匂いのトリートメントを塗りたくられ、熱めの湯で絞ったタオルを頭に巻かれる。ターバンつけたみたいな恰好で、おれはようやくバスタブに浸かるとやれやれと肘と背中を伸ばした。
    「これで十分待つ」
     露伴がオシャレなガラス製の砂時計をひっくり返した。おれに言わせりゃ信じらんねェ話だが、こいつはこのためだけに風呂場に常備されてるのだ。
    「露伴は、こんなこと毎日やってんの?」
    「これは週に二回だな。こないだ変えたんだが、わりといいからしばらく使おうと思ってる」
     前のは毎日だったぜ、とか向かい合って浸かった露伴はこともなげに言う。そりゃ長風呂にもなるよな。露伴からは逆に「ほんとにちゃんと洗ってんのか?」とか疑われるけど。
     トリートメントを洗い流されて、ようやく風呂から上がるのを許された。ひと足先に出た露伴はすでにきちっと着替えて準備万端、右手にブラシ左手にドライヤーを構えている。
     おれは着替えもそこそこに、ふたたび鏡の前の椅子に座らされた。露伴はルンルンとおれの髪を乾かし、ブラシで入念にブローする。
     いつもカッチリ固めてるが、実はおれの髪は結構なクセ毛だ。扱いにくいこの髪を、露伴は自然の毛流れを活かしてみごとにまとめちまうのだった。ほんとこいつは、何やらせてもサラッとこなすんだよなァ。「それは君もだろ」と露伴は言うが、おれはめんどくせェのと、あと下ろした髪に手をかける気があんまりねェのもあって、いつもはテキトーに乾かしてかきあげてるだけだ。
    「よし」
     ようやく露伴がドライヤーを止めた。ああ、やっと解放されるぜ……と立ち上がりざまに鏡を見ると、そこには誰だよっていう男がいる。
    「……」
     確かにビシッと決まってはいる。なんせ岸辺露伴渾身のヘアセットだ。ただ、おれはやっぱりリーゼントがいちばん自分らしいと感じるし、こっちのおれのがカッピョイイと露伴が思ってるんだとしたら、チコッと寂しい。
     なあ、とおれは鏡越しに呼びかけた。
    「露伴はなんで、これが好きなの……?」
    「なんでだって?」
     ずっとグフフと不気味な含み笑いをしていた露伴は、それを止めると洗面台とおれの間にスッと身体をすべり込ませた。うっとうしく垂れ下がった前髪をひと房つまみ、おれの顔をとっくりと覗き込むようにする。
    「まず、君のリーゼントを崩すってのがいい。ぼくにしか許されてないんだぜ。他のヤツが手を出したら、冗談抜きで生命の危機だ」
     緑のの目が、星みたいに輝いている。子どものような好奇心と優越感と——そして、それだけじゃあないもので。
    「君の誇りで、君の鎧で、君を最もカッコよく飾るものを、ぼくのこの手で剝ぎ取って。ぼくしか知らない、無防備な裸の君にするんだ。そりゃあ……なんてもんじゃあないだろう?」
     ……あ。
     閉じることを忘れたおれの唇から、知らずその母音が洩れていた。
     バチン、って——たった今、頭のどこかでスイッチが入った。ついさっきまで完全に眠っていた回路のスイッチが。
     カッチリ服を着込んだ露伴が、だというのにめちゃくちゃエロく見える。さんざん素肌をさらし合って、まるで平気だったのがウソみたいに。
     目と目を交わす。それだけで充分だった。次の瞬間には、おれたちは互いを激しくかき抱き、むさぼるように唇を合わせていた。
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