じゃれ「…ッ!」
突然だった。
「…執行者か、どうしたんだ?いきなり掴んできて」
気付いているぞ、とでも言いたげな雰囲気で掴まれた手首に力を込められる。
「…悪かった、確かに捻って腫れている。」
追跡者は常に前線にいる。それ故に捻挫や傷は大小様々、多種多様だ。
今回は二日目の夜に出現してきた小物達を斬り払う為に大剣を両手に持ち横振りしていたが、まさか突如として現れた大きな標的に吹き飛ばされ受身をしくじったのだ。
「隠者や召使人形にでも診てもらう、心配を掛けたようですまない。」
「…」
「なあ、どうしたんだ?まだ何か…あ。」
どうやら円卓に戻ってきたのは追跡者と執行者のみのようで、風の吹き抜ける音や木々の擦れる音しかしない。いつもなら出迎えてくれるはずの召使人形も不在だ。
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