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    ヤプーパロ本続き

    本編読んでないと分かりません

    ヤプーパロ続き① その日は唐突に訪れた。
     突如船が大きく揺れたと思うと船長の姿が驚くべき事に女に変わったのだ。船長に触れた他のクルーも次々と女に変わっていく。船内は阿鼻叫喚の有り様だった。騒ぐクルーたちを船長が掠れた声を上げて叱責している。
     そんな緊急事態だが、ローは女になった船長の姿に目を奪われていた。記憶にあるよりも気が強そうで健康的な女だ。終ぞローが彼女から聞くことの出来なかった声を張り上げている。
    「……ぁ、ぁぁ!」
     思わずローが声を上げると、ちょうどその瞬間船がまた大きく揺れて、小さなローの叫声などクルーたちの悲鳴にあっさり掻き消される。そして、その瞬間バランスを崩したクルーの一人がローに向かって倒れ込んできた。そのクルーは姿を女に変えていて、下敷きになったローも間も無く身体の形を変えていく。
    「……ぅ、」
     変化は明らかだった。薄いローの身体でも凹凸が出来て丸みを帯びる。胸には控えめな乳房が生まれた。
    「ぅぅ、ロー。悪い。大丈夫か?」
     倒れ込んできたクルーがローを気遣うが、最早ローはそれどころでは無かった。彼を無視して騒乱の中にある船内で、一人静かに鏡を探す。

    (女、女になった……っ!)

     ローはもうそれしか頭に無かった。明らかな異常事態であるのに、脳裏に過ぎるのはあの求めて止まない彼女の事だ。
     普段の自分の姿は男のアイと同じものだった。それなら、女に変わった今、この姿はもしかしたら……!
     そんな興奮がローを突き動かす。クルーたちの間を必死に這いずって、やっとポーラータング号を巡っている大きなパイプへと辿り着いた。鏡ではないが、ピカピカに磨かれた銀色のパイプが歪にローの姿を映し出す。
    「……ぁ」
     歪んでいたが、確かにそこにローは探し求めていた彼女の面影を見た。ローの目が涙に滲む。もっと彼女を感じたくて、必死にパイプに自分を映すが、パイプではどれだけ覗き込んでもその輪郭をはっきり映す事はなかった。ちゃんとした鏡を求めて辺りを見渡すが、周りでは相変わらずクルーたちが騒ぎながら走り回っている。この状況ではロー一人ではまともに移動する事も難しいだろう。
     仕方なくローは女となった身体を見下ろした。
     柔らかい肢体に小振りな胸。その胸を軽く揉んでみると彼女との痴態を思い出して、少し恥ずかしい。顔を少し赤らめてローは優しく自身を抱き締めた。その感触は遠い日に最愛の彼女が抱き締めてくれた記憶を呼び起こす。その記憶を辿るように、腕をだんだんと下へと滑り下ろしていって、やがてそれに行き当たった。
    (……んっ)
     股に手を伸ばすと、そこには彼女には存在しなかった穴が空いていた。まさか主人に空けられたグロテスクな穴が彼女を汚してしまったのかと一瞬取り乱しそうになるが、それが正常な女の陰部だと気が付いて呆然とする。……そう正常な女の陰部だ。
    「……ッ」
     その瞬間、思い知った。自分はアイでは無いのだと。アイはもう喪われてしまったのだと。暗澹とした絶望に飲まれそうになるが、それでもこの顔はアイだと言う事を思い出してその事実に縋り付く。自分はアイでは無いが、この姿でいる限り鏡の向こうにはアイがいるのだ。それを肯定するようにパイプに映るアイが歪に微笑む。きっとアイも喜んでいる。ローはそう思えてならなかった。
     もう一度アイを見出せた事に浮かれていると、それと同時に気が付く。……女のものではあるが、自分はまともな身体を取り戻したのだと。
     それに気が付くと既に濡れていた瞳から止めど無く涙が溢れてきた。まさか、まともな身体を得られる日が来るなんて思ってもみなかった。このまともな女の身体をアイに捧げよう。
     
     しかし、今ハートの海賊団は襲撃を受けている最中だ。ローには時間なんて与えられなかった。
     船内を揺らす衝撃が走ったと思うと、船長が男に戻っていて、それに続くように次々とクルーたちが男に戻っていく。当然、船長はローにも戻るよう促してきて、それを拒むと船長の怒号が慌ただしい船内に響いた。ローがそれに肩を震わせていると、あっさり船長に触れられ、元の男の……、いや、男とも女ともつかない惨めな身体に戻っていく。
    「……ぁ、ぁ」
     完全に姿が元に戻って、股に視線を落とすが、思ったとおり主人を悦ばす為に誂えられた恥ずかしい穴がそこに鎮座している。今度は情けなさに涙が溢れてくる。すると、そんなローに船長が何かを差し出した。小さな瓶だ。
    「てめェが何で駄々を捏ねてるのか知らねェが、今はそんな場合じゃねェ!さっきのウイルスはここに確保してやったから、必要なら大事に持っとけ!事情は落ち着いたら聞いてやる!」
     そしてそんな事を言われた。

     嗚呼、これがあれば、またあの身体に戻れる……ッ

     渡された瓶を大切に大切に両手で握り締める。
     そして間も無く、ハートの海賊団は黒髭海賊団と交戦が始まった。その後、ハートの海賊団は敗北し、ローは黒髭海賊団に囚われる。ローの望んだ身体になれるのは、暫く先の話であった。

    ***

     船長に黒髭海賊団から救い出されて、やっとローはまともな身体を得る事が出来た。それだけではない。鏡の前でローが微笑むと、鏡の中のアイがローに優しく微笑みかけてくれる。それが嬉しくて、ローは船長の目を盗んでは鏡を眺めて鏡の中のアイに語り掛け続けた。
     初めの頃はそれで満足していた。唯一、自分を癒してくれる存在を取り戻せたのだとローの心は歓喜に湧いていた。しかし、それを繰り返しているとローの欲望はだんだんと膨れ上がってくる。
     女のローは帰ってきた。次に求めるのは、自分を連れ出したあの幼いアイだ。
     明らかに他のアイたちとどこか違っていたアイ。主人の元から連れ出された事は未だ複雑だが、あのアイと孤島で過ごした数日間はまるで夢のような時間だった。久しぶりに他者との会話を楽しんだ。アイはローの話を聞いてくれた。理解してくれた。ローを置いていくことは無かった。一緒に探検に連れて行ってくれた。主人に飼われるようになってから、唯一あの時間だけは自分が何であるかを忘れられて、ただただ幸福だった。ローにとってはあの数日間は夢幻のようなものだったから、主人の命令なんて無視して口から果物だって食べられた。……それでも、アイに口移しされてやっとの事だったけれど。
     結局、あのアイも他のアイの例に漏れず、あっさりとその短い生涯を終えた。ローが魚を食べたいなんて我儘を言った時だった。嫌な顔ひとつ見せず、海の方へ駆けていくあの子を見送ったのが最期だった。気が付いた時には、あの子は地面に倒れ込んで、急いで地面を這ったけれど、ローがアイの元へ辿り着いた時にはもう手遅れだった。普通に歩けたとしてきっとローに出来る事なんて無かっただろうけど。
     自分もあの時終われていたらどんなに良かっただろう。何度そう考えたか分からない。それでも自分はこうやって船長に拾われてしまって、今まで生きながらえてしまった。何故自分はこうやって生きているのに、あのアイは死んでしまったのだろうか。
     
     机に向かって何か作業を行なっている船長にそっと目を向ける。いつの頃からか、彼はローに厳しくする事は無くなった。服を着る事を強要して来なくなったし、ローが床を這っていても放っておいてくれるようになり、食事も這ったまま食べても何も言われなくなった。何より、ローが奉仕を行おうとすると受け入れてくれる事が増えた。やっと自分の存在意義が見出せて嬉しかった。でも、主人よりも遥かに優しくローを気遣って行為に及んでくるので戸惑った。ローが眠ってしまっても必ず抱き締めて眠ってくれて、朝も一緒に迎えてくれた。目を覚まして目の前に彼がいた時、初めは酷く驚いたのを覚えている。それでも、こうやって優しくしてくれて違和感を感じているのも確かだ。自分は彼の欲求を満たす為の淫具でしかないはずなのに。
     それを考えると黒髭海賊団に捕まっていた時は良かった。身体こそ主人以外の人間に犯されて酷く辛かったが、これが自分のあるべき姿だと再認識出来た。自分の意思を求められる事も無く、彼らの欲望のままに手酷く抱かれる日々。歪な身体を嘲り笑われて、どれだけ泣き喚いても解放されない日々だったが、不思議とそれが自分なのだと納得出来て安堵の息を漏らした。……それでも、この壊れてしまった精神でも傷付いているのか、それから人間不信に拍車が掛かってしまったけれども。
    『こんなに犯されてよォ。完全な女だったら、お前どれだけ孕んでるんだろうなァ‼』
     不意に、犯されながら掛けられた言葉を思い出す。
    (今のこの身体なら、きっと子供が出来てたんだろうな)
     なんとなくそんな事を思った。そして、主人の元にいた時に出産した事を思い出す。あの時はアイと同じ顔の男に犯されて……。
    「……!」
     そこまで考えて、ローははっと船長を見た。
     ローの仮の主人である船長は、主人の元にいる時ローを犯して孕ませた男と同じ顔をしている。そして、今のローは女のローと同じ顔をしていて……。そして、ローが求めて止まない幼いアイは彼らをそのまま子供にしたような存在だった。……もし、もしも、船長と子を成せたなら。
     ローの頭が歪な思考に染まっていく。
     その考えに取り憑かれたように、ローはのろのろと船長の元へと這っていった。
    「んぁ……、きゃ……ぷ……」
    「ん、どうした?」
     何とか足元まで辿り着いて、か細く彼を呼ぶと船長は優しくローを見下ろした。そしてローは不器用に船長を誘う。
     どうしても、どうしても。……もう一度アイをこの手に抱きたかった。

    ***

     ローの目論見が達成出来たのは、それから暫く経っての事だった。ローが完全な女の身体を得てから、船長はそれはそれは大切にローを扱った。当然性行為においてもローの子宮に直接子種を注がないよう細心の注意を払っていたし、そうなってしまった時は便利な能力を使って綺麗に取り除かれた。それでも、目的を達成出来たのはローの執念と言わざるを得ない。幾度か失敗した後、ある夜、やっと船長がローの身体を清める前に寝かし付ける事に成功したのだ。そして、ローは見事そのチャンスをものにした。
     ローが子を身籠ったと分かった時、船長は苦い顔をしたがローが喜んでいる素振りを見せれば、もう何も言う事は無かった。それどころか日に日に大きくなる腹を見て愛おしそうな視線を送ってくる始末だ。
     勿論ローだって、この少しずつ大きくなる腹に言い様の無い安らぎを感じていた。以前孕んだ際は、尋常ではない速度で腹が大きくなって恐怖ばかりを感じていた。……そしてあの結末だ。今度はそんな事はなく、お腹の中の子はゆっくりとローの胎で育っている。安堵しか無かった。
     定期的に船長自ら行われる健診で、最初は前回を思い出して船長に向かって股を見せ付けたのは苦い思い出だ。恥を忍んでの行為だったが、船長が眉を寄せながらローの足を閉じさせると、辺りに薄い青いサークルが出来たと思うと一瞬の内に終わっていて、呆気に取られてしまった。
     しかし、困った事もある。平時のようにローが服を身に付けず床に伏していると船長は顔を歪ませた。お腹の子に障るからと、椅子に座るよう命じられ上から毛布を掛けられた。命じられてしまえば、ローに拒む術はない。それでも、高くなった視界に身体は勝手に強張り呼吸が荒くなる。見兼ねた船長が極力抱き上げて膝に乗せてくれた。主人代わりの男に身体を密着させると不思議と気分は落ち着いた。

     ローは大きくなった腹を愛おし気に撫でる。
    「ぁ……ぃ、……ぁ、ぃ」
     再会の時はもう、すぐ側まで迫っていた。

    ***

    「アアアァーーーッ!!」
     手術室に赤ん坊の泣き声が響く。誰が聞いても元気な泣き声だ。
    「……ぁ、ぁ、」
     そのこえを聞いてローは赤ん坊を取り上げた船長に必死に訴えた。ローの言わんとする事を察した船長がローの顔の直ぐ隣に赤ん坊を差し出してくれる。
    「ほら、よく頑張ったな」
     期待と少しの不安。逸る心臓を必死に抑え込みながらローは赤ん坊を見た。
     小さな手足を丸めて必死に泣いている。可愛い顔をしわくちゃにして。力いっぱい閉じられた瞼は確かに存在していて、ローは安堵から涙を零した。ローと赤ん坊を青いサークルで包み込んだ船長が柔らかい笑みを浮かべているので、きっとこの赤ん坊に障碍は無いのだろう。
     それを確認して、やっとローはその小さな命に手を伸ばした。
    「……ぁ、ぃ。……ァイ」
     ようやく会えた。待ち焦がれた愛おしいこの子。
    「……アイ?」
    「その子の名前?」
    「へぇ、いい名前じゃない。……でも、キャプテンも何か考えてたんでしょ?いいの?」
    「……まぁな」
     船長らがそんな事を話していたが、ローにはもう何も耳に入らなかった。やっと手の中に戻ってきた最愛の存在を愛でるのに夢中だった。
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    Replies from the creator

    gao

    MOURNING分かりにくいところもあったかと思うので、本文読んでくれた方向けに
    ネタバレ満載なので、読む予定のある方は読んでからお願いします!
    分かりにくくてすみません!
    ここの解説も分かりにくいです

    ※作者の解釈も含まれますので、他の解釈されていたらその解釈を大切にしてください!
    ヤプーパロ本3冊目の後書きのような裏設定のようなやつ【船長編】

    冒頭のフレバンス脱出後のローが受けた仕打ちは前作「あの日のフレバンス」のショタロー編と同じエピソード
    同じ世界ではないけれど

    ローが見付けた男の死体は実は「あの日のフレバンス」の書き下ろしパパファルガー編に出てきたパパファルガーの親友
    パパファルガーに協力して珀鉛病の研究をしていたが、ある時政府に妻と子を人質にとられ、研究を断念。結果、パパファルガーとフレバンスを裏切ることとなった。※ここまで「あの日のフレバンス」
    その後、フレバンスが滅びたこと、親友を喪ったことを知り自責の念に駆られ精神を病む。そんな彼を見ていられなくなって、妻は子を連れて出ていった。男は結局、不穏分子として政府に殺されそうになり、命からがら家族の写真と僅かな荷物だけを持って国を脱出。その際に負った傷のせいで野犬に嗅ぎ付けられ襲われて絶命。せめて親友に謝ろうとフレバンスを目指していた。
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