片想いの話 僕の物語がひとつの終わりを迎えたのは、春、桜が散る頃だった。
例の組織が壊滅して一ヶ月。膨大な事後処理にようやく終わりが見え始めたある日、僕と風見は公園のベンチに並んで座っていた。天気の良い、あたたかい日だった。広い芝生を挟んで向こう側には桜の木があって、家族連れが弁当を広げているのが見える。
風見に話さなくてはならないことがあってわざわざ呼び出したのに、僕はなんとなく言いあぐねて、青い空を見ている。
風見は、何の話なのかわかっていたと思う。揃えた膝の上に、軽く握った拳が乗せられていた。そんなに畏まらなくたっていいのに。
「じきに正式な辞令が出るが、君はゼロの連絡役から外れる」
「はい」
「君には世話になった」
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