泡沫の夢🫧🔵は瓶の国に住む幻霊だ。国の主に似た精神性をもつカーヴェに興味があった。
繊細で、面倒ごとに巻き込まれがちで、お人好しな優しいひと。カーヴェが瓶の国での仕事の合間に「僕がここに来て一体どれほど経ったんだ?久しく会ってないなぁ…」と🌱を落書きで描いていたのを知っていた。この優しい創造者は“あるはいぜん”に関しては他の人に見せる心遣いとはまた違う温度で語り、一際あたたかい線で描くのだ。
「まぁ、あの性格が悪い奴と離れられて清々するよ」
「職人が丁寧に仕上げたスイーツでさえ、腹に入れば皆同じだと一瞥もくれず口に放り込むようなあいつのことだ。絶対にここの美しさはわからないだろうな、ふふっ」
悪態を吐きつつもその眼差しにきらめく光は甘くて、イディアがくれたキャンディのようだった。きっと彼は分かりにくいながらも心の奥からじんわりと優しさがあふれる人なのだろう。
そのひとにぼくもいつか会ってみたい。
狂化された♦️は人の言葉を分からない。アルハイゼンから剪定された“可能性”の1人である。本能のままに求め、貪り、可能性の1人でありながらもその身を保ってきた。そして砂漠の果てまで辿り着き、幻想の国へと足を踏み入れた。
新しい来訪者の気配を辿り、瓶の口へ来た🔵は一目見て直感的に「❗️(あのひとだ!)」とわかる。
近づいてくるカーヴェを獣のように威嚇する♦️。
研ぎ澄まされた獣の本能が彼は幻影だと告げる。なんだ、都合のいい夢か。俺は本当にカーヴェが好きなんだな。ifの存在、終わらない幻覚、可能性のひとつ。カーヴェが生きる世界には存在し得ない、狂った俺が彼に存在を訴えかけられることなんてできないのに。一体何を見せられているんだ。油断させようとしても無駄だ。
唸り声を上げ、鮮血の瞳をぎらつかせる。
そんな♦️に無邪気に手を伸ばす🔵
「❔(きみは"あるはいぜん"だよね)」
「🌸(きみにあえてうれしい)」
「🌀(こわがらないで)」
カーヴェに焦がれても会えず認識もされない♦️は、幻影だとしてもあの大好きな人に会えて嬉しいと言われて歓喜するしかなかった。高まる興奮と期待。狂化でアグレッシブな♦️は獣の本能がすぐに現れる。
しかしやはり大元はあの理性の塊である。
幻影とわかっているから、狂化された俺の手で軽率に触れたら彼は弾けてしまわないかと戸惑い後ずさる。これは夢。これは夢。これは都合のいい夢だ。
「グルルル(俺はアルハイゼンじゃない)(近寄らないほうがいい)」
「❔(なんで?)」
「🌸(ぼくはだいじょうぶだよ)」
🔵は瞬時に、♦️の横に現れ、震える手を握った。
「✨(ぼくが"か一ゔぇ"のひとつであるのとおなじように、きみも"あるはいぜん"のひとつだ)」
「🎶(ゆめのそんざいどうし、なかよくしようじゃないか)」
己の在り方を受け入れられたことが初めてで感極まる♦️はつい想いが溢れてしまう。
「ゔぅぅぅ(カーヴェ…)」
「クルルル…(君が俺を肯定してくれたこと、感謝する。君に会えて、俺も嬉しい)」
「❗️(ほんとう!?)」
「🌸(ぼくも、きみがこころをひらいてくれてうれしいなぁ)」
燦く金の髪と理想に燃える紅の瞳は持たずとも。
青いカーヴェは水面のような眩しい笑顔で俺を抱きしめた。
会いたかった気持ちが通じ合って、熱いキスを交わす。幸せの渦中、大好きだよ、の想いが重なると共に、夢を叶えた幻霊は泡となって空に消えた。
残された♦️は空に向かって彼の名を咆哮した。
俺の理想は、泡になった。