食堂で「さーぶろー!そこ空いてる?」
2時限目の講義が終わった後の食堂は、とても混んでいる。なかなか空いている席を見つけられずにいた勘右衛門は、同じ学科の同級生である三郎がテーブルについていて、かつ、向かい側の席が空いていると思い、少し遠くから声をかけながら近づいて行った。
しかし、声をかけられた相手は困ったような顔をして微笑んでいた。
「…あれ、三郎じゃなかった!ごめんなさい」
今度は向こうが驚いた顔をした。その直後に、三郎がやって来た。
「雷蔵、お待たせ。はい、Aランチ」
「あぁ、ありがとう三郎」
「そして勘右衛門、こんなところで何をしてるんだ」
「いや、てっきり三郎だと思って…」
「三郎、知り合いなの?声をかけられた時に三郎じゃないってことを伝えるだけでいいのか、何か用事があるのか聞いたほうがいいのか悩んでいたんだ」
「そんなことで悩むなよ雷蔵」
「でもね、気づいてくれたの。何も喋っていないのに。声を出す前に気づかれたことってなかったから、びっくりしちゃって」
「いや、びっくりしたの俺なんだけど。三郎って双子なの?」
勘右衛門の問いに答えが出る前に、後ろから声がした。
「おほー!三郎に雷蔵じゃないか!久しぶり!」
「あ、八左ヱ門だ!」
「よぅ、久しぶり」
「…って、あれ?勘右衛門じゃん!」
「待って、これって一体何つながりなの?」
「俺たち3人は、同じ高校出身。この2人はそっくりだけど双子じゃなくて、三郎のほうが雷蔵に似せてるんだよな。そういや、勘右衛門と三郎って学科一緒だっけ?雷蔵は三郎と学部は同じだけど、専攻が違うんだよな?」
「そうそう、僕は文学専攻。勘右衛門君だっけ?よろしくね」
「同い年なんだしタメ口でいいよ、ということでよろしくね雷蔵」
「ところで、勘右衛門はなんで八左ヱ門を知ってるんだ?」
「一緒に豆腐パーティーに参加した仲だ」
「何だそれ」
「俺の友達に豆腐狂がいるんだけど、そのお隣さんなんだよね」
「豆腐狂って」
三郎と雷蔵が声を合わせて突っ込みを入れる。
その後、勘右衛門と八左ヱ門も昼食を頼み、改めて席についた。
「しかしまぁ、ものすごく混んでるな。雷蔵と三郎はよく席取れたな」
「僕が先に来ていたんだよ。2時限目は講義がないから、三郎の分も席を取っていたんだ」
「じゃあ、来週から俺の分もお願いしていいか?まさかこんなに空きがないとは思わなくて」
「おい八左ヱ門、貴重な雷蔵との時間を」
「あ、俺の席もお願いしたい!」
「いいよ、二人とも!」
「雷蔵…」
こうして、週に一度は4人で集うことが決定した。