夢物語のその先へ「エース。話があるの。」
オンボロ寮の談話室。神妙な顔をしているユウに、オレは胸がざわついた。
「なになにー?この前のテスト赤点だったとか?しょうがねーなぁ。このエース様が教えてやるよ。」
不安を押し殺して笑って答える。
だが無言でユウは首を横に振った。
「元の世界に帰る方法が見つかったの。」
やっぱり嫌な予感は当たった。“嫌な”なんて…。ユウに悪いよな。こいつが元の世界に帰る方法を一生懸命探しているのを知っている。オレを含めた他の奴が家族の話をしているとき、ふと羨ましそうな顔をするのも。家族に会いたいのだ。ならオレは友達として笑顔で送り出さなきゃいけない。いい友達、として。欲を言えばずっと一緒にいたかった。ずっと一緒にいて、あわよくば恋人になってそして、ユウが求めていた“家族”になりたかった。だけどそれは夢物語に終わった。
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