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    まー。

    pixivでは『まー』というアカウントで腐向けの二次創作活動をしていましたが現在は更新停止中です。
    ここでは完結していない未完のものでいつ完成するか分からないものを上げていくのが多いと思いますが宜しくお願いします。

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    まー。

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    死刑執行日に伏黒が虎杖を連れて逃げた。
    五条先生は悠仁の為に何をするか。

    時効があるというとんでも設定です。
    過去の五条悟と夏油傑が登場します。

    誤字脱字とかは気にしないで下さい。

    #五悠
    fiveYo

    無題確かに五条は悠仁は最終的に死刑だと言ったが処刑する気は更々無かった。
    悠仁は宿儺を抑え込めており恐らく20本取り込んでも身体の主導権を握るのは悠仁のままだという確信があったからだ。
    だから悠仁が20本取り込むまでに五条が上を説得すればいいと思っていた。五条にはその権力も実力もあるからだ。
    それに五条は悠仁を心の底から愛した為、絶対に失いたくない存在になり絶対に護ると心に誓った。
    それなのに五条が油断し渋谷で封印された為、悠仁は戦いながらも色々な事に精神的に参っていた。
    上層部は五条を呪術界から追放し悠仁を直ぐに抹殺という決断を下した。
    乙骨憂太のお陰で悠仁は生き延び仲間と一緒に五条の封印も解き五条は復活した。
    その時には既に悠仁の精神もボロボロだった。目の前で七海が殺され同級生であった釘崎も殺され指を一気に十本も飲まされた所為で身体の主導権が一時的に宿儺に代わった時に宿儺は何百人の人間を殺した。
    宿儺がやった事なのに悠仁は自分が殺したのだと言って泣いていた。
    悠仁の所為ではない。宿儺の所為だという事は五条も解っているし悠仁は何も悪くない。それでも煩い上層部が黙っている訳が無かった。
    『五条悟。お前はやっぱり呪術界には必要だ。そして復活のお前の最初の仕事は両面宿儺の器である虎杖悠仁の処刑だ』
    この時、五条は何とか悠仁が助かる方法は無いかと考えたが思い浮かばなかった。
    一度、主導権が宿儺に握られ宿儺が一般人を多く殺した所為だ。
    悠仁は悪くないと五条も他に悠仁と仲が良い人物も思っているが、頭が堅い上はそうは思わないのだから。
    たった一つだけ頑張れば悠仁が助かる方法はあると言えばあるが、それは難しい。何故なら悠仁と仲が良い人物は悠仁の意志を尊重するからだ。
    五条だって悠仁が生きているのが辛いから殺して欲しいと言ったぐらいなのだから悠仁が苦しむなら悠仁の意志を尊重するべきだと思った。
    だからこそ五条の手で悠仁を処刑にするべきだと思った。
    それでも悠仁に生きて欲しいのは事実だ。大切な可愛い教え子の上、愛する少年を殺したいだなんて思わない。
    誰でもいい。悠仁の意志を無視してでも悠仁を連れて逃げてくれたら、たった一つ、悠仁を生かす為の準備も出来るというのに。
    『ねぇ、悠仁、生きたいって言ってよ。助けてって一言でも言ってくれれば僕、何でもするよ』
    処刑日の朝、五条はある御札が貼ってある部屋に悠仁を閉じ込めてそう言ったら悠仁は僅かに笑みを浮かべながら顔を左右に振った。
    『駄目だろ。俺は死ぬべきだ』
    『………どうしても、その意志は変わらない?』
    『変わんねぇよ』
    『………そっか…』
    悠仁が頑固なのは知っている。それでも五条は悠仁に生きて欲しいと思っていた。出来れば一緒に生きて欲しいと。
    しかし悠仁は苦しんでいる。死んで楽になりたいと思っているならば、この世界に悠仁を巻き込んだ五条が悠仁に手を下し終わらせてあげるべきだと思っていたら悠仁が眉を下げ僅かに微笑んだ。
    『五条先生、ごめんね。嫌な事やらせて…』
    本当にその通りだ。流石の五条でも愛する者に手を掛けたくはないと思い溜息を吐き踵を返した。
    『ホントだよ。僕、悠仁の事、すっごく気に入ってたのに酷いなー』
    気に入るどころではなく深く愛した。この少年の真っ直ぐで素直で明るく優しい所が眩しく毒気を抜かれたし悠仁と一緒に居るのは凄く楽しく年甲斐もなく胸の高鳴りも感じた。
    ずっと一緒に居たかった。悠仁が高専卒業したら告白したいとも思っていた。一層の事、プロポーズまでしようとも考えていた。
    恵も悠仁の事を深く想っているのは解っていたからお互いに宣戦布告までしていたぐらいだ。
    悠仁が初恋だった。だからこそ余計に手放したくなかった。
    それなのに護れなかった。五条が油断して封印されていた所為だ。だから悠仁は悪くない。全ては五条の責任だ。
    『………五条先生……』
    『…ごめん、悠仁。全部、僕が悪いのに君を責めるような事言った……』
    『違う!先生は悪くねぇよ!』
    『ホント、悠仁は優しいね』
    悠仁のその優しさも本当に好きだったが、偶にその悠仁の優しさが憎らしく思った事もある。
    今、五条が悠仁に背を向けているのは意地だ。大人として今、悠仁に涙は見せたくない。今、きっと一番辛いのは悠仁のはずだから。
    『取り敢えず、その辺、見回りして二時間後にまた来るよ』
    今は悠仁から離れたかった。みっともなく悠仁に泣いて縋りそうだったからだ。
    そう思い五条はその部屋から出て外を少し歩き涙を零しガクリと膝を付き手で顔を覆った。
    『……っ…、ゆうじ……』
    恐らく五条は悠仁を処刑した後、狂うだろうし、悲壮や激昂や絶望でこの世界を消すかもしれないと思い涙を零し続けた。

    ある程度、涙を流し少し落ち着いた為、五条は悠仁の元に戻る為に歩いていた。
    落ち着いたと言うには語弊がある。本当は心の中は荒れ狂っておりグチャグチャだ。外側だけ落ち着きを取り戻しただけだ。
    そして悠仁が居るはずの部屋に戻ったら悠仁が居なく五条は目を見開いた。
    『……悠仁…?』
    何故、居ないのかと思い、もしかして五条が来る前に上層部の連中が悠仁を確実に抹殺する為に連れ出したのかと動揺したが、あの臆病なジジイ共が連れ出すだろうか。
    しかし上層部総出で悠仁を抹殺するつもりだとしたら解らないと思い五条は目隠しを外しよく見たら、ある人物の残穢である事が判り目を見開いた。
    『…恵が悠仁を連れ出してくれたのか…』
    その残穢は悠仁の親友で五条のもう一人の教え子でもある伏黒恵の残穢で間違いなかった。
    恐らく恵は此処に来て悠仁を自分の影に入れて連れ出したのだろう。
    流石の五条でも恵が悠仁を影に入れているならば悠仁の居場所は判らなくお手上げだ。
    しかし、恵は基本的に悠仁の意見を尊重するタイプな為、悠仁を連れ出し逃げてくれると思っていなかった。
    それでも、これは五条にとっては本当に嬉しい誤算だと思い口角を上げた。
    『…これで希望が見えた…。最高だよ、恵。精々、悠仁を連れて無事に七年逃げ切ってよ』
    悠仁は納得しないかもしれないが恵なら悠仁を上手く説得出来るだろう。そうしたら悠仁も恵と一緒に逃げると覚悟を決めてくれるだろう。
    そう、五条が七年頑張り悠仁と恵が七年間、無事に逃げきれたら悠仁に居場所を作ってあげられ悠仁が安心して生きれる未来も作れるはずだと思い五条はクククッと喉奥で笑い踵を返した。
    『さてと、これから忙しくなるな。先ず協力者を集めないとね』
    悠仁と仲が良かった人物を協力者にしよう。悠仁は人誑しで基本的に愛されていた人物だから、それなりに協力者は集められる。
    そして、悠仁の居場所を作り七年経過したら五条は悠仁と恵を迎えに行こうと誓った。

    ✕2019年秋、○月△日、死刑執行日、両面宿儺の器である虎杖悠仁、逃亡✕
    ✕両面宿儺の器を逃がしたのは呪術高専二年の一級呪術師である伏黒恵だと断定。伏黒恵も呪詛師として指名手配✕
    ✕両名見付け次第、高専に連れ戻し死刑✕
    ✕状況によりその場で死刑も可✕
    ✕両面宿儺の器である虎杖悠仁の死刑執行人は特級呪術師の五条悟✕
    ✕呪詛師、伏黒恵の死刑執行人は呪術高専三年の特級呪術師である乙骨憂太✕

    あの処刑日の時、悠仁は確かに担任である五条に処刑をされるはずだった。
    悠仁も死刑を受け入れていたし自分は死ぬべきだと思い封印から解かれた五条に泣き縋り『五条先生、早く俺を殺して』と頼んだ。
    残酷な事を頼んだ自覚はある。五条はその時、『ごめん、ごめんね。護れなくてごめんね、悠仁』と謝罪してきた。
    五条は何も悪くないのに謝罪し泣いている悠仁を宥めてくれた。
    皆、『五条はクズだ』と言っていたが悠仁からしたら五条は凄く優しい人物だと思う。
    そうでなければ元々、即死刑の身だったのに執行猶予なんか付けたりしないだろうし一度、悠仁が死んて生き返った後、あそこまで面倒見てくれたりもしないだろう。
    確かに五条は軽薄で適当かもしれないが、ノリが良く生徒思いで優しく強い人物だと思う。
    周りは五条の事を『精神年齢は小学生と変わらないガキだ』とも言っていたが悠仁はそう思えなかった。
    確かに子供みたいな一面は良くあるが本当は五条は色々と過酷な経験してきた大人だと強く思う事があった。
    先程まで軽いノリを出していたのにも拘らず五条は途端にふと凄く真剣で大人な一面を見せる時があった。
    そんな五条を見ていると『やっぱり先生は大人だなー』と思い安心も出来、居心地が良かった。
    優しくノリも良く面白くて楽しい教師だ。デリカシーが無い発言も多々あったが、そんな五条が本当は教え子を処刑するなんてしたくないはずだ。
    しかし五条は優しいから悠仁が頼んだら悠仁の意志を尊重して処刑してくれるだろうという考えもあった。
    実際、五条は悠仁の意志を尊重し処刑場所を作ってくれた。声が哀しみに溢れていた為、本当は処刑にしたくないという気持ちが強くあるのだと解った。
    五条が悠仁に背中を向けた時、五条は拳を握り締め身体を震わせていた。もしかしたら泣きたかったのかもしれないが大人として意地を見せて我慢していたかもしれない。
    そして五条は見回りをすると言って出て行ったが、恐らく泣きに行ったのだろうと思ったら悠仁は胸を痛めた。
    『ごめん、五条先生』
    小声で五条に謝罪し少ししてから部屋に入ってきた人物が居て悠仁は目を見開いた。
    『虎杖』
    悠仁を呼んだ人物は悠仁の同級生で親友でもある伏黒恵であった。
    思えば伏黒にもよく助けられた。伏黒はクールだが意外と情のある人物で悠仁を凄く気に掛けてくれた。
    『どうしたんだよ?伏黒。もしかして最後に会いに来てくれたのか?』
    それにしても五条が結界や御札を張ったはずなのによく伏黒は入ってこられたものだ。
    もしかしたら最後に自分に会えるように伏黒でも入ってこられるような結界を張っただけかもしれないと思い悠仁を苦笑を浮かべたら伏黒は真っ直ぐ射抜く様な瞳で悠仁を見ていた。
    『なぁ、虎杖、俺、何度もお前に言った事あるよな?死んだら殺すって…』
    確かに何度も言われた事ある。だが、今回のは伏黒も納得しているはずだし悠仁の意志を尊重してくれたはずだと思っていたらズプッと音が聞こえふと床に視線を向けたら伏黒の影が伸びており悠仁は驚いて目を見開いた。
    『…、!ふしぐ…っ』
    何をするつもりだと言おうとした瞬間、悠仁は影に呑み込まれてしまった。
    それが処刑場所での悠仁の最後の記憶であった。

    「虎杖」
    名前を呼ばれ悠仁はハッと目を覚ましたら見覚えの無い天井が見え悠仁は起き上がりキョロキョロと周りを見渡すと、やはり見覚えが無い部屋で悠仁は些か心配そうな表情で悠仁を見ている伏黒を見た。
    「伏黒、此処、何処だよ?」
    一軒家の古い家みたいな場所で悠仁は怪訝な表情で伏黒を見ながら思っていた。
    確かに自分は処刑場所に居たはずだ。五条が出ている間に伏黒が現れ影に入れられたはずだが、あれは夢であって欲しいと思っていたら伏黒が溜息を吐いた。
    「簡単に言えば此処は隠れ家だ。お前の処刑が決まる前に念の為に何ヶ所か隠れ家を手に入れておいた。追手は来るだろうが今の俺達ならどうにでもなるだろ」
    その伏黒の発言に悠仁は焦り伏黒を睨み付けた。
    「お前、何考えてんだよ!?今直ぐ俺を連れて戻れ!反逆者としてお前まで死刑になるぞ!」
    「もう遅い。とっくに俺も呪詛師として指名手配されてる。それに俺はその覚悟でお前を連れ出したんだ」
    「はぁ!?ホント、何考えてんの!?お前!処刑日からどれぐらい経ってんだよ!?」
    「もう既に五日経過してる。お前の処刑決行時間から僅か六時間で俺も呪詛師として指名手配されたんだ」
    「何でそんな事…っ、お前、俺の死刑に納得してたじゃねぇか!!」
    そう怒鳴ってやれば伏黒は殺気を出し悠仁を睨み付け悠仁の胸倉をグイッと掴み上げた。
    「納得だと?誰が納得したと言った?納得する訳ねぇだろ!!ふざけんな!五条先生だって納得なんかしてねぇぞ!一生納得するものか!俺も五条先生も只、お前が自分を責めて苦しんでたからお前の意志を尊重しようと思っただけだ。だが、無理だった。お前が居ない世界なんて何の意味がある?何の意味があるんだよ……。なぁ、虎杖、教えてくれよ。それこそ納得いく理由を…」
    「伏黒…」
    悲痛な声でそう訴えた伏黒が泣いていた為、悠仁は伏黒が泣くなんて珍しいと思い驚いて目を見開き伏黒の名前を呼んだら伏黒が悠仁の肩に顔を埋めてきた。
    納得がいく理由を教えろと言われたら色々とあるはずだ。恐らく呪霊が少なくなるだろうし悠仁は宿儺に主導権を握られてる時とは言え人を殺したのだから。
    だが、恐らくそれを言ったら伏黒はまた怒るだろうし『お前は悪くない』とか言いそうな為、口を噤み伏黒の頭を撫でで宥めたら伏黒は意外と大人しくそのまま悠仁に撫でられていた。
    「虎杖、きっと俺が何言ってもお前は自分が悪いからって言うんだろうな。お前のその考えが変わらねぇのは解ってる。だが、そう思うなら死んで楽になろうとすんじゃねぇよ。寧ろ罪を償う為に生きろ。償いとして人を助けながら生きて行けよ。死ぬのは絶対許さねぇぞ」
    確かにそうだ。悠仁は結局、楽な方に逃げようとしただけだ。死んで楽になりたいと。
    勿論、悠仁が宿儺と死んだら呪霊の被害者も減るだろうと思っていたが、結局、今は一番大きな理由は楽になりたかった。
    例え悠仁が宿儺と死んでも呪霊が居なくなる訳でもなく被害者は出る事は出る。
    今になり伏黒の『償いとして人を助けながら生きて行け』と言う言葉が胸に重く伸し掛かった。
    大体、祖父にも『人を助けろ』と言われたのだから死んで楽になるなんて赦されない。もっと沢山の人を助けながら生きて行こうと思ってしまった。
    「そうだよな。でも俺達、多分、追手が来て処刑されるよな」
    しかし、人を助けながら生きて行くなんて簡単ではないと思い直した。
    元々、悠仁は処刑対象であり逃亡したら直ぐに追手が来るはずだと思ったら伏黒が再び悠仁の顔を真っ直ぐ見て悠仁の頬に触れてきた。
    「七年だ。七年逃げ切ったら多分、お前は処刑も取り消されて普通に生きて行けるはずだ。勿論、一般人には戻れねぇだろうけどな。呪術師としては普通に生きて行けるという事だ」
    「七年?」
    どういう事だと思い悠仁は不思議そうに伏黒の顔を見たら伏黒は頷いた。
    「一般の世界でも犯罪者の時効てあるだろ?それは呪術界でもあるんだよ。だが、あまり知られてねぇけどな。特に特級呪物を呑んだお前に知られたらお前が七年逃げ切ったらヤバイと思われるだろうからな。最も上の連中はそれを守る気はあまりないだろうが、今から時効の七年後まで逃げ切れたら五条先生がどうにかするだろう」
    まさか時効が存在するとは思わず悠仁は大きく目を見開いた。
    「時効なんてあるのか」
    「ああ、因みにお前の時効は七年だ」
    「五条先生がどうにかするってどういう事だよ?」
    「五条先生の夢を訊いた事あるか?」
    そう訊かれ悠仁は確か一度死んで地下に匿って貰った時に軽く訊いた事あると思い頷いた。
    「呪術界のリセットだったっけ?」
    「そうだ。リセットと言っても呪術界を無くすとかじゃねぇぞ。人間が居る限り呪霊は産まれ呪術師の存在は絶対だからな。只、お前みたいな奴が理不尽に死刑にされねぇように上層部の人事の入れ替えをしてお前みたいな奴が過ごし易くなるような呪術界にするって事だ。あの人はその為に俺達みたいな教え子を強く育ててきたんだ。そして今回、五条先生はお前を護れなかった責任を感じお前の意志を尊重して処刑にしようとしたが、あの人は絶対にお前を殺したくはなかったんだ。五条先生は特にお前の事を一番気に入っていたからな。きっと五条先生は誰かに虎杖を連れて逃げて欲しいと思っていたはずだ。無意識かは知らねぇがお前の処刑部屋の結界も緩く張っていたからな」
    「五条先生と企んで俺を逃したって事か?」
    実は五条と伏黒が手を組み五条が緩く結界を張り伏黒が悠仁を逃がす算段を立てたのかと思ったが伏黒は首を左右に振った。
    「違ぇよ。言っただろ?無意識だろうが五条先生は結界を緩く張ってたってな。五条先生が本気で結界を張ってたら俺なんか入れねぇよ。あの人はお前の為にお前を殺すつもりで居たのは確実だろうが、何処かでお前を連れて逃げて欲しいという感情があって偶然、俺がお前を連れて逃げたんだ。五条先生がお前を本気で殺したいとか処刑にするべきだと思ってたら俺達はとっくに五条先生に見付かって殺されてただろうな。五日も経ったのに俺やお前が指名手配されてるだけで、あの五条先生にも未だに見付かっていないという事はそういう事だ。俺がお前を連れて逃げ出したから都合がいいと思ったんだろうな。今頃、上に色々と誤魔化してお前の味方を全員集め呪術界をリセットしようとしてるところだろうな。お前の味方になる奴の殆どは五条先生の教え子だった人か五条先生に近い人物ばかりだ。それこそ特級か一級ばかりの実力者だ。その人達と協力して約七年で呪術界をリセットして俺達を迎えに来るだろう。それまで俺達は五条先生を信じてただ逃げるしかねぇよ。例え七年で時効を迎えたとしてもあの上層部のままじゃお前はやっぱり命を狙われるだけだろうからな」
    それを訊いた悠仁は罪悪感に苛まれ哀しげに眉を下げた。
    自分の所為で五条や伏黒に迷惑を掛けていると思っていたら伏黒にバシッと額を指で弾かれ悠仁は痛みで伏黒を睨み付けた。
    「いってぇ!何すんだよ!?」
    「お前、また自分の所為で俺や五条先生に迷惑を掛けてるとか思ってんだろ?ハッキリ言うぞ。お前に死なれる方が迷惑だ。お前が死んだら五条先生は恐らく精神壊れるぞ。あの人の精神が壊れたら、それこそこの世界は終わりだと思え」
    確かに現在、呪術師最強の規格外の五条の精神が壊れたら五条は動けなくなり呪霊を祓う事も出来ず、それこそ特級レベルの呪霊がウジャウジャ出そうだ。
    そうなったら確かにこの世界は確実に終わるだろう。最強の五条悟が居ないというだけでかなり大変な事になると思い悠仁は力強く頷いた。
    「分かった。俺、お前と逃げるよ。五条先生が迎えに来てくれるまで」
    五条の悠仁を殺したくない思いは本当に強く伝わっていた。
    だから伏黒が言った事は案外脅しではなく本気かもしれないと思い悠仁は生きる決意をし五条が迎えに来てくれるまで伏黒と逃げる事を選び悠仁の伏黒との長い逃亡生活が始まった。

    それから長い年月が経過し2026年、夏がもうすぐで終わり秋がやってこようとしていた。
    虎杖悠仁と伏黒恵は逃亡してから後、数ヶ月で七年が経過しようとしていた。つまり悠仁の時効まで後、数ヶ月である。

    「虎杖。虎杖、起きろ」
    伏黒は虎杖を呼び起こしていたが虎杖は疲れているのか中々起きなかった。
    疲れて当然だろう。ここ七年近くずっと逃亡生活を続けている上に虎杖は浅い眠りを繰り返し続けていたからだ。
    偶に深い眠りに就くと今回のように中々起きないのである。
    この七年近く追手が来る事はよくあったが虎杖の味方であり五条派の人物が追手にバレないように陰から追手を妨害してくれたお陰か逃亡生活は意外と楽であった。
    それでも五条派も多忙な時がある故、妨害出来ない時があり、その時は少し厄介であったが伏黒も虎杖も強い為、そこまで苦労はしなかった。
    こんな時に強く思う事は本当に自分達が最強である五条派の人物であり五条の弟子で良かったと心底思っていた。
    最強の五条が規定側の人物であったら虎杖も伏黒もとっくに五条の見付かり処刑されていただろう。
    そもそも五条が規定側の人物であったら虎杖と初対面の時にあの仙台で虎杖は既に処刑されていただろうと思っていたら虎杖の頬に目と口がパックリ出てきた。
    「伏黒恵、小僧を起こすなら叩き起こせ。今回ばかりは何となく嫌な感じがするぞ。まぁ勘だが」
    「宿儺」
    虎杖に受肉した特級呪物である両面宿儺が声を掛けてきた。
    この七年の間に両面宿儺はすっかり虎杖に絆され何時の間にか虎杖と伏黒の味方になっていた。
    それでも、もしもの事があるからと虎杖と宿儺の間で縛りを結んだ為、今は宿儺に全く危険は無いと言ってもいい。
    それに宿儺の勘は意外と当たり宿儺のお陰で危険を回避出来た事もあった。
    「嫌な感じってどういう事だ?」
    「只の俺の勘だ。上の人物も此処まで来たからと言ってお前等を見逃す訳なかろう。必ず何か仕掛けてくるはずだ。今まで以上に警戒して行けと言っているのだ」
    「そうだな。俺も此処まで来てもあっさり逃げきれるとは思ってねぇよ。必ず何か仕掛けてくるとは思ってる」
    その証拠に高専時代に五条が出張の時を狙い上層部の企みで任務で特級を送り込み虎杖は命を落とした事がある。
    そこまでする人物なのだからもうすぐで時効になるとは言え上層部の人物が大人しく虎杖を見逃す訳がないと思っていたら虎杖がゆっくりと目を覚ました。
    「起きたか、虎杖」
    「あー、おはよう、伏黒」
    「おはよう」
    「漸く起きたか、小僧」
    「あー、宿儺もおはよう」
    「ふん」
    宿儺は素直に『おはよう』と言うタイプではないのは解っている。だが、あの呪いの王が返事をするだけでも凄い事だろう。
    それより、そろそろ此処を出て次の隠家に逃げた方がいいかもしれないと思っていた。
    「虎杖、もう今日には此処を出て次に行くぞ」
    「あ?マジ?もうヤバそう?」
    「何となくな。宿儺も言ってたしな。大体、あの上の奴等がそう簡単に逃がす訳がねぇよ。近い内に何か絶対に仕掛けてくるだろう」
    「そうだよな。五条先生、大丈夫かな?無理してねぇかな?」
    「あの人なら大丈夫だろ。伊達に最強を名乗ってる訳じゃねぇ」
    「でも、幾ら最強でも五条先生も人間じゃん?俺等の為に無理して体調崩したりしてねぇかな?」
    (虎杖のこういうとこに五条先生も強く惹かれたんだろうな)
    あの最強の五条悟を純粋に心配する人物なんて恐らく居なかったはすだ。
    誰もが五条は最強だから大丈夫という思いが常にある。五条自身も『僕は最強だから大丈夫』とよく言っていたぐらいだ。
    それでも虎杖だけは違った。虎杖だけは五条が最強だと解っていても五条を普通に人間扱いし何の打算もなく純粋に五条の心配もしていた。
    恐らく五条はその純粋な心配が心地良く感じたのだろう。
    だからこそ五条は虎杖に懐いていた。生徒に懐くと言う言葉は可笑しいかもしれなく普通は逆に虎杖が五条に懐いていると思う方が自然だろう。
    しかし、五条と虎杖の間柄で言ったら五条が虎杖に懐いていると言った方がいい感じだ。
    そもそも五条は軽薄で生徒に対してもノリが軽く誰に対してもフレンドリーに感じるかもしれないが、そんな事はなく五条程、他人との壁が分厚い人物は居ないというぐらいだ。
    つまり心から他人に気を許す事はない。そんな五条が虎杖相手には心から気を許し虎杖にはスキンシップが激しかった。
    虎杖もそんな五条を邪険にする事なく受け入れていた。
    五条への虎杖への想いは一目瞭然であったが虎杖の方は元々、人懐こくお人好しで心が広い為、五条を心から慕っていると解っていても五条に対して恋愛感情を抱いているか解らなかった。
    しかし、この逃亡生活の中で無自覚かもしれないが恐らく虎杖も五条を想っているだろうと解った。
    何時も虎杖は一言、二言目には五条の名前を出すし眠っている時にもよく泣きながら寝言で『五条先生』と呼んでいる。
    ぶっちゃけ伏黒はこの逃亡生活の間に虎杖を自分のモノにするつもりであったが、虎杖の気持ちが五条にあるならば身を引くしかないと思った。
    本当はあんな自他共にクズでいい加減な人に虎杖を渡したくないというのが本音だ。
    それでも五条は意外と虎杖に対しては誠実であったし虎杖が五条を想っているならば仕方ないだろうと思った。
    「虎杖、早く顔洗って着替えろ。飯食って直ぐに出発するぞ」
    「応!」
    それから虎杖が顔を洗って着替えてから食事を摂り、今日まで過ごした隠れ家を出て次に向かって出発した。

    時は虎杖達が居る2026年から20年前に遡り2006年、高専二年の最強二人が担任の夜蛾に呼び出され上層部からの命令だと任務を言い渡された。
    「はぁぁぁ!?何言ってんの?夜蛾セン。その歳で頭がボケたか。可哀想に。まだ若ぇのに。いや、もう30代だからオッサンか」
    「悟、殴られたいか?それに私じゃなく上層部からの命令だ。私だって訊いた時は何言ってるのだと思ったぞ」
    「上の連中も何言ってんの?呪物で20年後の未来に行って両面宿儺の器を処刑しろって…。傑も可笑しいと思わねぇか?」
    「そうだね。流石に私も驚いてるよ。その20年後の未来では両面宿儺の器を処刑する人物が居ないのですか?夜蛾先生」
    その高専二年の最強二人とは五条悟と夏油傑の二人である。
    つまり簡単に言ってしまえば虎杖悠仁と伏黒恵の師である五条悟と最悪の呪詛師である夏油傑の20年前の姿であった。
    この高専二年の頃の五条悟は兎に角、自信満々で傲慢で何でも出来て自分に敵う人物は居ないと思っている人物だ。
    伏黒甚爾との戦いで殺されそうにはなったが、そのお陰で新たな術式も使えるようになり本当の最強となったから余計だ。
    その五条悟がそれなりに穏やかで優しくなりあまり考えてなく適当に見え、その実、慎重に考えるようになったのは親友の夏油傑が呪詛師になってからだろう。
    つまり大人になってからの五条悟は幾ら最強でも出来ない事とか沢山あると身を以て知ったからこそ変わったと言ってもいいだろう。
    勿論、この高専二年の五条はそんな事が起こると思っていないのだから変わりようがない。
    「いや、居るには居るみたいだが色々あるみたいだな。詳しくは知らんが。両面宿儺の器は未来では約七年前に処刑されるはずが逃げたらしい。そして両面宿儺を逃がした人物も居て、その者も呪詛師として指名手配され、そいつも処刑対象に入ってる。未来から来た上層部が資料を持ってきた。この二人だ。あまり詳しい事は書かれていないが」
    夜蛾から資料を渡され高専二年の五条悟と夏油傑は、その書類を読み顔を顰めた。
    「両面宿儺の器の名前が虎杖悠仁。20年後の世界では23歳だが逃亡した当初は高専二年の16歳。両面宿儺の指は既に20本取り込んでる。オッエェ〜…、マジかよ…。そして虎杖悠仁を逃がし一緒に逃亡しているのが虎杖悠仁の同級生で友人である伏黒恵…。て、伏黒って、コイツ、伏黒甚爾の息子じゃねぇの?この写真、間違いねぇ。伏黒甚爾にソックリだ。両面宿儺の器を逃がし呪詛師になるとか父親が父親なら息子も息子だぜ」
    高専二年の五条悟は伏黒恵の写真を見て嘗ての憎き敵の伏黒甚爾を思いだし舌打ちしたら夏油も頷いた。
    「確かによく似ているね。親子だと直ぐに判るよ。だが、七年も逃亡出来るぐらいに、この二人は強いって事かな?まぁ特級呪物の両面宿儺の器と伏黒甚爾の息子なら強いんだろうが」
    「けど最強の俺等には敵わねぇよ」
    「まぁ、それだけど可笑しいと思わないかい?」
    「何だよ?」
    「20年後の未来では、その最強の私達は居ないって事かな?私は兎も角、君が20年後の未来に居るならこの二人が逃げたとしても直ぐに捕まえられるだろうしあっさり処刑出来ると思わないかい?」
    「知らねぇよ。20年後の未来で俺等が居るかどうかなんてどうでもいい。まぁ、でも面白そうな任務じゃねぇか。行ってやろうじゃねぇの。20年後の未来に」
    高専二年の五条悟は未来の自分達がどうなっているか余り興味はない様子でそう言ったら夏油も頷いた。
    「そうだね。この呪物で未来に行けるんですよね?夜蛾先生」
    「ああ、そうだ。その呪物で20年後の未来の恐らく両面宿儺の器が居る場所の直ぐ近くに飛ばされるだろう。この呪物にはこの高専で何本か所持してる両面宿儺の呪力を少し籠めてある。つまり、この呪物で未来に行ったら同じ呪力同士が引き合う感じで両面宿儺の器の近くに飛ばされるという事だ」
    「成程ねー。リョーカイ!未来に行ってサクッと殺してサクッと帰ってくんよ。行こうぜ、傑」
    「あ、因みにお前等は約三ヶ月の出張扱いになるからな」
    「はぁ!?三ヶ月ー?三ヶ月も未来に居ろってか?」
    「両面宿儺の器の時効が三ヶ月近く先なんだ。時効までにお前等の任務が遂行出来るかどうかで三ヶ月なんだろうな。お前等がこの世界に戻ってくるには未来でそれと対なる呪物で帰ってくる事になるが、その為には未来の奴との協力が必要だな。お前等の記憶も消さなきゃいけないからな」
    「マジか。面倒臭ぇな。まぁ折角だから任務終わったら未来で観光してから帰ってくるか」
    「そうだね。寮に戻って少し着替えとかも持って行かないとね」
    そして高専二年の五条悟と夏油傑は寮に戻り少しした荷物を持ち2006年から20年後の2026年の未来に旅立った。

    虎杖悠仁と伏黒恵は前の隠れ家から出て次に向かう為に走っていた。
    次の隠れ家はもうすぐだ。悠仁は最初、伏黒の影に入り伏黒に運ばれていたが、今は追手の気配も何もなく次の隠れ家までもう少しだからと影から出て走っていた。
    しかし突然、強い呪力の気を感じ悠仁と伏黒は驚き動きを止めた。
    「この呪力、五条先生か!?だが、二つ。五条先生と乙骨先輩か?」
    確かに伏黒の言う通り一つの呪力の気は五条によく似ている。だが、五条よりは劣ると思っていた。
    そして、もう一つの呪力は正体は乙骨と同等ぐらいだと悠仁は冷静に思っていた。
    「違う!五条先生よりは劣るし乙骨先輩と同等くらいだけど間違いなく特級レベル!」
    「は!?特級なら五条先生と乙骨先輩だろうが!後は九十九さんか?」
    「けど俺、九十九さんが来るとは思ぇねぇけど…」
    「だな。という事は上層部の刺客か?上層部が呪詛師に頼み呪詛師が放った意志がある特級呪霊とか…」
    「その可能性も無くはねぇな。でも、そこまでする?」
    「上層部はお前を抹殺する為なら手段は問わねぇと思うぞ」
    「だよなー」
    その時、攻撃が素早く悠仁と伏黒の元に放たれ悠仁と伏黒が避けた瞬間、懐かしい声が聞こえた。
    「術式順転、蒼」
    その声がし、ドカッと衝撃が来る前に間一髪で悠仁と伏黒は避けた瞬間、高専の制服を着用した二人の男が現れ悠仁と伏黒は見覚えのある男二人に目を見開いた。
    「………五条、せんせ…?」
    悠仁は呆然としながら小声で五条の名前を呟いたが男二人には聞こえなかった様子で黒の丸いサングラスを掛けた男は嘲笑うように口角を上げた。
    「へー?よく避けたじゃねぇか。流石、宿儺の器ってか?」
    師である五条と瓜二つと言っていい程、似ているし術式も一緒だが、雰囲気が師である五条とは全く違う男はそう言い伏黒を見た後、悠仁をジロジロと凝視した。
    「やっぱ、すげぇ似てるわ。その顔、胸糞悪くてムカつくぜ。しかも、コイツはマジで混じってやがる。キッショ。こんな奴を今まで放っておいたのかよ?何考えてんだ?」
    等々、顔を思い切り顰め五条によく似た男がそう言ったが、悠仁も伏黒も目の前の男は師である五条とは別人だと思っていた。
    師である五条は此処まで口も悪くないし人を傷付ける様な発言は簡単にしない。デリカシーは無いが弁えているとこは弁えているからだ。
    そしてもう一人は何となく渋谷事変の時に現れた夏油傑に似ていた。
    最も身体が夏油傑であり中身は違った。夏油傑は悠仁が高専に来る半年ぐらい前に五条に処刑された呪詛師であった。
    「アンタ等、誰だ?」
    伏黒が男二人を睨み付け問い掛けたら五条に似た男は口角を上げ夏油傑に似た男は胡散臭い笑みを浮かべた。
    「一応、自己紹介が必要かな?私は夏油傑。高専二年だ。20年前の過去から来たのさ。宿儺の器の虎杖悠仁くんと呪詛師の伏黒恵くん」
    「俺は五条悟。コッチの上層部から依頼があったらしく俺も20年前の過去から来たんだ。ま、忘れてくれていいぜ。直ぐにお前等の事は抹殺するからな」
    男二人にそう言われて悠仁は驚いて目を見開き伏黒を見たら伏黒も驚いたように僅かを目を見開き悠仁を見て頷いた。
    悠仁も伏黒もこの二人は師である五条悟と呪詛師の夏油傑の20年前の姿だと。
    悠仁も伏黒も夏油傑の事は詳しくは知らないが五条の方は師であり担任だったのだから、ある程度知っているはずだった。
    しかし、あの五条が高専時代と比べ此処まで雰囲気が違うという事に驚いていた。
    (五条先生に会いてぇな)
    悠仁はこの目の前の冷たい感じの高専時代の五条悟を見ていると、あの優しく基本いつも笑顔でノリが良く面白い師である五条に無性に会いたくて仕方なかった。
    『悠仁』
    五条に優しく甘い声音で自分の名前を呼んで欲しいと思い目頭が熱くなった。

    五条はある呪力の気配を感じ取り嫌な予感がし背中に冷たい汗が流れた。
    「この大きな二つの呪力はまさか…」
    普通なら有り得ない。だが、上層部の連中は悠仁を抹殺する為なら手段を問わない事も知っている為、五条は怒りを露にしチッと舌打ちをした。
    「忌々しい。悪足掻きで此処までやる訳ね」
    勿論、五条は上層部の連中が黙っている訳がないと思っていたし悠仁の時効が来る前に何か仕掛けてくるとは思っていた。
    しかし、此処までするかと思った。この二つの内の一つの呪力は自分の呪力で間違いないが自分より劣る呪力で躊躇なく悠仁を呪いと同等に扱い悠仁を抹殺しそうなのは高専時代の自分である五条悟だ。
    そして、その時ならば過去の自分の親友の夏油傑も居るのは当然だろうから、もう一つの呪力は嘗ての親友の夏油の呪力だ。
    幾ら悠仁と恵が強くなったとは言え正直に言って高専時代の最強二人には敵わないだろうし殺される可能性の方が高いと思っていた。
    悠仁達が勝てる方法は悠仁が主導権を宿儺に渡し宿儺に戦って貰う事だろう。
    高専時代の五条と宿儺ならば圧倒的に宿儺の方が強いと解っているからだ。だが、恐らく悠仁は宿儺に主導権を渡す事は無いだろう。
    だとしたら悠仁が取る行動は処刑される事だろうと容易に予想が付く。
    「憂太。悠仁と恵に危機が迫ってるから此処任せていい?僕が居なきゃ勝てないと思う」
    今の五条は高専の学長の立場で特級呪術師である。そして五条の直ぐ近くの協力者は同じく特級の乙骨憂太と補助監督の伊地知潔高だ。
    今、任務の振り分けは殆ど伊地知と乙骨が行っている。そして上層部の入れ替えはもう少しで入れ替えが出来そうなのだ。
    つまり乙骨か伊地知が上層部に『五条は任務に行った』と言えば多少誤魔化せる。只、五条も上層部に信用はされていない為、長時間はキツいだろうがと思っていたら乙骨が笑顔で頷いた。
    「どうぞ行ってきて下さい。何かあったら直ぐに連絡しますんで。上層部への誤魔化しは任せて下さい。どうにでもなります。五条先生は早く虎杖くん達の所に行って虎杖くん達を護って下さい」
    「ありがとう。なるべく早く戻ってくるから」
    五条は悠仁の時効が来て上層部の入れ替えが綺麗に終わるまでは悠仁に会う気は無かった。
    全ての事が綺麗に終わるまでは悠仁も安心しないし納得しないだろうと思っていたし、そもそも悠仁の為とは言え一度は本気で悠仁を処刑にしようとした五条が中途半端に悠仁と会う資格は無いと思っていた。
    最も悠仁はそんな事気にしないだろう。五条なりのケジメなだけだ。だが、今はそんな事言ってられない。今、悠仁を護れるのは五条しか居ないからだ。
    「悠仁、恵、何とか耐えて待ってて。今から行くから」
    この七年間、本当は五条は悠仁に会いたくて仕方なかった。離れてて不安でもあった。
    この七年、悠仁と会わなく離れていた所為か悠仁が心配で仕方なく悠仁が追手に処刑される夢を見てきた。
    その時の五条は絶望で叫び飛び起きる事が殆どであった。その時に何時も思うのだ。あの時、恵が悠仁を連れて逃げてくれて良かったと。
    あの七年前の処刑日の時、恵が悠仁を連れ出してくれなく五条が悠仁を殺してたら五条は確実に心が壊れていただろう。
    悠仁と恵が逃げてから悠仁の味方の仲間にこっそりと悠仁と恵の様子を見に行って貰い情報は教えられていた。
    悠仁が恵に言われた言葉で生きようと決意した事も解っていた。悠仁が生きる希望を持ってくれたのなら五条は悠仁の為に何でもする決意をした。
    悠仁が生きてくれるのなら、それ以上に嬉しい事はないと思い五条は悠仁と恵の元に向かう為に術式で飛んだ。

    悠仁と伏黒は高専時代の五条悟と夏油傑と激しいバトルを繰り広げていた。
    最初はいい戦いだと思っていたが除々に悠仁と伏黒が押し負けてきた。流石、最強の男は20年前であっても最強らしい。
    「開!」
    悠仁は宿儺の術式を一応使えるようにはなったが慣れていない為、上手く使えなく威力は弱い。
    炎の攻撃が高専の五条悟と夏油傑の元に飛んで行ったが高専の五条悟は無下限で攻撃を防いだ。
    体術だけで言えば悠仁と高専時代の五条はほぼ互角と言っても良かった。だが、術式で言えば悠仁が慣れていない分、向こうの方が上だった。
    「宿儺の術式ねー。お前、それ使い慣れてねぇだろ?だけど、中々やるじゃん。流石、宿儺の器。正直、此処までやるとは思わなかったわ。あっさり殺れそうだと思ってたんだけどなー」
    「まぁ、仮にも猛毒の特級呪物に耐えられる器なんだ。此処までやるのは予想外であったとしても納得はいくかな?」
    「だなー。しかも体術だけで言ったらほぼ俺と互角だぜ?それに素の力だけで言えば恐らく向こうの方が上。中々のバケモンだ。正直厄介だわ」
    「おや?悟がそこまで他人を評価するとは珍しい」
    「まぁな。この宿儺の器はそこらの特級呪霊なら余裕で勝てるぜ?自我は保ってるみてぇだし利用価値があると思われ直ぐに死刑にしなかったって事かもな。だが、正直、アイツの息子には期待外れだわ。アイツの息子だからもっとやる方だと思ってたんだがな。術式には恵まれてる癖に。宝の持ち腐れってやつだな」
    五条が先程から伏黒の事を『アイツの息子』と言っているが悠仁にはよく解らない。
    伏黒に義姉が居るのは知っているが両親の事は余り訊いた事なく両親が幼い頃に居なくなったから五条に面倒を見て貰っていたとしか訊いた事がない。
    人それぞれ色々な家庭事情があるだろうし知られたくないのならと思い悠仁も深く訊く事もなかった。
    それより今、悠仁も伏黒も身体が傷だらけでボロボロであった。これ以上続けても無駄に体力が消費し二人共、殺されるのがオチだろうと予想が付いていた。
    特に伏黒はこれ以上は動けないみたいだ。悠仁も限界が近いのは判っている。逆に此処までよく持った方だろうと思っていたら頬から口がパックリ開き声が聞こえた。
    「小僧、肉体の主導権を俺に渡せ。そうしたら勝てるであろう」
    「駄目だ」
    確かに肉体の主導権を宿儺に渡せば目の前の20年前の最強二人にも簡単に勝てるだろう。
    しかし生憎とそこまでする気はない。今の宿儺は悠仁の言う事は訊くし目の前の二人を殺す事はしないだろう。
    もし身体の主導権を宿儺に渡したら今、色々と頑張ってるであろう師である五条の立場が悪くなる感じがした。
    元々、悠仁の処刑に上層部に執行猶予を持ち掛けたのは五条である。
    今、五条が頑張っているのに宿儺に主導権を渡せば上層部は色々と騒ぎ立て五条の立場が余計に悪くなり全ての責任が五条にいく可能性が大いにある。
    しかも上層部は恐らく五条が悠仁を処刑にする気はないと気付いているはずだ。
    それでも最強を失う訳にはいかないからある程度は目を瞑っているからこそ過去から最強を呼び寄せたのだろう。
    しかし度が過ぎれば五条の立場が弱くなるのも当然だろうと思い悠仁は軽く溜息を吐いた後、目の前の高専時代の五条を真っ直ぐ射抜いた。
    (五条先生、ごめんな) 
    目の前の人物は五条であって五条ではない。まるで雰囲気が違う。悠仁が憧れ尊敬する五条は担任であり師であった五条悟だ。 
    それでも、どんなに雰囲気が違ってもこの目の前の人物も五条悟なのだ。殺されるなら五条に殺されたいと思っていたのだから師の五条悟でなくても有り難いと思わないとと悠仁は柔らかく微笑んだ。
    「いいよ。俺の事殺してよ。もう抵抗はしねぇよ」
    悠仁が死んだら本当に師である五条は怒りと悲しみに暮れるかもしれないが仕方ない。
    これ以上、抵抗してもどうせ殺されるのは逃れられないだろうと思っていたら目の前の高専時代の五条はハッと鼻で笑い口角を上げた。
    「へー?意外と潔いじゃん?諦めたんだ?」
    「まぁね。唯一つだけお願いがあるんだ。伏黒だけは見逃して欲しい」
    そう言ったら高専時代の五条は僅かに顔を顰め夏油の方は少し目を瞬いた瞬間、後ろから伏黒の声が響いてきた。
    「馬鹿野郎!虎杖!諦めんじゃねぇぞ!お前、あの人はどうするつもりだ!?お前が死んだら、あの人の心は絶対に壊れるぞ!それか、あの人は絶望でこの世界を壊す!そうなったらお前が死んだとこでこの世界は終わりだ!!」
    「きっと先生なら大丈夫だよ」
    「大丈夫な訳あるか!!お前、あの人がどれだけお前の事を想ってるか分かんねぇのか!?あの人が一番大切なのはお前なんだよ!」
    「そんな訳ねぇだろ…。先生は確かに俺の事も大切に可愛がってくれてたのは解ってたけど先生はお前の事も他の生徒も大事にしてたはずだ。先生は優しいから」
    本当に五条は優しい。それに巫山戯ていても何だかんだ生徒をきちんと見ており生徒を導いてきた強い大人だ。
    優しく時には厳しく諭し生徒を導く強く格好良い大人だと思っている。ノリが軽い所為か大人だと思われる事は余り無かったがと思っていたら伏黒が溜息を吐いたのが判った。
    「お前、完全にあの人に騙されてるぞ。あの人は言う程、優しくねぇぞ。基本的にすげぇ自分勝手で我儘だしな。あの人はお前が相手だから特別扱いしてたしお前の為にお前の意志を尊重してた事も多々あったが、それはあの人はいい歳してお前に良く見られたかったからだ。つまりあの人はお前が居なくなったらそれこそ絶望で自分勝手な行動を起こすだろうな」
    それが本当なら何故、そんなに悠仁を特別扱いし悠仁によく見られたかったのだろうかと考えていたら目の前の高専時代の五条が思い切り顔を顰め侮蔑したような視線を悠仁に向けていた。
    「何?お前、まさか、その先生とデキてたのか?オッエェ〜…、有り得ねぇ…。てか、その先公も何考えてんの?呪いの生徒に手を出すとかイカれてんのか?」
    「違う。先生とはそんなんじゃ…」
    「まぁ、恋人じゃないとしても、その君達の先生が両面宿儺の器である君の事を心から愛しているのは間違いなさそうだ」
    「そんなんじゃ…」
    否定したいのに何故か否定出来なく悠仁は師である五条との約八年前の想い出を思い出していた。
    『ゆうじー!訊いてー!上のおじいちゃん達が僕を扱き使うんだよー。僕、疲れたー。悠仁、慰めてー!』
    『悠仁ー、恵と野薔薇が虐めるー!慰めてー』
    『悠仁ってホント、いい子だよねー。素直で明るくて優しいし気遣いは出来るし面白いし料理も上手いし最高!僕のお嫁さんになる気ない?』
    『だって僕、悠仁、大好きだもん』
    『悠仁ってホント癒されるー』
    確かに五条は他の生徒より悠仁に対して軽く好意の言葉を口にする事が多いとは思っていた。
    しかし、五条は元からノリが軽いし冗談だろうと思いさらりと流していた気がする。
    確かに悠仁に対してのスキンシップはやたら多かったが本気の好意を持たれてるだなんて思った事はなかった。
    しかし、伏黒が言った言葉や目の前の高専時代の五条が『デキてたのか?』と言う言葉や高専時代の夏油が『君の事を心から愛しているのは間違いなさそうだ』と言う言葉に悠仁はまさか本当にと目を見開いた。
    「…まさか本当に……?」
    呆然としたように悠仁は呟いたら目の前の高専時代の五条はチッと舌打ちした。
    「つまり、その先公はコイツが好きだから完全なる私情で生かしたって事か。くっだんねぇな。そんな訳解んねぇ恋や愛だのという感情に振り回されてよ」
    「私は下らなくはないと思うよ。愛しているからこそ生きて欲しいと思うのは素敵な事じゃないか」
    「オッエェ〜…!キッショ!俺には解んないね」
    「悟、君もいずれ恋愛したら解るんじゃないか?」
    「有り得ねぇ。俺が恋愛するとか一生ねぇな」
    目の前の高専時代の五条が『有り得ねぇ』と恋愛に否定的なのだから、やはり師である五条が悠仁に好意を持っているのは何かの間違いではないかと思っていたら高専時代の五条は眉間に皺を寄せ溜息を吐いた。
    「ま、いいや。確かに俺等はどちらかと言えば危険要素があるお前さえ抹殺出来りゃいいから、そこで動けなくなってるお友達は見逃してやんよ。俺は優しいからな」
    何処が優しいのだと突っ込んでやりたかったが悠仁は言葉を呑み込み、この高専時代の五条は師である五条より余程、子供だと思っていた。
    確かに師である五条は歳的にも大人だ。それでも悠仁は兎も角、五条は周りに『ガキだ』とか『大人気ない』と散々言われていた。
    確かに五条は子供っぽいところはあるし子供の悪戯みたいな事もするし大袈裟に落ち込んだりはするが、大人な所はやはり大人だった。
    悠仁から見れば師である五条は凄く優しいと思い悠仁は五条に対して『先生は優しいね』と言ったら五条は苦笑し『そんな事言ってくれるの悠仁ぐらいだよ。実際、僕、そんな優しくないしねー』と意外と謙虚な事を言っていた。
    しかし目の前の高専時代の五条は冷たい感じであり優しいなんて思わないのに目の前の高専時代の五条は自分を『優しい』と評価している辺り子供だと思った。
    (先生も本当に色々あったんだろうな)
    せめて最後に師である五条に会いたかったし、やはり殺されるなら優しい大人の五条に殺されたかったと思い悠仁は静かに瞼を閉じた。
    「覚悟は出来たか?」
    師である五条と殆ど同じ声なのに冷たい声音でそう訊かれ、そういえば師である五条と出逢った時も五条に『覚悟は出来たって事でいいかな?』と訊かれたが、あの時の五条の声音は本当に柔らかく優しいものだったと思いながらも悠仁は頷いた。
    「それより、この青年達の先生とやらは強いのかな?私達、この青年達を殺して、その先生に怨まれたりしないかい?」
    夏油のその言葉が聞こえ悠仁はこの夏油は何を思っているのだろうかと思っていた。
    「あ?今更、ビビッてんのかよ?傑」
    「いや、別にそうではないんだがね。仮にこの青年達の先生に怨まれるとしても私達がその先生に会わないように気を付け過去に戻ればいい話だしね。只、私はこの青年に手を下す事はしたくないと思ってね」
    今更、何を言っているのだと思っていたら高専時代の五条の低いが聞こえた。
    「あ?傑、テメェ、裏切んのか?」
    「別にそういう訳ではないさ。器だとしても死刑対象には間違いないしね。只、この青年自身は善人だと解る。自分は殺されてもいいから友は見逃してくれなんて言える人物なんて早々居ないよ。彼の先生も彼を愛しているから生かしたい思いもあるだろうが、彼のこの人柄の良さで死なせたくないと思ったんじゃないかい?」
    「あ?ンなの関係あるか。呪術規定では死刑対象だから、そんな甘ぇ事なんて言ってられねぇよ」
    「君は上の人物は嫌いだと思っていたが?」
    「嫌いだよ!だが、これはまた別の話だろうが!」
    「だから私は君の邪魔をする気はない。私自身が手を下したくないだけだ」
    「なら、邪魔すんなよ!」
    「だからしないと言っているだろう。悟、常々言っているが君はもう少し人間らしい感情を持った方がいい」
    「あぁ!?ウッゼェ!気分最悪だぜ」
    何だか二人は喧嘩をしだしたみたいであるが、この夏油傑はきっと優しい人物なのだろうと思っていたら高専時代の五条の強い呪力がビリビリと感じた。
    (あ、今から殺されるな)
    そう感じ悠仁は目を瞑ったまま唇を噛み締め師である優しい五条を思い浮かべた。
    (五条先生、色々してくれたのに本当にごめん)
    悠仁は心の中でそう言った時、背後から伏黒の声が聞こえてきた。
    「止めろ!!虎杖、逃げろ!逃げてくれ!!!」
    それこそ色々な感情を含んだ声であり悠仁は申し訳なく思ったが、どちらにしろ殺されるのならこのまま悠仁だけが死ねばいいと思っていた。
    「伏黒、先生に色々ありがとう、ごめんって言っといてくれ。伏黒も今までありがとう。今まで付き合わてごめん」
    これでも最初の予定よりは随分と長生きが出来たと思っていたら突然、覚えのある懐かしい強い呪力を感じた。
    「来たぞ、小僧。まぁ来るとは思っていたがな。ケヒッ」
    その宿儺の声が聞こえた瞬間、ドカンッと大きな衝撃音が聞こえた後、フワッと身体が宙に浮く感じがし、まさかと思いながらも恐る恐る目を開け、その姿を視界に捉え悠仁は目頭が熱くなった。
    「……五条、先生…」
    悠仁の襟首を掴み宙に浮いているのは悠仁が会いたいと思っていた黒い目隠しで目を覆っている師の五条で間違いなかった。
    五条がどんな表情しているかは窺えないが少し周りを見渡せば五条が何をしたかは解る。
    五条は高専時代の五条悟と夏油傑に術式ではなく呪力で威嚇攻撃をし怯んだ瞬間に悠仁を持ち上げ浮いたのだと解った。
    「術式反転、赫」
    五条が赫の指を立てそう言った瞬間、術式の攻撃が高専時代の五条と夏油に向かったが、夏油はその攻撃をギリギリで避け高専時代の五条は避ける雰囲気は無いと思っていたら夏油が叫んだ。
    「悟!避けろーーーー!!!」
    恐らく高専時代の五条は無下限を張っているから大丈夫だろうと思っていたのだろうが、夏油が叫んだ為、高専時代の五条は漸く避けた。
    しかし避けるのが遅かった為、ドカッと高専時代の五条に僅かに五条の攻撃が当たり高専時代の五条の右頬や右腕から血が流れ高専時代の五条は驚いた顔をしていた。
    「…なっ……!?俺の無下限を破った…?」
    「やはり、あの強い威力では今の悟の無下限は破られるんだ」
    「はぁぁ?てか、何だよ、アイツ!何で俺と同じ術式を使うんだよ。すっげぇムカつく。だせぇ目隠ししやがって!」
    高専時代の五条はそう言った後、五条が使った赫の指を立てた。
    「術式反転、赫」
    次は高専時代の五条が赫を放ったが五条の完全な無下限のバリアでバチッと攻撃が弾かれ高専時代の五条は目を見開いた。
    「…無下限のバリア…?何で…」
    「残念ながらお前如きの呪力の威力じゃ僕には敵わないよ。僕はお前なんかよりずっと完璧な無下限も張れるし僕に攻撃も効かない」
    五条がそう言ったら高専時代の五条は鋭い眼光で五条を睨み上げた。
    「何だよ!?誰だ!?テメェ!俺と同じ術式を使いやがって!」
    「間違えんなよ。お前の方が僕と同じ術式を使ってるんだよ。その御自慢の目で僕の呪力を見たら僕が誰かなんて直ぐに判るんじゃない?」
    五条はそう言った後、ゆっくり顔を悠仁に向け柔らかい気配を出し口だけ優しく笑った。
    「久しぶりだねー、悠仁、元気だった?あーあ、ボロボロになっちゃって。ごめんね。助けるの遅くなって。大丈夫??」
    その優しい五条の声音に悠仁は色々な感情と大きな安堵から涙腺が緩み先程より決壊したようにボロボロと涙を零したら五条は驚いたように口をポカンと開け焦りを見せた。
    「悠仁、どうしたの?君がこんなに泣くなんて珍しいな。どっか痛い?大丈夫??」
    優しく心配そうに訊いてくる五条に申し訳ないと思いながらもフルフルと首を左右に振った。
    「……違う…、何かすげぇ色々と安心して…」
    この五条が傍に居るとこんなにもう大丈夫と安心出来るのが良かった。
    本当は五条が傍に居る安心感がずっと欲しかったし七年前に諦めた命を諦めたくなく死にたくないと無意識に願っていた。
    ずっと五条は無理していないかとか五条は何をしているのだろうかと五条に会いたいとずっと思っていた。
    本当は五条と同じ場所で生きたいと願っていたし高専時代の何だか冷たい五条が現れてから余計に優しい五条に会いたかったと思い悠仁は五条の逞しく安心出来る身体にギュッと抱き着いたら五条が驚いた様にヒュッと息を吸い込んだのが判った。
    「…悠仁……?どうしたの?こんなに抱き着いてきて。いや、悠仁が大胆なのは凄く嬉しいんだけどさ」
    「……先生、五条先生…」
    きっと五条は悠仁が本当はどれだけ不安だったか解ってくれるだろうと思い五条を呼んだら五条は悠仁の身体を右手で抱き締め返し左手でポンッと悠仁の頭を優しく撫でてくれた。
    「今までよく頑張ったね。悠仁、ありがとう。生きる決意をして頑張ってくれて。もう大丈夫だよ。後は僕に任せなさい」
    その五条の優しく力強い言葉に悠仁は涙を流しながらも先程より強い力で五条に抱き着いた。
    「…っ…あ、先生…、五条先生ーーー!!!」
    実は悠仁は五条の前でも思いきり泣いた数は少なかった気がする。
    それでも数少なかったとしても悠仁泣けるのは必ず五条の前だけで他の人物の前では辛くても強がっていた。
    以前、五条の前で泣いたのは五条の封印が解け五条に『殺して』て縋った時だったと思ったら五条は優しく悠仁を抱き締めたまま地に降りた。
    「めーぐみー、大丈夫ー??」
    五条の軽いその声に悠仁は我に返り五条の肩口から顔を離し伏黒を見たら伏黒は眉間に皺を寄せ五条を見ていた。
    「五条先生!アンタ、来るの遅いんですよ!!」
    「えー?これでも急いで来た方なんだよ?」
    「しかも、アンタ、虎杖の次いでのように俺に大丈夫か聞きましたよね?地味にムカつきました」
    「えー?僕、ちゃーんと恵の事も心配してたよー?悠仁の方が危険な目に遭ってたんだから悠仁の方を先に庇うのは当然でしょ。それに僕、恵の方にも攻撃行かないように大きな無下限張ってるし感謝してよー」
    「アンタのその恩着せがましいとこホント、ムカつきます」
    「ちょっと久しぶりに会ったというのにもう少し可愛い事言えないの?悠仁は感動して泣きながら僕に抱き着いてきて『五条先生ー』て呼んでくれて可愛いかったのに。恵も悠仁のように僕に抱き着いてくれてもいいんだよ」
    「嫌です。普通に気持ち悪い」
    「うっわー、相変わらず恵ってば辛辣ー。僕、そんな子に育てた覚えないのになー」
    「アンタに育てて貰った覚えはありません」
    「何で悠仁と恵でこんなに反応の差が違うのかな?駄目だ。僕、泣いていい?悠仁ー、久しぶりだって言うのに恵が虐めてくるんだけど酷くない?僕って可哀想」
    「そうやって虎杖を直ぐ味方に付けようとするの止めて下さい」
    「だって悠仁しか僕の味方してくれないし」
    「いや、俺も必ずしも先生の味方してる訳じゃねぇんだけど…」
    「えっ!?嘘でしょ?悠仁、僕の味方してないの?」
    「いや、時と場合に寄るけど…」
    「えぇ!?悠仁まで味方してくれなかったら僕、生きて行けない…」
    「いやいや、先生、大袈裟過ぎじゃね?でも今回は俺、五条先生の味方かな?やっぱ危険なとこ助けてくれたし軽い口調とは言え伏黒の心配もちゃんとして無下限も張ってくれてたし」
    そう言ったら伏黒は少し眉間に皺を寄せながらも溜息を吐いた。
    「そうだな。助けられたのは事実だし、それには感謝してます。それなのに来るのが遅いとか文句言ってスミマセンでした」
    伏黒が意外と素直に謝罪したら五条は苦笑し悠仁に抱き着いてきた。
    「悠仁、恵が素直に謝罪してきたんだけど」
    「うん、良かったね。五条先生も本当に心配してたんならもう少し伏黒にも真面目に声掛けるようにしてね」
    「うん、解ってるよー。やっぱ悠仁最高ー!悠仁大好きー!!」
    「ありがとう。俺も五条先生大好きだよ」
    やはり五条の『大好き』が本当に悠仁に対しての恋慕を含んでいる好意か解らないと思っていたら五条は悠仁の身体を離し悠仁と恵の頭にポンッと優しく手を置いた。
    「さてと悠仁、恵、下がってな。危ないから」
    先程とガラリと雰囲気が変わり五条は強い圧と殺気を出した為、悠仁と伏黒はそのビリビリした五条の圧と殺気にゾクッとし背中にツーッと冷たい汗を流した。
    (五条先生、すげぇ怒ってる)
    最も五条が殺意を向けている相手は高専時代の五条悟と夏油傑であると解っている。
    五条にとっては大切な可愛い教え子二人を傷付けられた事と最も愛する虎杖悠仁を殺されそうになった事に怒りを露にし過去の自分と嘗ての親友に容赦なく殺意を向けているのだ。

    高専時代の最強二人は向こうで三人が何やら話しているのを訊き高専時代の五条は顔を顰め夏油は苦笑を浮かべた。
    「おい、今の内に攻撃してもいいんじゃね?」
    「無駄な事は止めた方がいい。向こうの無下限で弾かれるだけさ」
    「なぁ、傑」
    「何だい?」
    「あの、ダセェ目隠ししてる奴って…」
    「君も誰かは判っているんだろう?君と同じ術式だが向こうの方が威力は強く高い。あの目隠しも君と同じ目があるからだろうね。そして何より、宿儺の器の青年が『五条先生』と呼んでいただろう?幾ら、この世界が未来とは言え君と同じ術式で君と同じ『五条』は未来の君である五条悟しか居ないだろうね。随分、君とは雰囲気が違っているが」 
    確かに悟もあの黒い目隠しをした男が同じ悟と同じ術式を使った時点で誰かは判っていた。
    しかし、それを認めたくなかった。まさか未来では自分が教師をし死刑対象の両面宿儺の器の虎杖悠仁と自分の敵であるはずの伏黒甚爾の息子をあんな風に庇うなんて思わなかったからだ。
    しかも未来の自分であるはずのあの男が来る前に伏黒甚爾の息子の言葉で、あの男、五条は両面宿儺の器である虎杖悠仁に好意を抱いていると解ったからだ。
    その上、確かに目隠ししている五条は虎杖悠仁を本当に特別に思い必死に護っているのは解ったからこそ未来の自分がそうなるなんて認めたくなかった。
    「解っているが認めたくねぇー」
    「まぁ気持ちは解るが現実を見た方がいい。君は未来の自分が口調も穏やかな感じになり一人称も違うし教師をしているのは驚く上に何より両面宿儺の器の青年を愛しているのを認めたくないだろうが五条悟で間違いないさ」
    「言うな!」
    「アッハッハ…!いや、しかし、つい、さっき恋愛を下らないとか一生恋愛しないとか言ってた君がまさか未来では恋愛しているとか面白いじゃないか」
    「傑、お前、後で覚えてやがれ!」
    「すまないね。私は君とは違い物覚えが悪いからもう忘れたよ。しかし、まさか未来の君を相手にしろって言うのか?ちょっとキツイんじゃないかい?いや、ちょっとどころじゃないだろうなー、ほら来たよ。物凄い殺気を私達に向けているのが解る」
    戯けた感じで傑はそう言うが、その実、焦っているのが物凄く解る。実際、悟自身も焦っている。 
    黒い目隠しをした五条が物凄い威圧感と殺気を悟と傑に飛ばしながら歩いてきている為、流石の悟も嫌な汗が流れ実は恐怖を感じ去勢を張って立っているのがやっとだ。
    相変わらず強い殺気を放ちながらゆっくり此方に歩いてくる目隠しをした五条がハーッと溜息を吐いた。
    「あーあ、ホント、忌々しいなー。まぁ最も上のおじいちゃん達が悠仁をこのまま見逃すなんて思ってなかったし何かしら絶対に仕掛けてくるとは解っていたけど、まさか高専時代の僕達を呼び寄せるなんて思わないでしょ。恐らく高専時代の僕を知っているおじいちゃんなんだろうなー。高専時代の僕なら性格上、悠仁を確実に始末してくれると思ったんだろうなー。ホント、巫山戯てるよ。やっぱ上の奴等、全員殺してやろうか。僕、どれだけ我慢してると思ってんだよ?あー、もう嫌だ。この際、悠仁と二人で何処かに逃げたい!」
    巫山戯たような口調でそう言っているが殺気は相変わらず出したままだ。
    何故、そこまでして両面宿儺の器の虎杖悠仁に固執するのだろうかと思っていたら目隠しした五条がニヤリと口角を上げた。
    「まぁ、先ずお前等からだよ。僕の可愛い教え子達を傷付け僕の一番大切な悠仁を殺そうとしたんだ。死ぬ覚悟は出来てる?」
    目隠しをしている五条がそう言った直後、先程より強い殺気をブワッと露にし悟は恐怖で固まった瞬間、悟の腹にドスッと拳がメリ込み傑の腹には蹴りがメリ込み二人共、その強い衝撃で胃液が込み上げてきた。
    「「…ぐっ…、が…、ゲェぇぇェーー…っ!!!」」
    悟も傑も膝を地に付き口からボタボタと胃液を吐きながら身体を震わせた。
    (嘘だろ?全く動きが見えなかった。コイツは完全にバケモンだ)
    未来の自分を『バケモン』だと思うのもどうかと思うが悟も傑も特級で最強だと言うのに未来の自分と此処まで力の差や威力やスピードが違うとは思わなかった。
    (一体、コイツはこの20年でどれだけ力を付けたんだ?)
    しかも過去の自分達を容赦なく攻撃をするなんて何処かイカれているのではないのかと思っていたら黒い目隠しをした五条はクッと口角を上げた。
    「さてと、もう一気に片付けちゃおうか。この際領域を展開しよう。実力の差は歴然としてるしね」
    (マジかよ。コイツ、本気でイカれてんじゃねぇの?)
    領域展開なんてされたら即、此方の負け確定だろう。この殺気からして本気でやりそうだと思い悟は何とか五条を睨み上げたら五条は相変わらず不敵な笑みを浮かべたまま目隠しを外そうとしていた。
    どうやら両面宿儺の器である虎杖悠仁を殺そうとした事が五条の地雷らしい。未来の自分がそこまで大切に想う虎杖悠仁は一体何者だろうか。
    (そういや傑が虎杖悠仁は善人だとか言ってたな)
    例え善人だとしても悟は間違った事をしようとしていた訳ではない。それでも、最初から敵視せずにもう少し話してどんな人物か見極めてからの方が良かったのかもしれない。
    悟は恋愛とかは下らないと思うが、それでも未来の自分が両面宿儺の器相手に特別な感情を抱いているのだから余程、凄く善い人物なのだろう。
    (ンな事、後悔しても遅ぇな)
    せめて虎杖悠仁と伏黒恵が『先生』と言っていた時点で、その先生が誰か訊いておいた方が良かったのかもしれないが、まさか自分が未来で教師をしているなんて一ミリも思わなかった。
    本当はこの状態からも反撃したいが、例え反撃したってどうせ効かないのは解っているし無駄だと思っていたら五条は等々、目隠しをずらし指を立て人差し指と中指を交差させた。
    「領域展開…」
    (クッソ!コイツ、マジだわ)
    そう思った瞬間、自分達の目の前に一人の人物が庇うように立った。
    「先生!駄目だ!!何しようとしてんだよ!?」
    その人物とは先程、確かに悟が殺そうとした両面宿儺の器である虎杖悠仁で悟は目を見開いた。
    (コイツ、俺等を庇うのか?馬鹿じゃねぇの?さっき俺に殺されそうになった癖に)
    先程、自分を殺そうとした男を庇うなんて正気の沙汰ではない。本当に馬鹿な奴だと思っていたら五条の殺気も一瞬で霧散し驚いたように目を見開いた。
    「………悠仁‥…」
    「もう決着付いたようなもんじゃん!そこまでする必要ねぇだろ!?しかも、この人、昔の先生と昔の先生の友達じゃねぇの!?今の先生が領域展開なんてしたらヤベェだろ!?しかも過去の自分達を殺して歴史が変わったらどうすんだよ!?」
    虎杖悠仁に叱責されて五条は漸く手を下ろし泣きそうに顔をくしゃりと歪めた。
    「ごめん、悠仁が殺されそうになった事で頭に血が昇って止められなかった……。僕、凄く勝手だよね…。僕だって七年前、悠仁を殺そうとしたのに…」
    「いや、それは俺が生きるの辛くなって先生に殺してくれって頼んだからじゃん。先生が本当は俺を殺したくないのは解ってたし別に俺はその事では怒ってねぇよ」
    「うん…、あの時、恵が悠仁を連れて逃げてくれた時、本当に良かったって思ったし少ししてから悠仁は生きようと決意してくれたんだって凄く嬉しかった。だからこそ悠仁を殺そうとした過去の僕達に凄く腹が立った。後、もう少しなのにって。でもホントにごめん。ちょっと冷静になれなかった。こんな事しても君が喜ぶ訳ないのに…」
    自分と同じ顔した大の大人が泣きそうな顔をしている事に悟はヒクリと顔を引き攣らせた時、虎杖が背伸びし五条の後頭部に手を回し抱き寄せていた。
    「ごめんな、五条先生。俺の所為で何時も先生に迷惑掛けて苦しめて…」
    「違う…。悠仁は何も悪くない。全部、僕の所為なんだよ…」
    五条は首を横に振り虎杖を抱き締め返すのを見た悟は兎に角、げんなりしていたら隣に居る傑から声が掛かった。
    「大丈夫かい?悟」
    「ああ、何かある意味気持ち悪ぃけどな」
    「何とか命拾いしたようだね」
    「そうだな。それより俺等、何見せられてんの?やっすい恋愛ドラマか何かか?」
    「バトルも入ってるよ。それに恋愛と言ってもBLだ。主演は君。最も未来の君だが」
    「止めろ。てか、俺、早く帰りてぇ」
    「同感だね。君が未来で恋愛出来ると知って感動はしているが、流石に人がイチャつくのは余り見たくない」
    「俺は未来の自分だからこそ見たくねぇよ」
    「しっかし20年経っても悟は顔が変わらないんだね。恐ろしいな。まぁ未来の君の方が凄く柔らかい表情をしているが」
    確かにそう思う。出す殺気は悟より強いのに普段は柔らかい表情というかヘラヘラしているような感じだ。
    それに本当に口調も穏やかだ。その割には言っている事は過激だった気がする。
    最も未来の自分が『僕』と言っているのは凄く気持ち悪いと思っていたら五条が悟と傑の前にしゃがみニコリと笑った。
    殺気は消しても目は笑っていない。その目だけでまだ怒りがあるのがヒシヒシと感じ取れる。
    「良かったねー。お前等、悠仁のお陰で命拾いしたんだから感謝しろよ?ホント、悠仁って優しいよねー?お前等もそう思うだろ?お前等はそんな悠仁を殺そうとしたんだよ?有り得ないよねー?そのまま地に頭付けて悠仁に土下座しなよ?」
    (コイツ、性格クソだろ!)
    悟自身も性格は悪い。周りにもよく言われているし自分でも理解している。
    しかし目の前の未来の自分である五条は例え口調が穏やかになろうと歳を食っている分か悟より更に輪をかけて性格が悪いと思った。
    巫山戯た口調で兎に角、悟達に罪悪感を感じさせようと態と虎杖のお陰で自分達が生かされているのだという事を強く強調するように言ってくる。
    そしてみっともなく動けない上に情けなくなっている悟達に『土下座しろ』と強要されるなんて色々な意味でプライドがズタズタだ。
    最も悟は素直に土下座する気なんて毛頭ないが傑は違うだろうと思っていたら傑は素直に地に頭を付けた。
    「本当にすまなかった。両面宿儺の器の青年が恐らく善人だろうと解っていたのにとんでもない事をしたと思っている。幾ら任務遂行の為とは言え罪悪感はあったんだ。すまない。もう殺そうとしたり傷付けたりしないと誓う。だから赦してくれないだろうか?」
    傑も性格は悪いと言われているが基本的には真面目で優しい人物だ。
    特に善人には優しい。本当に任務とは言え虎杖に手を下す事はしたくなかっただろう。
    だから傑は手を下したくないと言ったと思ったら五条は溜息を吐きチラリと虎杖を一瞥したら虎杖は傑に向き合った。
    恐らく五条は赦すかどうか虎杖が決めろという事で虎杖を一瞥したのだろうが虎杖は赦すだろうと確信したら虎杖は顔を左右に振った。
    「いや、いいって!仕方ねぇ事だし普通なら死刑だって俺も解ってるから!だから夏油さんも五条せん…、五条さんも悪くねぇよ!こっちこそごめんな!五条先生、普段はすげぇ優しいんだけど怒ると手に負えねーから。そんなけ生徒思いな優しい先生なんだよ!」
    「ちょっと悠仁?何で僕がした事、悠仁が謝ってんの?僕、悪い事した覚えないんだけど?悠仁を殺そうとしたんだから本当はコイツ等、死んで当然なんだよ?」
    「先生、ちょっと黙って。先生だってさっき自分がした事、俺に謝ったじゃん」
    「……スミマセン…」
    虎杖が悟の事を『五条先生』と言いそうになったところを『五条さん』と呼び直したが虎杖は悟よりも歳上だろうと思っていた。
    それより何だか未来の自分である五条が生徒に謝罪している姿が情けないと悟は思っていた。
    何故、五条は虎杖に対しこんなに甘いというか弱い感じなんだろうか。
    しかも虎杖を殺そうとした人物は全員死んで当然なんだと思いきっているのも可笑しい。何というか本当に虎杖以外はどうでもいいと思ってそうだ。
    簡単に言ってしまえば惚れた弱味というやつだろうかと思っていたら五条が再び殺気を出し悟の髪を掴み上げ悟を睨み付けた。
    「お前も悠仁に謝れよ。それとも殺されたい?」
    先程、虎杖に『黙って』と注意されたばかりなのに直ぐに悟に向かって殺気を出し髪を掴み睨み付けるのはどういう事だと思っていたら虎杖がハーッと呆れたような溜息を吐いた。
    「五条先生?」
    虎杖が本当に低く冷めた声で五条を呼んだら五条の殺気は一気に霧散し怯えたようにビクリと身体を跳ねさせ眉を下げ本当に情けない表情をし悟の髪を放し虎杖の方に恐る恐る顔を向けた。
    「…だって…」
    本当に情けない声色で五条がそう言ったら虎杖は冷めた視線を五条に向けた。
    「あのさ先生、そうやって脅すの止めなよ。それにそんな感じで謝られたって俺、嬉しくねぇし大体、この二人は俺に謝るような事は何一つしてねぇじゃん。先生がそうやって俺の為に怒ってくれるのは嬉しいけどそういうのは駄目だよ」
    この虎杖は本当にどれだけお人好しなのだろうかと思っていたら虎杖に窘められた五条が解り易くシュンと項垂れた。
    「ごめん」
    素直に虎杖に謝罪する五条に悟は顔を顰めオェッと嘔吐く真似をした。
    (何で未来の俺ってこんな情けねぇの?)
    情けなくて仕方ないと思ったが虎杖のお人好しさに罪悪感が湧き悟はやはり謝罪だけはするべきだろうと思った。
    普段なら自分は素直に謝罪する事はない。例え悟が間違っていたとしても自分の我を押し通し謝罪なんてしないが虎杖を信じるべきだと思ってしまった。
    「……悪かった…」
    少し頭を下げポツリと一言謝罪をしたら五条も傑も驚いたように目を見開いた。
    恐らく五条の方は過去の自分が幾ら周りに言われても自分だからこそ謝罪なんてしないと思っていたのに謝罪きた事に驚いたのだろう。
    傑の方も悟の性格を知っているからこそ何があっても謝罪しないと思っていたのだろう。
    そして虎杖の方も驚いたようにポカンという顔をしていたが直ぐに嬉しそうな笑みを浮かべた。
    「ありがとう」
    何故、礼を言うのだと突っ込みたかったが虎杖の笑顔を見たら、その笑顔がやたら眩しくて突っ込むのも馬鹿馬鹿しくなり悟は口を噤みフィッとそっぽを向いた。

    結局、悟と傑は五条と縛りを設けた。それは五条もまだやる事があるからと五条が全てが終わり再び虎杖達を迎えに来るまで、この未来の世界に居る間は虎杖悠仁と伏黒恵を護って欲しいという縛りだ。
    勿論、全てが終わった後は五条が責任持って呪物を見付け悟と傑を過去に帰すし少しぐらいは未来の世界も観光してもいいとの事であった。
    「さてと、縛りも設けたし僕はもう戻ろうかな?こいつ等も居るなら大丈夫だろうし」
    縛りを結んでから五条がそう言ったら虎杖は眉を下げ五条を見上げた。
    「五条先生」
    「ん?どうしたの?悠仁」
    優しい声色で五条が虎杖にそう訊いたら虎杖は先程、目隠しを付け直した五条の目隠しに手を伸ばし目隠しを下ろし悲痛な面持ちをした。
    「先生、疲れた顔してる。顔色が悪いよ。隈も出来てるし休んで行った方がいいよ」
    虎杖が言った言葉に悟はチラリと五条の顔を見たら同じ顔であるが、確かに少し顔色が悪く疲れた表情をしていると思っていた。
    但し言われなければ判らない感じだ。虎杖はこんな少しした変化でも判るのかと思っていたら五条は顔を破顔し嬉しそうに虎杖の頭を優しく撫でていた。
    「ホント、悠仁ってよく見てるよねー。でも大丈夫だよ。僕、最強だから」
    「最強なのは解ってるけど最強でも先生も人間なんだから疲れるでしょ?」
    「そんな事言ってくれるの悠仁だけだよ。ホント、悠仁優しいー。久しぶりに凄く癒されるー。でも僕もまだやる事あるからなー。悠仁達の時効が来たら早く迎えに来れるようにね」
    確かに悟にも最強故、そこまで心配してくれる人は居ない。傑には気付かれる時はあるが少し疲れてるぐらいでは気付かれない。
    それに見てても解るが五条は物凄く虎杖に心から気を許している。悟でさえも親友の傑にでさえ心底気を許せる事はないのに。
    しかもこうやって見ていたら五条は確かに教師に見えなくもない。生徒を護り優しく出来るのは教師らしいと思っていたら伏黒が五条と虎杖の元に近付いた。
    「五条先生、隠れ家で休んで行って下さい。どうせ次の隠れ家まで直ぐですし。それにアンタ、その疲れた状態で休まず戻ったら虎杖が余計に心配して気に病みますよ。虎杖に余計な心配させたくないでしょう?」
    伏黒が鋭い視線を五条に向けてそう言ったら五条は苦笑を漏らした。
    「確かにそうだね。悠仁は優しいから気にしちゃうよなー。じゃあ、ちょっと電話掛けてくるから待ってて。少しぐらいなら何とかしてくれるはずだから」
    そう言って五条は悠仁達から少し離れ携帯を取り出し電話していたみたいが何か、その携帯が悟が持っているガラケーとは違う携帯だと判った。
    (何だあれ、変わった携帯だな)
    そんな事を思い悟は何となく虎杖に視線を移したら虎杖は何だか嬉しそうで安心そうな笑みを浮かべ五条を見ていた。
    虎杖のその顔を見ていたら何となく五条と虎杖は両想いなのではないのかと思ったが、どうでもいいかと顔を背け溜息を吐いた。

    「お待たー!電話終わったよー」
    何だか明るい声で五条が誰かに電話し十分後ぐらいに戻ってき、そう言ったら虎杖にガバッと抱き着き虎杖も笑みを浮かべ五条の背中に手を回していた。
    「五条先生、どうなったん?」
    「んー、何か憂太にはどうせだから一ヶ月ぐらい休んで戻ってきて下さいとか言われちゃったよ」
    「マジ?」
    「でも流石にそこまでは休めないけどね。精々一週間ぐらいかな?」
    「そっかー」
    「ま、憂太や伊地知が誤魔化してくれるでしょ。ホントは早く戻って調べたい事もあったんだけど、それは冥さんに頼んだし。冥さんは金さえ払えば何でも調べてくれるからねー。アッハー」
    「ハハ、相変わらずだなー」
    (冥さんだと?)
    勿論、悟も『冥さん』こと『冥冥』の事は知っている。先輩に当たるし悟も何かある時は冥冥に金を払って色々と調べて貰っている。
    しかし20年後の未来でもそれは変わらない事に悟はヒクリと顔を引き攣らせたら傑が笑いながら悟の肩にポンッと手を置いた。
    「悟、どうやら君は20年後の未来でも冥さんに金を払って何かを調べて貰う事は変わりないようだな」
    「うるせー」

    そして結局、五人で隠れ家に向かっている時、五条は常に虎杖にくっついて歩き伏黒の方は五条に呆れた視線を向けながらも虎杖の隣を歩いていた。
    その後ろを悟と傑で歩き悟は改めて未来の自分の変わりようが気持ち悪く辟易しベッと舌を出し顔を顰めたが傑は可笑しそうに笑っていたが
    隠れ家は本当に近くて徒歩数十分ぐらいで到着した。その隠れ家はやたら立派な一軒家だった。
    何となく、その隠れ家が悟の趣味に似ているような家であったが悟はどうでもいいかと思い五条と虎杖と伏黒の後ろに続き隠れ家に入った。
    隠れ家に入った後、五条が家に結界を張っていた為、五条の結界からそんな簡単に他者に見付かりはしないだろう。
    そして、やたら広いリビングに入った後、虎杖が伏黒と五条の方を見ていた。
    「な、伏黒、此処の風呂って何処?五条先生も疲れてるだろうし風呂の用意しようかな?て思ってさ」
    「玄関とは反対側に出て一番端にあるドアだ」
    「マジ?じゃあ、ちょっと風呂の支度してくんね!五条先生も待っててな!」
    「そこまで気遣わなくてもいいんだけどなー。悠仁も疲れてるだろうしね。でも待ってるよ」
    そして虎杖がリビングから出て行った後、五条が目隠しを乱雑に外しカーペットの上にドカッと座り、その隣に伏黒が座った為、悟も傑も取り敢えず座る事にした。
    改めて悟は未来の自分である五条の顔を見て20年経過しても全く顔が老けていない事に僅かに気持ち悪いと思っていたら傑が五条の顔を見て苦笑を浮かべた。
    「悟は20年経っても全く顔が変わらないんだね。雰囲気は凄く変わってるのに」
    傑が五条にズバリと言ったら五条がニコリと笑みを浮かべた。
    「でっしょー?20年経っても僕、すっごいイケメンでしょ?」
    「ああ、それを自分で言う辺り紛うなき悟だ。今、改めて確信したよ」
    「そこで確信するのかよ?僕、どんな風に思われてるの?」
    「おい、傑、お前、俺をどんな風に見てんだ?」
    傑が言った事が気に入らなく悟は眉を顰め訝し気に訊いたら傑が苦笑を深めフフッと笑った。
    「いや、悟はナルシストだからね」
    「あ?」
    ナルシスト呼ばわりされ悟は傑を睨み付け軽く舌打ちした。
    「本当の事言って何が悪ぃんだよ?」
    「本当の事言って何が悪いの?」
    同時に五条が同じ事を言った為、悟はチッと舌打ちしたら傑が喉奥でクツクツと笑った。
    「口調は違っても言う事が同じなのはやっぱり同一人物なんだなって判るよ。根本的なとこは変わってなさそうだ」
    傑がそう言ったら五条はフッと笑い頬杖を付いた。
    「ま、人間、そんな簡単には変わらないさ。でも、やっぱり変わったとこはあるかもね」
    やけに落ち着いた声色で五条がそう言った為、大人になったら落ち着くものなのかと思ったら五条は浅い溜息を吐いた。
    「ねぇ、恵」
    次は真面目な表情で五条が伏黒に声を掛けたら伏黒は僅かに眉を寄せ五条に視線を向けた。
    「何ですか?」
    「悠仁って相変わらずだね。相当参ってるはずなのに自分より人の心配ばかりしてさ。実は悠仁ってかなり精神的に参ってるんじゃない?恵は何か訊いてる?」
    五条がそう言った為、確かに虎杖を殺そうとした時に虎杖は自分は殺してもいいから伏黒だけは見逃してくれと言った事を思い出した。
    あれは自己犠牲と言うのだろう。生憎と悟は自己犠牲は余り好きではない。どちらかと言えば嫌悪感を覚える。
    確かに言葉で表したら立派だ。それでも悟はそういう奴等は自分を良く見て欲しくてやっているだけの偽善者と思ってしまう。
    虎杖のあの言葉も最初は自分を良く見られたいだけの発言だと思ったが未来の自分である五条が虎杖を特別に想っている上に今だって心配しているみたいであるし違うのだろうと思っていたら伏黒が五条を睨み付けるように見ていた。
    「アイツは、虎杖は俺には何も言いませんよ。何かあったら言えと言ってもアイツは大丈夫だと答えるだけです。ですが、アイツは殆ど五条先生の事ばかりです」
    伏黒がそう言ったら五条は不思議そうな顔で首を傾げ伏黒の方を見ていた。
    「僕の事ばかり?悠仁が?」
    「そうですよ。アイツは八割か九割は五条先生の話ばかりです。一言か二言目には必ずアンタの名前を出す。五条先生は大丈夫かとか五条先生は無理してないかとか、そんな事ばかりです」
    そこまで虎杖は五条の事ばかり考えているのかと思っていたら五条はフッと顔を緩めた。
    「いやー、悠仁ってそんなに僕の事ばかり考えてくれてるんだー?すっごく嬉しいなー。これって実は僕と悠仁って両想い?キャー!どうしようー!プロポーズの言葉、何がいいかな?」
    僅かに顔を赤らめながらテンション高めに五条がそう言った為、悟はオェッと嘔吐くふりをした。
    (何だ?コイツ、キッショ!これが未来の俺かよ?ねぇわ)
    言葉に出さないだけ凄いだろうと思いふと隣を見たら傑が身体を震わせ笑いを必死に堪えているのが解り凄く殴りたくなったが我慢したら伏黒が先程より鋭い眼光で五条を睨み上げていた。
    「巫山戯ないで下さい!!」
    「巫山戯てるつもりないんだけどなー。恵もそんな苛々してたら身体に悪いよ?」
    「アンタの所為でしょうが!!」
    (あ、すっげぇ気持ち解るわ)
    伏黒が五条に対して怒りを露にして怒鳴る気持ちが共感出来て仕方なかった。
    こんな煽り方されたら怒るのも無理ない。しかも五条は伏黒に『苛々してたら身体に悪い』と言っているが悟自身、自分が物凄く短気だと理解している為、五条がそれを言うのかと突っ込みたくて仕方ないと思っていたら五条はふと真顔になった。
    「ま、真面目な話、悠仁が僕の話ばかりしていると言っても悠仁も僕に自分から悩みを話す事なんてないよ。僕が無理矢理訊き出す感じかな?まぁ恵は優しいから一度、悠仁に大丈夫って言わたら直ぐに諦めて引き下がってるんでしょ?何時でも何かあったら言えよみたいな事言ってさ。根掘り葉掘り訊いて悠仁がそれを思い出して、また辛くなったらどうしようとか考えてるんでしょ?恵は何時も悠仁の気持ち最優先だし生真面目だからねー」
    この短い時間で解ったが五条は子供みたいに軽いノリをしている事が多いが、こんな風にがらりと大人の雰囲気を突然出す時があると思っていた。
    因みに五条がこの大人の雰囲気を出している時は伏黒も戸惑うのかグッと口を噤むみたいだ。
    しかもこの五条は言葉は馬鹿にしているように感じるかもしれないが決して馬鹿にしている訳ではなく何か大事な事を言いたいのだろう。
    「何を言いたいんですか?虎杖の気持ちを無視しろって言いたいんですか?」
    それも伏黒も解っているからこそこんな風に訊くのだろうと思っていたら五条は首を左右に振った。
    「違うよ。恵のそれは結局は悠仁の為にならないんだよ。悠仁が大丈夫って言った時に引き下がったら結局、悠仁は最後まで何も言わなくて一人で抱え込むんだ。一人で抱え込むと絶対に何時か潰れる。悠仁みたいなタイプは様子が可笑しいと思ったら無理矢理にでも訊き出して吐き出させなきゃいけない。そうじゃないと幾ら強い悠仁でも何時か絶対に心が病んでしまう。だから僕は悠仁の様子が可笑しいと解ったら悠仁が大丈夫だと言っても無理矢理訊き出して吐き出させるようにしてるんだよ。それだけでも大分違うからね」
    未来の自分である五条がそう言った為、悟は未来の自分はこんな教師みたいな言葉を言えるのかと驚き目を見開いていたら傑が悟に小声で耳打ちしてきた。
    「驚いた。未来の君は意外とちゃんと教師をしているじゃないか。正直、悟が教師なんて不安要素しかなかったんだが」
    「ああ、俺も同じ事思ったわ。ホントにあれ俺かよ?」
    「君には間違いないが君も大人になったらやはり少し変わるもんなんだな。親友の中身が成長した姿を見れるのは嬉しいものだ」
    「お前は俺の母親かよ?」
    「冗談よしてくれ。君みたいな息子なんて要らないよ。親友という事実からも目を背けたいぐらいなのに」
    「あ?傑、お前、喧嘩売ってんのか?買うぞ。表出ろ」
    「悟、寂しんぼうか?そこまで君に構ってられないから表出ると言うなら一人で出て行ってくれないか?」
    「はぁ?寂しんぼうは傑の方だろ?お前、そんなに殴られてぇならやってやるよ!」
    その瞬間、視線が感じた上に呆れた深い溜息が聞こえ悟と傑は恐る恐ると視線を感じたところに顔を向けたら五条が呆れたような目をしており、その後、五条はニッコリと笑みを浮かべた。
    但し目は笑っていない。米神に青筋を浮かべているのが解り悟と傑はヒヤリと冷や汗を流した。
    「ねぇー、君達ー、喧嘩すんなら外出てってくれないかな?邪魔。まぁ20年前の僕達だからガキだし喧嘩するのは勝手だけど僕達を巻き込まないでね?」
    穏やかな口調であるが物凄い圧がかかった低い声で五条にそう言われ、その威圧感に圧倒され悟も傑もガクリと肩を竦めた。
    「「……はい…」」
    まさか未来の自分に注意されるとはと悟は複雑な気分になっていたら傑も悟と同じ気持ちらしく苦笑を浮かべていた。
    「まさか未来の君に注意されるとは思わなかったな。凄い複雑な気分だ」
    「俺もだわ」
    しかし喧嘩に注意するとは本当に未来の自分は教師なんだと感心してしまう。
    最も喧嘩を止める訳ではなく喧嘩するのは勝手だけど外でやれ、巻き込むなと言うのは、ある意味自分らしいとも思っていた時、リビングのドアが開く音が聞こえドアの方に視線を移すと虎杖が戻ってきていた。
    バチッと虎杖と目が合ったが悟は仮にも自分は先程、虎杖を殺そうとした身である為、何となく罪悪感を感じ少し視線を逸らし再び虎杖の方を見たら虎杖は五条と伏黒に笑みを浮かべていた。
    「五条先生、今風呂のスイッチ入れたから沸いたら五条先生、先入る?疲れてるっしょ?それか他に早く入りたい人が居れば…。俺は最後でいいし」
    虎杖が五条にそう声を掛けたら五条は優しい笑みを浮かべた。
    「ありがとう、悠仁。お風呂入る順番は後で決めようか?」
    「そうだね。てか、先生、目隠し外したんだ?」
    「うん。あれ?もしかして見分け付かなかった?」
    「ん?何が?」
    虎杖が首を傾げたら五条が悟と自分、交互に指を差した。
    「ほら、アイツと僕。顔同じでしょ?」
    五条がそう言ったら虎杖は「ああ」と合点がいったように軽く頷いた後、顔を左右に振った。
    「いや、普通に直ぐに見分け付くけど?そもそも普段、五条先生が掛けてるサングラスとは違うし、それ以前に浮かべる表情が全く違うし。顔はホントに怖ぇぐらいに変わってねぇけどな。先生って高専時代から顔変わんねぇとか凄ぇよな。何で老けねぇの?先生、昔から年齢の割には若いとは思ってたけどさ」
    苦笑を浮かべながら虎杖がそう言ったら五条は満面の笑みを浮かべた。
    「でっしょー?僕、全く老けなくてイケメンでしょー?」
    「うん、それ自分で言って許されるのって五条先生ぐらいだよな。ホント、先生、イケメンだもんな」
    「うん、それに僕ってただでさえ悠仁より13も歳上だからさ悠仁の為にも若く保ちたいしね」
    「んー?どういう事?」
    「伝わらないかー。相変わらず悠仁って鈍いよね。そういうとこもいいけど」
    「五条先生、偶に訳解らん事言うよね」
    (訳解んねぇのはオメェだよ!鈍過ぎんだろ!)
    本当に理解出来ないが未来の自分である五条は解り易く虎杖にアプローチをしているというのに虎杖はアプローチだと解っていないみたいだ。
    見る限り虎杖以外は全員、五条が虎杖にアプローチしていると解っているというのに虎杖だけは気付かない。
    そういえば先程、悟が虎杖を処刑しようとした時も伏黒が五条の気持ちを虎杖に言った事で悟や傑は五条の虎杖への好意は判っていたが虎杖は五条の好意を信じられずに居るみたいだ。
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    まー。

    MAIKING御影コーポレーション発明の機械で過去に来た凪潔と玲王。
    凪→潔(最初は無自覚の片想い)
    凪(←)潔(ほぼ最後まで自覚なし)
    そして巻き込まれるのは御曹司。

    過去の凪と玲王が登場しますが矢印は凪潔のみ!
    最初は潔視点で途中から過去の玲王視点。

    未完です。
    誤字脱字とかは気にしないで下さい。
    スペースや改行がちゃんと出来ていなく少し読みにくいかもしれません。
    青い監獄の初日から気になっていた理由(仮) 此処は何処だろうと潔はグルリと辺りを見渡した後、目の前の学校の名前を見た。
    「白宝高校って確か凪と玲王の…。此処に来ちまったのか…」
    正直、約一年前の世界と言ってもどの場所に来るかは予想付かなかった。
    否、玲王からの説明の途中なのに潔がはしゃぎ碌に説明も訊かずに過去に来てしまったのが原因だろう。
    御影コーポレーションは面白い機械を作っていた。それは過去に行ける機械であった。
    しかし実際は精神というか一番近い感じだと幽体が過去に行く感じなのかもしれない。
    それでも過去の人物はきちんと未来の人物を見れるし会話も出来るが触れる事は不可能であった。
    そして実験としてちゃんと幽体が過去に行けるかを試すという事で潔はハイテンションで立候補し碌に説明も訊かずに操作をし『じゃあ、行って来まーす!』と言った。
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