どうしても母ちゃんに認められたかった。
友達との関係を絶たれようが、マフィティフ以外のポケモンを育てさせてもらえなかろうが、沸騰したばかりのお湯を背中に流してもらおうが、首に手を添えられてそのまま……。
でも、母ちゃんに認めてもらうことに比べたら、そんなことは全部全部どうでもいい。
「どうでもいいわけがないでしょ」
焼け爛れた痕がある背中。
その他にもいくつかの赤黒い傷たち。
首に至っては青紫色の手形がくっきりと浮かんでいて、彼にはそれを隠す気もないらしい。
「あのね、ペパー」
本当にどうでもよくて、母ちゃんが毎日毎日、オレの研究を手伝ってくれてるだからな!それも付きっきりで。オレなんかがやるよりも母ちゃんがやった方が良さそうだけれど、それでもオレを頼りにしてくれている事が嬉しくてたまらないんだ。
嬉しすぎて、涙がずっと止まらない。
痕があることは分かるけれど、それは全部母ちゃんがオレの為に付けたものだから、何でそんなに悲しそうな顔をしているのかがさっぱりだ。
「ね、ペパー」
最近やたらと研究室にくる精神科医?という職業のハルトは、やたらとオレに話を聞いて欲しいみたいだ。
なんだよ?言ってみろよ。
「その首の痕。誰かにつけられたとはとても見えないよ。親指だけそんなにくっきり、残るのかな」
「身体の傷も左半身ばっかりについてる。もし他人に傷つけられたとしたらこんなに偏らないんじゃないかな」
その言葉1つ1つに、オレの心臓が握りしめられているような気がした。
何が。何がいいたい。
どうせ同情だろ、と思っていたのに。全く違う方向からの柔らかい綿で、締められる。
「ペパー」
いつの間にか首を掴んでいた手をやんわりと解かれる。痛いね、痛かったねと、我慢が出来なくなったハルトの大きな瞳は、ボロボロと涙を流していた。
「もうオーリム…お母さんは亡くなっているよ」
ごめんね。もっと早く来ればよかったね。と繰り返して、オレの背中を摩るハルトの暖かさが気持ち悪かった。
だから全部、どうでもよかったのに。