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    肴飯のポイ箱

    @sakana2015414

    pkmnでkbdnとか、kbnとdndがわちゃわちゃしてるような話を書いてます。時々ホラーなものをあげるのでそこだけ注意です。

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    肴飯のポイ箱

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    ワンドロ
    お題「初めて」
    ⏳1h +30
    変わりすぎて一歩がすくんでしまっていた1人を無自覚に一歩どころが100歩踏み出させる1人とベストタイミングで突き飛ばすもう1人の話。
    ※is over後

    #キバダン
    #kbdn
    #ワンドロ

    覚えてないなら今にして それは、酒の席での他愛無い、ちょっとした好奇心だった。
    「ダンデのファーストキスっていつだったの?」
     事の始まりは薄暗がりなパブの片隅で、テーブルの少し冷めたチップスを指で弄びながらキバナが尋ねたこの質問から始まった。キバナは、10年以上転がし続けたダンデへの恋心を一体何処へ落ち着けようかとずっと悩んでいた。
     チャンピオンがあの子に変わってから、リーグに関わる人間の多くは環境がガラリと変わった。それこそキバナに至ってはジムの修繕手続きやら、新しい体制でのジムチャレンジに向けたあれこれやらと、何かと忙しく。   
     そんな中で、久しぶりにリーグ会議で一緒の帰りになって、ダンデから明日はオフだとも聞いてしまえば、折角だから帰りに軽く一杯引っ掛けようなんて言葉が出てくるのも自然な事だった。あわよくばちょっと酔った姿のダンデが見てみたい。そんなちょっと下心を持ちつつ誘ってみたら思ったよりも嬉しそうに乗ってくれて。正面で向かい合って話す事ができて浮かれていた事もある。そこからのちょっとした好奇心と、少しの足踏み。様々な事が一気に変わってしまったこの一年で、キバナは一歩踏み出す事に少しだけ臆病風に吹かれていたと言ってもいい。
     そんな気持ちからまろび出たのが、冒頭の質問である。少しだけ、ダンデの恋愛観を聞く事ができれば上々。なんてくらいの気持ちだった。
    「…キミ、覚えてないのか」
     しかしキバナの予想に反して、ダンデはちょっと驚いたような、少し寂しそうな顔をしてそう返事をしてきた。その、少し責めるような目線と口調にキバナは何故だかドキリとして固まる。
    「…えっ?」
     ダンデから見つめられ続け、全く心当たりの無いキバナは一気に酔いが醒めて彼を見つめ返す。暫くそんな睨めっこ状態が続いていたが、やがてダンデは諦めたように溜息を吐き、グラスに残っていたエールを一気に飲み干した。トンっとグラスをテーブルに置き、ペロリと唇に残ったアルコールを少し行儀悪く舌で舐め取るダンデの少し艶のある仕草にこれまたドキリとして、キバナは自分の頭をフル回転させて記憶を浚っていくが全く心当たりが無い。
     結局その日、ダンデは何もキバナに対して答えはくれなかった。というかキバナが怖くて聞けなかった、というのが正しい。そしてあのパブでの一件から、ダンデとの関係がとてもギクシャクし始めた。忙しい中でも今まではビデオ通話やメッセージでのやり取りは頻繁にやっていたのに、電話をかけても繋がらず、メッセージを送っても既読すらつかない。あの飲み会から1ヶ月程経った今も、既読の付かないメッセージ画面を見つめながら頭を抱えてキバナはダンデの言葉の意味を考える。どこで?誰と?オレさまと?いや、ない!!それは無い!!…無い…筈だよな?酒で失敗した事は結構あったが、その時にダンデが居合わせた事は無かった。じゃあ、いつ?オレさまが知ってる奴?誰それ今すぐ捻り潰しそう。
     自分が臆病風に吹かれていたなんてことは全力で棚に上げてそんな思考をぐるぐると繰り返す。

     もうなりふり構ってなんていられなかった。


     電子機器の操作音に少し古臭い紙の香り。そしてチャカチャカと爪の音をたてながら歩き回るワンパチの足音が響く研究所内に、伸び切ったパーカーと擦り切れたデニム姿の男が1人、温情で淹れてもらった紅茶をちびりと飲みながら項垂れていた。植物へ陽光が当たりやすいようにガラス張りとなっている部分から、植物だけで無く研究所内にも燦々と温かな光が降り注いでいたが、男のいるテーブル周りだけどんよりと濁った空気が漂っていた。
    「ソニア、どうしよう…」
    「ダンデくん、またその話?」
    「…他に話す人がいないぜ」
    「ダンデ君、キスなんかポケモン以外とした事ないじゃん」
    「…そうだぜ」
    「なんでそんな変な答え返しちゃったのかねぇ…」
    「……キバナがな…オレのファーストキスについて、なんだか嬉しそうな顔で聞いてきたのがちょっとショックで。つい、出来心だったんだ」
    「あー…そういうのって聞き方によっては『貴方にそういう興味は無いですよ』って言ってるようなものだもんね。そりゃあ片思い中のダンデ君にとってはショックだよねぇ」
     ソニアの言葉が図星だったようで、ダンデは飲み途中のカップを横にずらして机の天板へと突っ伏した。
    「オレばっかりいつもキバナの言動に一喜一憂してるのも不平等だなって思って…ちょっとした仕返しのつもりだったんだ…そしたら…」
    「何だか気不味くなっちゃって、前みたいに普通にやり取りできなくなっちゃったの?」
    「……うん」
     もう取り繕う余裕も無いようで、しおしおと萎びていき机にへばりつく。
    「うーん…まあ、これ以上グダグダしてるダンデ君見るのも面白く無いしね…これくらいで大丈夫かな?オッケー?……じゃあ後はよろしくねキバナさん!」
     大声でそんな爆弾を落としてから、幼馴染はバタバタと研究所の2階へとワンパチを伴って走り去って行った。ダンデにとって今一番聞きたく無い三文字が突然聞こえてきて、ダンデは一瞬で萎びていた体に力を入れようとする。が、それは叶わなかった。勢い良く引こうとした椅子が何かにぶつかって動かない。そして何よりも机に伏していた顔の横に、ダンデの顔よりも大きな掌が勢い良くドンっと置かれ、大きな影がダンデの背後から覆い被さってきたからだ。ふわりと砂と、この手の持ち主が好んで使っているシダーウッドの香りが、影が覆い被さった時の風圧で、中途半端に上半身を浮かせたダンデの前髪をフワリと揺らしていく。
    「なあ」
     低い声が、耳の横で聞こえる。耳をくすぐる吐息にぞわりと背筋が震えて、ダンデはそろりともう一度机の上に伏せる。正直、今この状態で顔を上げる勇気はなかった。
    「嘘だったの?」
    「…嘘…じゃなくて。えっと…その。そういうのは覚えて、無くてだな」
     覚えてないどころが今までしたことなんてない。そう言いたかったのに、背中からの圧に負けてそんな言葉が口から滑り出る。悪手だとは思うのだが、どうにかここを切り抜けなければという考えが頭の中を駆け巡る。
    「ふーん」
     ダンデの返答を聞いて相変わらず心情が読み取れないような低い声が聞こえてきた後、パッと背中からの圧とダンデを覆っていた影が消えた。顔の両側にあった掌も消え、痛い程の静寂が訪れる。暴れ回っているような音を立てている自分の心音が外に響いているのでは無いかと思うほどの静寂に、少しずつ心音が元のリズムを取り戻して行く。
    「…キバナ?」
     伏したままそろりと尋ねてみるが返事は無かった。もう一度同じように名前を呼ぶが、やはり何も返ってはこず。
    「キバナ?」
     段々と何のリアクションが無いことに不安になり、背後にいるであろうキバナの方へと上半身を起こして捻ろうとする。そうしたはずだったのに、気付けば砂とシダーウッドの香りを纏った指先に顎を掴まれて、瞬き2つしている間にはもう、目の前に湖面のような青色が自分の瞳の色と混ざってゆらゆらと輝いていた。
     想像よりも、柔らかい。
     そんなことを考えているうちに湖面は離れて人の形をとる。
    「覚えてないなら、これを初めてにしてよ」
     自分の顔は、耳はどうなっているだろう。熱くて熱くて堪らない。それは目の前の男も同じだろうか。同じ熱を持った意味だと確信させて欲しい。
     ダンデは少しだけ震える指先で男の頬に触れる。そして触れた後、もう一度湖面に自分の瞳の色を、月のように浮かべてみたいと思って顔を寄せたのだった。
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    😍😍😍💘💖💖🙏💖
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    肴飯のポイ箱

    DONEREVELЯY2411「COUNT DOWN vol.2」の書き手クイズ企画に提出した作品となります。
    お題「催眠 付き合ってないキダ」
    開催中はドキドキとしながら過ごしておりました!すごく楽しい企画でした☺️✨ありがとうございました!
    夜空、星二つ ガラルにしては気持ちの良い、からりとした青空が朝から広がっている日だった。ブラックナイトに関する諸問題で暫く奔走を余儀なくされていたキバナは、ようやく業務もひと段落し始めた。屋外での作業は晴れの少ないガラルでは何よりも優先したい事柄だ。そんなこともあって、キバナは温かな陽気の中、ナックルジムの中庭で膝と頬を土で汚しながらせっせと植物の剪定に明け暮れていた。元が城ということもあり、一般の人々が立ち入らない場所には未だに当時の面影を残す部分が多い場所だ。キバナが居る中庭もその一つで、ナックルのジムリーダーが代々手入れをしていくことがいつの頃から習わしとなっていると聞いていた。初めてその役割を聞いた時には正直乗り気では無かったキバナだったが、元々好奇心旺盛な方だと自覚していることもあって、やり始めてみればなんだかんだと楽しみを見つけ出し、気付けば少しずつこだわりも持つようにもなってきた。
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    肴飯のポイ箱

    DONE12月オンイベ展示作品その②(新しいお話)
    みんなが寝静まった夜。こっそりひっそり楽しく過ごす不思議な生き物のキバナとダンデのお話
    「🎄ホリデー編🌟」
    ※ポ世界のクリスマス概念が曖昧な為、あえてクリスマスから正月までをホリデーと設定してお話をかいています。細かく考えず緩くお楽しみください🌟👻👻🎄
    それは賑やかな すっかり夜の帳が下り、静まり返ったとある家のキッチン。小綺麗に整頓されたそんな場所を小さな林檎程の大きさの何かが二つ、白い布を頭から被ってチョロチョロと薄暗いキッチンの中を動き回っている。
    「キバナ、息が真っ白だ!寒いなぁ」
    「今日も月が大きいなぁ。でも、流石に今日はみんな寝てるだろ」
     月明かりに照らされたキッチンを、キバナと呼ばれた大きい方がそれよりも少し小さなダンデの手を引きながらずんずん進んでいく。
     少し前にお菓子を貰ったキッチンは、同じように整えられていた。水切り籠にはジュラルドンとリザードンが描かれたカップが逆さまになって雫を落としていた。今日は、それ以外にもカラフルなカップや皿がたくさん並んでおり、いつもは食器棚の一番上で偉そうにしている白地に金の模様が入った大きな皿も、ピカピカに洗われて月の光を反射している。
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    肴飯のポイ箱

    DONEオンイベ開催、アンド素敵企画ありがとうございます!
    この作品は、12.3歳ごろの2人がナックルシティの片隅にあるとある喫茶店を舞台にわちゃわちゃとしていくお話となっています。
    ※両片想いほのぼのです。
    ※ガラル市民がたっくさん出ます。
    ※視点がコロコロ変わるお話です。
    少しでも楽しんでいただければと思います☺️
    とあるナックルの片隅で◆ライラック色の髪をした少年の回想

    「あ、チャンピオンだ!」
    「チャンピオン!」
    「何かイベントでもあったっけ?」
     困った。
    俺は、大きな街の真ん中で冷や汗を掻きながら、どうしてこんなことになったのかをひたすらに考えていた。
     今日は午前中にシュートでのチャリティイベントに参加した。午後はスポンサーの会社が行うガーデンパーティへの参加が予定されていたが、そちらが主催者側の事情でのキャンセルとなったので、突発的に午後は丸々オフとなった。予定されていた休みより、こういうイレギュラーな休みって得な感じがして俺は好きだ。せっかくだから前々から欲しいと思っていた物を買おうと意気込み、勢いのままユニフォームで飛び出した。自分なりに人目が少ない道を探しながら、地図アプリと睨めっこ。しかし、俺の努力も虚しくうっかり路地から大きな通りへと出てしまった。途端に集まるキラキラとした眼差しの人、人、人。応援してくれる人達の期待の眼差しを裏切ることはできず、突発的に始まってしまったファンサービス。握手に写真、サイン。もみくちゃにこそされないけれど、このままだと行きたい場所に行けないまま休みが終わってしまう。顔には出せないが内心焦りつつも人混みは消えるどころが増えていく。どうしたものかと困っていると、人混みの奥から良く通る声が聞こえて来た。
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