調子のよいベッド 心音で身体が揺れる。
草を踏む音が煩い。
暗号機から手を離して両手を着く。
ぴぴ、がが、かんかんかん。
余韻が頭から離れない。
地面を蹴る音が近くなる。焦るような短いものとゆったりとした音の幅。心臓が跳ねていく。
暗号機から手を離して振り返る。飛び込んできた仲間を視界に認めてすぐ、立て掛けてあった板を倒した。
呻き声を上げる姿を目の前に据えて、口の端を無理矢理上げる。
「はは、いい気味」
そのたった一言で、狩人の視線を一身に浴びる。身体を翻し挑発して踊るように駆ける。後ろで板を踏み抜く苛立たしい音がする。何も変わらない、仕事の始まり。
「おつかれ!」
「トレイシー。ナイチェ」
「ナワーブのお陰だよ!いつもありがと」
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