まごころを贈る 冷たい風が肌を刺し、草花のやわらかな香りが薄まっていく中、ヘルマヌビスは静かに現世を満喫していた。かつての威厳ある雄々しい姿からかけ離れた外見となった彼は今、ぬいぐるみのような愛嬌ある見た目とサイズとなりセノの世話になっている。伝承の中の存在となった彼はセノのおかげで現代の知識を取り込んで、シティを中心にあちこちへと自由に足を運んでいた。それがセノの気質に影響を受けた結果なのか、あるいはヘルマヌビス本人の性格なのか、器であるセノもよく分かっていない。意思疎通は可能だが、神霊は自分自身について語るよりも、セノが何をして、何を食べて、どう感じながら一日を過ごしたのかを聞く方が好んでいるので彼自身を知る機会はさほど多くない。
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