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    いつか支部にアップしたい、セフレ勘違い話の冒頭です。

    ミス・アンダースタンド① 今日、流川と花道は数年ぶりにふたりきりで会った。流川の所属するチームのホームで花道のチームとの試合があり、試合終わりで花道が声を掛けたのだ。
     花道は、高校の頃から流川のことが好きだった。屋上での殴り合いからして出会いは最悪だったし、花道の想い人であった晴子が長く片想いしていた相手が流川なのだから花道にとっては相容れない、受け入れられない男だった。それは間違いない。
     でも、最初に流川のプレーを目にしてから、たぶん心も奪われていた。安西監督に「流川のプレーをよく見ろ」と言われてからは意識的に目で追うようになったし、そうしているうちにプレー以外でも流川を見るようになった。
     流川は、バスケをしていないときは見た目からは想像できないくらい抜けていて、ポンコツだった。課題は忘れるし、すぐに寝るし、いつも腹を空かせていた。見た目に反して生活力が高かった花道が世話を焼くようになるまでに時間はかからず、流川も花道に懐いてきて、2年も終わりになるころには常にふたり一緒にいるようになった。
     家に行き来するようになったのもその頃で、花道の一人暮らしのアパートで、花道の作った夕飯を食べ、隣り合って眠る。そうしているうちに花道は、流川の意外な人懐っこさに気が付いてかわいいと思うようになっていた。しかも、花道以外にはすり寄っていくようなことがなかったから、それにも優越感を感じるようになった。あれだけ女の人に告白されて引く手数多の流川が、自分にだけはくだけたような表情を見せたり(花道にしかわからない程度の些細な変化だが)、気が付くと息遣いがわかるほどの距離にぴったりと体を寄せられているのに、喜びを感じるようになっていた。
     流川のことが好きだ、と気が付いたのは流川がアメリカに行く少し前。言うか言わないか散々迷って、結局何も告げなかった。流川が困った顔をするのが、容易に想像できてしまったからだ。
     流川が花道に対して、普通の友だち以上のものを向けているのはわかっていたが、それが恋愛感情だとはどうしても思えなかった。捨て猫が運よく拾ってくれた飼い主に懐くような、そんな感覚だと思い込んでいた。

    ーーーーーーーー

     隣で涎を垂らしてすやすやと気持ちよさそうに眠る男は、昨日自分の中に入ってきた流川と同じ人物だろうか。それほどに緩み切った顔を見て、これを見られるのも自分だけだと思うと、口の端が持ち上がるのを止められない。
    「おい、起きろよ。朝だぞ」
    「んん…」
    「ったく、寝汚ねぇのは変わんねぇな」
     昨日、花道は、流川とセックスをした。酔った勢いを装ったが、花道の意識はしっかりしていたから、すべてを覚えている。昨日までの自分とはまるで違う人間になったかのように、幸福感に包まれていた。
     これからもこうやって隣で眠る権利をやっと得たのだ。流川の渡米でいったん切れてしまった関係がやっと始まった。セックスをするというのはすなわちオツキアイする、ということなのだと、花道は思っていた。
    「おい!今日練習あんだろ!」
     肩をゆすって起こしてやる。花道はまだ起き上がれそうになかった。
    「ん」
     長いまつ毛を揺らしてゆっくりと瞼を持ち上げた流川は、体を起こして周りを見回した。ここが、流川の家の近くにあるホテルであるということを、すぐには理解ができないようだった。眉間には皺が寄っていて、機嫌よくは見えない。
    「はよ…。体は?」
    「まぁ、平気。鍛えてるからな」
    「そうか」
     それだけ花道に言うと、ベッドの下に散らばった洋服を拾って身に着け始めた。花道はベッドの中からその様子を見ていた。
    「シャワーは?」
    「いや、いい」
     流川はそそくさとジーンズのチャックを締め、荷物を手に取る。
    「じゃ、また」
     背中越しに花道に声をかけると、パタンとドアを閉めて出て行ってしまった。花道はあまりの素っ気なさを疑問に思ったが、流川がピロートークみたいな甘い会話ができるとも思えないし、「また」と言ったということは次の機会もあるのだろう。
    (こんな感じなのか、あいつ)
     一瞬よぎった胸のざわつきは、無視することにした。それよりも、流川とひとつになれた喜びのほうが大きかった。
    (夢、じゃねぇよな)
     花道は見慣れぬ天井を見上げて、昨日の夜の出来事を反芻していた。
     どれくらいそうしていたのか。ブブッと携帯が鳴る。開いてみると、流川からのメールが入っていた。
    『次、いつ会える?』
     そっか。次の約束してもいいんだ。メールを何度も見返して、文面を噛み締める。
    『再来週の週末なら、練習休みだからこっち来れる』
    『じゃあ、オレの家で』
    『了解』
     すぐにそう送ると、家の住所が送られてきた。このホテルからすぐの場所で、帰りにチラッと見て帰ろうかとも思ったが、さすがにやりすぎかと思い直す。
    (浮かれてんな、オレ)
     いくら付き合うことになったとはいえ、急にベタベタしたら流川も嫌がるかもしれない。
    (気を引き締めねば!)
     密かに決意した花道は、気怠い体をなんとか起こして、帰り支度を始めた。

     それからふたりはたびたび会うようになった。場所は流川の家だったり花道の家だったり。2回目に会ったときは流川の家だったが、一度花道の家に招いてからは流川が花道の家を訪れることが多くなった。
     高校時代のように、花道が手料理を振る舞ってそれを一緒に食べ、他愛もない話をする。あの頃と変わったのは、必ずセックスするようになったこと。初めてのときはだいぶキツかった中も、回数を重ねるごとに柔らかくほぐれ、スムーズにできるようになっていた。
     流川との体の相性はよかった。他に経験がないから比べようもないが、とにかく気持ちがいい。流川のちんこが入ってくると、もうわけがわからなくなる。触れられるところがどこもかしこも性感帯になったようで、あっという間に高みに導かれてしまう。
     しかし、花道は恋人になった流川になかなか素直になれずにいた。だって恥ずかしすぎる。ずっと片想いしていた相手と何年も会わずにきて、急に大人の関係になってしまって。高校時代は誰よりもそばにいた自覚はあるが、それは恋人という関係ではなかったから。
     花道にできることはせいぜいうまい飯を作ってやることと、流川の寝顔を気づかれないように眺めていることくらい。悪態もつくし、気に入らないことは文句も言いたくなる。
    「食べたもんくらい片付けたらどうだ、この怠けギツネ!」
    「んなとこで寝んなら放り出すからな!」
    「さっさと起きろ!オレはオメーの母ちゃんじゃねぇぞ!」
     日本にいた頃、花道がひとりで暮らすアパートで交わしていたような会話。懐かしいなと思う反面、こんなことを言いたいわけじゃないのにともどかしくも思う。どうしても照れ隠しに口調が強くなってしまって、流川が帰ったあとにひとり反省したりもした。
     それに、流川の態度も変わらなかった。初めてセックスした日の朝、自分を振り返りもせずに出て行った後ろ姿を思い出す。流川は割り切った大人の関係が好きなのかもしれない。そう思って、花道は知らず知らず、自分の気持ちにブレーキをかけていた。
    (好きとか、言ったほうがいいよな)
     何度目かのセックスのあと、いつものように眠る流川を静かに眺めながら、気がついた。事故みたいにセックスしてしまったせいで、好きだと伝えたことがなかったかもしれない。でも体をつなげて、一番深いところまで許しているんだからきっと伝わっているはず。
    (好きだ、ルカワ)
     口には当分出せそうにないから、心の中で何度も唱えた。

     花道が流川と付き合いだして半年が経った頃。流川の家の近くで宮城と沢北と会うことになった。流川よりも少し早く渡米し、今は別のチームでプレーする宮城は今でもよき先輩で、ときどきこうして連れ出しては、話を聞いてくれたりアドバイスをしてくれたりしている。 
     花道がこちらに来てからはより心配性になって、世話が焼ける!と文句を言いながらも高校時代と変わらずに可愛がってくれていた。
     沢北は宮城と住んでいる場所が近いらしく、宮城が流川や花道と会うときにときどき付いてきてはちょっかいをかけてくる。新しい後輩ができたようだと、沢北なりにふたり気にかけているようだった。
    「おー!リョーちん、小坊主!久しぶりだな!」
    「花道ぃ!お前またデカくなった?」
    「ウエイト増やしてんだよ、今」
    「桜木、オレの名前を言ってみろよ!ってか何度目だよ、このやり取り!」
    「小坊主は小坊主でいいダロ」
     騒がしいやり取りを花道の後ろに隠れて無言で聞いていた流川に、宮城が声をかける。
    「流川も、久しぶり」
    「ッス」
     とりあえず、とそれぞれよく冷えた瓶ビールで乾杯する。食事をするというよりは酒を飲むのが目的のバーだから、テーブルにあるのはナッツくらい。流川はビールをチビチビと舐めるように飲んでいた。宮城と沢北は酒が強く、まるでジュースのようにビールを飲み干していく。花道は酒が入ると気が大きくなって、大きな口を開けてよく笑う。流川はそれを黙って見つめていた。
     2本目のビールを開けた花道がトイレに立ったとき、宮城が切り出した。
    「なんでお前ら一緒に来たの?」
    「それ、オレも気になってたんだけど!」
     沢北がわくわくした顔で身を乗り出してくる。
    「うちに泊まってたんで、あいつ」
    「へー」
     ふたりは顔を見合わせた。
    「やっとかよ、お前ら」
    「何がっすか?」
    「付き合ってんだろ?」
    「………いや、付き合ってはいねーっす」
    「は?」
     宮城と沢北は顔を見合わせた。だってお互いに好きだろ、こいつら。宮城は高校のときからふたりを見ていて、そう確信していた。このふたりはお互いしか受け入れない、他人には入り込めない何かがある。バスケをしているときもそうじゃないときも。強く惹かれあっていたはずだ。
    「付き合ってねぇの?」
    「ッスね」
    「泊まってたってのは、泊まってただけ?」
     沢北が聞くと、
    「いや、飯食ってセックスして…」
     宮城は後輩から予期せぬパワーワードが飛び出して、ビールをブーっと吹いた。リョータ汚ねぇ!と沢北がテーブルを拭いているが、まったく目に入らない。
    「付き合ってねえのに、ヤッてんの?」
    「まぁ、そうっすね」
    「ってことはなに、お前らって…」
    「セフレ?みたいな?」
     みたいなってなんだよ。宮城は天を仰いだ。これはおかしい。そんなわけない。だってお前ら、好きでもない奴とそんなことできるタマじゃねぇだろ。
    「なんでそんなことになってんの?」
    「なりゆきっすかね」
     顔を顰める宮城をよそに、沢北は面白いものを見つけた!とばかりに流川に突っ込む。
    「いつから?どっちから?」
    「半年くらい前に試合であって、そのあと。どっちからかは忘れたけど」
    「男ってめんどくさくないの?どんな感じ?」
     案外下世話な話が好きな沢北を制して、宮城は流川に向き合う。
    「流川はそれでいいのかよ?ちゃんと付き合いたいとかねぇの?」
     流川は少し目を泳がせた。酔っているのかもしれない。ビールは瓶の半分も減っていなかったが。
    「まぁ、今のままでいられれば」
     そう言って目を伏せる。綺麗なツラだな。宮城はグイッとビールを飲み干して思った。
     何かが間違っている。直感がそう告げていた。関係ないはずなのに、じわりと変な汗が出てくる。隣で沢北が男同士のセックスについて聞きたがっているが、流川はあまり話したがらず、そのうちに花道が戻ってきたので強引に話題を変えた。
     花道は、テーブルに戻ってから明らかに飲むペースが早くなって、店を出る頃には足元がおぼつかなくなっていた。今日は自宅に帰るつもりだったがそうもいかなくなり、夕方に出てきた流川の家に戻ることになった。
    「花道、流川、気を付けて帰れよ」
    「リョーちん!またのもーぜー!」
     通りに響き渡る声に、うるせーと流川がつっかかる。
    「んだとこのキツネ!オレは気分がいいんだよ!」
     ふらふらとよろけながら歩き出した後輩を見送って、宮城は深いため息をついた。
    「リョータ、あのふたりなんかおかしくない?なんで付き合ってねぇの?」
    「オレが聞きてぇわ。なんでだろうな」
    「流川、桜木のこと好きだろ?」
    「花道もな。ほんとに、なんでセフレなんかになってんだ」
    「どうすんの?キャプテン」
     うーん、と思考を巡らせたがすぐに答えなんか出てきやしない。高校時代から数えて数年。もだもだしっぱなしだったふたりがやっと動き出したと思ったらこれなのだから、宮城の手には負えないかもしれないなと思った。
    「様子見る。お前も余計なことすんなよ」
    「りょーかい!」
     沢北の能天気さが、今はありがたかった。
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    O4Otg

    PROGRESS支部にあげている『弟の幸せ』シリーズの、流川視点のお話の途中経過です。4ヶ月くらい放置しちゃってるので、一旦こちらにアップさせてください。いつか必ず、書き上げたいという強い意志だけはあります!これの花道視点のお話も書いてます。
    俺とお前の幸せオレの名前は流川楓。湘北高校元バスケ部。今はアメリカの大学に通って、プロデビューを目指している。
     これはオレと、桜木花道という、オレにとって唯一無二の男の話だ。

    -----------

     オレはもともと、桜木のことは嫌いじゃなかった、と思う。「と思う」としか言えないのは、「今思えば」という注釈がつくからだ。あの頃は、文句ばっかり言ってうるせーし、天才天才と素人のくせにうるせーし、なぜかオレに突っかかってきてうるせーし。とにかくうるせー奴だと思っていた。
     でも、オレに何度も勝負を挑んでくる奴は初めてで、それが新鮮だった。中学の頃はオレはキャプテンをやっていて、部員ともとくに問題なく接していたが、練習中はちょっと壁があったりした。一緒にコートの中にいるのに、遠巻きに見られているような、そんな感覚。桜木みたいに、あからさまに張り合ってきたり、倒してやると面と向かって言われたことはなかった。
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