恋の形見「先生の先生って、どんな人だったの……?」
水面に映る炎のゆらめきを見つめていた少女が、ふと顔を上げた。陽に灼けた健康な面差しが、父親によく似ている。
「……きみのお父さんは、何て」
「優しくて、強い人だったって」
「なら、きっとそうだったんだ」
「先生は、どう思うの?」
大きな栗色の目の真っ直ぐな眼差しを曖昧な微笑みで受け止めて、そうして、ナタは焚き木を拾い上げた。炎が勢いを増し、砂漠の乾いた風に攫われた火の粉がふわりと舞い上がる。
「……優しくて、強い人だったよ」
「みんな、それしか言うことないみたい」
不満げに唇を尖らせて、少女は空を仰いだ。豊穣期特有の澄んだ大気を通して、無数の宝石のような星々が瞬いている。
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