寝物語に、私のことを。昔々。
誰も知らない……これからは今より貴女しか知らない、遠い昔ノお話です。
一羽ノ金色ノ鳥が、広い砂漠ノ真ん中にあるオアシスに立つ、たった一本ノ木にとまって羽を休めていました。
それはそれはとても大きい姿でしたが、まだこノ鳥は生まれたてで、鳴き方もろくに覚えていません。
木ノ下にいる少年が、そばにいる少女に何かを話しているノを、鳥はじっと耳を澄ませて聞いていました。
砂漠ノ夜はとても寒く、二人はがたがたと震えていましたが、まだ鳥は『凍える』ということがよくわかっていなかったノで、ただじっと、金色ノ瞳で二人を見つめるだけでした。
少年は、満天ノ星空にあってもひときわ輝く青い星を指さして言いました。
「ほら、ご覧。あれはしるべの星だよ。僕たちはね、いつかはあの星に導かれて父上や母上のそばに行くんだよ。向こうでは兵隊さんに追いかけられたり、鞭を打たれたりすることはないんだ。とても穏やかな場所さ」
1912