D/Sユニバースおさなな番外編「でね、何を落ち込んでるかと思ったら初めてセーフワード言われたーって言われちゃって僕本当にびっくりして」
ぺちゃくちゃとよく回る舌だと正直うんざりする。なぜこの男と仮とはいえパートナーにならねばならないのか。
あみだくじに不正があったと考えるのが妥当ではないかと爆豪勝己は目の前でひたすら喋り続ける幼馴染を見つめて大きくため息を溢した。
「服従。黙れ」
「おすわり!」
「ッ!!」
「それでね、今までセーフワード言われた事がないって言うのにも素直に驚いちゃって、」
まるで息を吐くように告げられたセーフワードによって、勝己の体は地面に縫い付けられたように重くなる。
まるで犬の躾よろしく床に座る勝己を尻目に、出久はなおもペラペラとよく喋った。
一日三コマンド、とルール決めを主に勝己の方から提示し、出久も素直に承諾したものの、この男はあまりにも当然のように「気に入らなければ拒絶」をする。
Subからの拒絶はDomにとっては苦痛を伴うものだった。もちろん勝己も例外ではない。耐え難いほどではないが、蓄積されると体調にも不調を来す。それを知ってか知らずか、出久は涼しい顔をして従いたくない時は「おすわり」と告げた。
あまりセーフワードを簡単に使うなときちんと説明すれば、勝己を慕っている出久が聞かないはずはない。それでも勝己の元来のプライドとDomとしてのプライドがその事実を告げるのを躊躇っていた。緑谷出久という男のことだ。Domの体に不調を来すとなれば、どんなに気の乗らないコマンドでも今後は拒絶をしなくなるだろう事は十何年共にする勝己には容易に想像出来た。
「クソッタレが……唇縫い合わせんぞ……」
「かっちゃんちゃんと聞いてる?」
「あークソ。聞いてるわボケカス。服従。喋ってろ」
「なんか割と序盤でSubってどうやって褒めたら満足するんだ?とか聞かれちゃって、えー!って僕なんて答えてあげたら良いんだろうって心配してたのに、それがあっという間にキスしろ、だよ!?どんだけ手が速いんだと思って本当に驚いて」
コマンドに従うようにペラペラと喋り続ける出久の様子にため息を溢し、勝己はそのまま床にゴロリと寝転んだ。