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    山瀬屋

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    山瀬屋

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    トンチキな錦桐(未満?)、0の前くらい
    カラオケの扱いとか当時の音楽事情が余り分かってないですが、なんかリリースされた新曲:審判がおお…って刺さる桐20歳かわいいなって思ったというトンチキ妄想でした

    #腐

    金が無い。

    とりあえず家賃と光熱費を払うので精一杯。何でこんなに金が無えのか不思議だ、と桐生は思った。今月は取り立てやらカチコミやらもあったし、それなりに小遣いも貰ったはずなのに。暫し思考するが、答えは出なかった。そのうちに頭の中に見知った長髪が現れて苦言を呈し出す。

    『そりゃあ桐生、お前ェって奴ァ、あんまりにも金に頓着が無さすぎるんだよ。稼ぐのも、使うのも、もっと頭使ってやんなきゃ駄目だ。ちょっと立ち回りゃいくらだって稼げる時代だぜ。大体お前はよ、先月も俺がいくら飯食わせてやったと…、』

    くどくどと説教を垂れる脳内の赤ジャケットを振り払う。顔を合わせれば大抵しこたま言われるのだから、何も妄想でまで怒られることもないだろう。しかし確かに、(脳内)錦の言う通りだ。桐生は余り頭を使うことが好きでなく、集金のささやかな報酬や、暴力沙汰の後に貰う親父達からの小遣いで日々を賄っている。とはいえ取り立ての取り分なんてたかがしれているし、いくら極道と言ったってそう毎日荒事があるわけでもない。一方そんな収入ながら、桐生はさして金のやりくりに興味が無かった。最も特に欲しい物がある訳でもなく、高価なものに興味があるわけでもなく。ならば多少は手元に残りそうなものだが、と桐生は首を傾げる。実際、興味が無いというのが問題で、その頓着の無さから好き勝手使い、少ない持ち金がいつの間にか消えているというのが実情だった。兎に角思い付きで無駄な買い物が多いのだ。錦から度々指摘はされるものの、ついぞ直らない。そもそも兄弟から日頃甘やかされているこの男は、いざとなれば稼いでる錦に食わせてもらえばいいや、等と潜在的に至極甘いことを考えているのだった。

    だから、普段の桐生であれば、無ければ無いで、金のことで然程悩んだりなどしない。
    だが、今この瞬間においては別だった。

    「…クソ…、」

    その手に、レコードディスクが握られている。A面は、『JUDGEMENT -審判-』。
    桐生一馬、燻る堂島組若衆。ある日ラジオの有線で流れたその曲は、その燃える心に火を付けた。つまりは思いっきり刺さってしまったのであった。なんて良い曲なんだ!と。 
    いたく感銘を受けたジャッジメントカズ君はしかしお金が無く、取り急ぎラジオ局に電話や葉書でリクエストを出しては何とか凌いでいた。ものの、ヒットチャートの流行も移り変わる。段々審判が流れる頻度も減り、いい加減ラジオネームを複数考えるのもしんどくなってきた(なお、部屋には一度書いてやっぱり恥ずかしいからやめておこう、と捨て置かれた『錦LOVE』のラジオネームハガキが、投函されることもなく眠っている)。

    (いい加減ラジオだけでは限界だ…。審判を手元でいつでも聴きたい!あんなに今の俺の心に刺さる曲はない。まるで今この瞬間の、俺のためだけに作られたかのような名曲…!)

    そして衝動的に購入に至ったというわけである。
    桐生はレコードを出したり閉まったりしては眺めていた。
    当然音が鳴る訳はない。流石にそんなことは分かっている。桐生は恨めしげに紙ジャケットを見つめた。

    (むう、カセットテープにすりゃ良かったな…)

    そう、音質がいいだとか何とか、ショップ店員にうまく言われ思わずレコード版を買ってしまった桐生だったが、この家にはレコードの再生機が無いのだ。まさしくまた、散財をしたのである。
    カセットテープならいいのだ。手元にあるラジカセで聴ける。じゃあカセットテープを買ってくるか?だが音質が良いならば、是非このレコードで聴きたい。しかし、設備がない。

    「…」

    一応財布を開いてみるが、札が数枚入っているだけだ。蓄音機なんかとても買えそうにない。置いているどこか馴染みの店に持ち込めば流しては貰えるだろうが、今ドハマリしている桐生としては今すぐに、何度だって聴きたいのだ。自分の好きなときに。出来れば落ち着いて。ゆっくりと。誰の目も気にせずに。


    「…で、俺の所に来たってのか、兄弟」
    「ああ、錦。お前、レコードセット持ってただろ」
    「いや持ってるけどさ…、あっお前勝手に上がるなよ!」
    「邪魔するぞ」

    桐生は勝手知ったる顔で錦山の家に上がり込んだ。最も本気で嫌なら錦山も止めているので、いつもの応酬という所なのだが。

    「錦、これは本当に良い曲なんだ。まさに今の俺達にぴったりって感じだ。だからお前も聴け」
    「いや、一時期流行ってたから何となくは知ってるけどよ…、そんなに目をキラキラさせて言うほどかねえ」
    「お前もたくさん聴けばより良さが分かる。大丈夫だ、このディスク、ここに置いておくから」
    「は?お前なあ!自分家が狭ぇからって、俺の家に自分のモン置いていくな!」
    「?…でも俺の家にレコードがあっても聴けないんだが…」
    「そういう事じゃねえんだよ!」

    じと、とした視線を感じ、桐生ははっと気が付いたように一瞬目を丸くした。やっと分かってくれたのか、とため息をつく錦山に、桐生はにや、と笑った。

    「錦、心配するな。お前も好きな時に聴いていいから」
    「だから!ここは俺の家だし!それは俺のレコードセットだ!」

    錦山の叫びとほぼ同時に、審判のイントロがマンションの一室に響き渡る。この錦山が借りている部屋には、既に桐生の私物が置かれた一角がある。またその領域が広がると、錦山はため息をつくのであった。

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    Replies from the creator

    山瀬屋

    MAIKINGずっと考えている救いの書きかけ、錦桐なのかひまわり兄弟なのかなかなか自分にも分からないですが製造者は錦桐が好きな人なので滲んでいるかもです…
    正史の後に、救われてほしいという願いを込めているもの、あの錦の最期の表情をずっと考えてしまう
    無題轟音が、遠くで聞こえる。
    一体、何だ。
    ああ、それは、…水か?
    そうか、水が叩き付けられる激しい音がするのだ。


    ―覚醒。


    桐生が目を開くと、視線の先に大きな滝があった。
    苔生した堅牢な岩。流れる水は飛沫を上げて流れていく。どこから来て、どこへ行くのか。滝の向こうも、流れ落ちた川の先も、霧に巻かれているかのように白んで見えない。何とも不思議なものだ。桐生は横たわる身体を起こす。柔い草の感触。背の低いその碧達に混ざって、すうっと一本、伸びている緑。座り込んで視線だけ先を追うと、そのてっぺんに太陽のような大輪の花を一つ、戴いているのが見えた。花は桐生に背を向けて、つまりは滝の方を向いて咲いている。よく見知った向日葵は、この空間に異質だった。風も無いのにたなびく草の合間から、小さな花が咲いているのも見える。同じ花だ。淡い黄色や、水色のそれだって可憐で美しい。それなのにどうしても、その絢爛な橙に惹きつけられる。うねる草原に、何にもなびくことなく、一人そびえ立つその花に。
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    山瀬屋

    TRAINING錦桐。極で桐が謎スタミナン飲んで若返ってしまい錦と遭遇する?ご都合謎SS、尻切れトンボ。桐を囲う組長錦いいなっていうn番煎じ。若い桐と37錦だったらパワーバランス的にも錦の精神性安定しそうだなっておもったりする
    TOXIC「御託は良いからとっとと探せ!!」

    錦山は携帯電話越しの部下を怒鳴り付けた。その後も続く弁解を遮り、切電する。手元の端末を叩きつけたくなるのを、危うく堪えた。全くこれだけ手を尽くして探し出せないなんて大概どうかしている。桐生は間違いなく神室町近辺に潜伏しているはずなのだ。なのにどうして見つからない。クソ、どいつもこいつも、使えない奴ばかりだ。
    苛ついた気持ちを鎮めるべく、事務所を飛び出す。部下の静止は聞かなかったこととした。煙草に火を付け、紫煙を纏いながら、夜の街を彷徨う。一人で街を出歩くのは久しぶりだった。夜風が心地良いような気もする。だが頭の中は依然、沸騰しそうなほどに茹だっていた。

    足早に駆け抜ける歓楽街。雑踏と、ネオンの対比に暗む闇。そこに溶け込むような何の変哲もない路地。錦山が注意を向けたのは単なる偶然としか言えなかった。もしくは、何かの直感があったのか。ふと見つけた暗がりの奥に、あの見知ったグレースーツを捉える。背中を丸めて、どうやら逃げに逃げて走った後の一休みとでも言いたげだった。錦山はにやりと笑う。こんな偶然ってあるか。全く馬鹿げている。だが存外こんなものなのかもしれない。懐を弄ると、ずしりと重く、冷たい金属の感触が手に馴染む。足早に路地へと向かう。そしてそのままがら空きの背中に銃口を突きつけてやると、う、と小さく声を出した。
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    山瀬屋

    MOURNINGトンチキな錦桐(未満?)、0の前くらい
    カラオケの扱いとか当時の音楽事情が余り分かってないですが、なんかリリースされた新曲:審判がおお…って刺さる桐20歳かわいいなって思ったというトンチキ妄想でした
    金が無い。

    とりあえず家賃と光熱費を払うので精一杯。何でこんなに金が無えのか不思議だ、と桐生は思った。今月は取り立てやらカチコミやらもあったし、それなりに小遣いも貰ったはずなのに。暫し思考するが、答えは出なかった。そのうちに頭の中に見知った長髪が現れて苦言を呈し出す。

    『そりゃあ桐生、お前ェって奴ァ、あんまりにも金に頓着が無さすぎるんだよ。稼ぐのも、使うのも、もっと頭使ってやんなきゃ駄目だ。ちょっと立ち回りゃいくらだって稼げる時代だぜ。大体お前はよ、先月も俺がいくら飯食わせてやったと…、』

    くどくどと説教を垂れる脳内の赤ジャケットを振り払う。顔を合わせれば大抵しこたま言われるのだから、何も妄想でまで怒られることもないだろう。しかし確かに、(脳内)錦の言う通りだ。桐生は余り頭を使うことが好きでなく、集金のささやかな報酬や、暴力沙汰の後に貰う親父達からの小遣いで日々を賄っている。とはいえ取り立ての取り分なんてたかがしれているし、いくら極道と言ったってそう毎日荒事があるわけでもない。一方そんな収入ながら、桐生はさして金のやりくりに興味が無かった。最も特に欲しい物がある訳でもなく、高価なものに興味があるわけでもなく。ならば多少は手元に残りそうなものだが、と桐生は首を傾げる。実際、興味が無いというのが問題で、その頓着の無さから好き勝手使い、少ない持ち金がいつの間にか消えているというのが実情だった。兎に角思い付きで無駄な買い物が多いのだ。錦から度々指摘はされるものの、ついぞ直らない。そもそも兄弟から日頃甘やかされているこの男は、いざとなれば稼いでる錦に食わせてもらえばいいや、等と潜在的に至極甘いことを考えているのだった。
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