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    山瀬屋

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    山瀬屋

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    錦桐。極で桐が謎スタミナン飲んで若返ってしまい錦と遭遇する?ご都合謎SS、尻切れトンボ。桐を囲う組長錦いいなっていうn番煎じ。若い桐と37錦だったらパワーバランス的にも錦の精神性安定しそうだなっておもったりする

    #腐

    TOXIC「御託は良いからとっとと探せ!!」

    錦山は携帯電話越しの部下を怒鳴り付けた。その後も続く弁解を遮り、切電する。手元の端末を叩きつけたくなるのを、危うく堪えた。全くこれだけ手を尽くして探し出せないなんて大概どうかしている。桐生は間違いなく神室町近辺に潜伏しているはずなのだ。なのにどうして見つからない。クソ、どいつもこいつも、使えない奴ばかりだ。
    苛ついた気持ちを鎮めるべく、事務所を飛び出す。部下の静止は聞かなかったこととした。煙草に火を付け、紫煙を纏いながら、夜の街を彷徨う。一人で街を出歩くのは久しぶりだった。夜風が心地良いような気もする。だが頭の中は依然、沸騰しそうなほどに茹だっていた。

    足早に駆け抜ける歓楽街。雑踏と、ネオンの対比に暗む闇。そこに溶け込むような何の変哲もない路地。錦山が注意を向けたのは単なる偶然としか言えなかった。もしくは、何かの直感があったのか。ふと見つけた暗がりの奥に、あの見知ったグレースーツを捉える。背中を丸めて、どうやら逃げに逃げて走った後の一休みとでも言いたげだった。錦山はにやりと笑う。こんな偶然ってあるか。全く馬鹿げている。だが存外こんなものなのかもしれない。懐を弄ると、ずしりと重く、冷たい金属の感触が手に馴染む。足早に路地へと向かう。そしてそのままがら空きの背中に銃口を突きつけてやると、う、と小さく声を出した。

    「こんな接近されるまで気が付かねえなんて、らしくねえな」

    錦山の嘲笑に桐生が振り向く。その顔に、息を呑んだのは錦山の方だった。

    「ありえない、」

    少しダブついたスーツに、髭のない顔。皺一つないつるりとした顔は、精悍とはいえ酷く幼く見えた。錦山にとってはよく見知った顔だ。しかし最もそれは、20年以上前に、という但し書きがつくが。

    「おっさん、誰だ」

    呆気にとられた錦山に、少し上ずったような、たどたどしい口調で、年若い桐生によく似た男が言う。

    「…まさか、俺の顔を忘れたのか?」

    錦山は呟く。声も、見た目も、何もかもが昔の桐生そっくりだ。最も、そんなことは非現実的で有り得た話ではない。至極当然に分かっていながら、思わず漏れ出た言葉だった。しかしそれには、目の前の青年も少し困惑した表情を浮かべた。

    「すまねえが、おっさんの事は知らねえ。…親っさんの知り合いか?」
    「…、お前、いくつだ」
    「…?…、15、」

    まさか。そんなこと。ありえない

    「よく、分かんねえけど、気付いたらここにいたんだ。そんで、よく分かんねえけど、ヤクザに追っかけられて、やっと逃げてきて、」
    「…その手に持ってるの、何だ」
    「…え?ああ、なんだろうな、これ、俺にもよく分からない」

    男が握り締めている薬瓶を手に取る。スタミナンの文字が見えるが、錦山には見たこともない怪しいパッケージだった。蓋は無く、中身は空っぽだ。この男が飲んだのだろうか?本人にはさっぱり記憶がなさそうだが。

    …薬品で桐生本人が若返っている?しかし、そんな馬鹿な。

    と、胸の携帯のバイブレーションが鳴り、銃を片手に据えたまま、錦山は端末を操作する。部下から一件メールが来ていた。つい先程桐生の姿を発見したが、追跡したところ取り逃したとのことだった。遠目だったが、まるで呆けたように神室町のど真ん中を歩いていたと。

    本当にこいつは15歳に戻ってしまったのか。

    非科学的な話だ。しかし、目の前の男と、部下のメールと、そして自身の直感が、それを確信めいたものにしている。だがそうであるなら、肉体のみならず記憶も引きずられているらしい。目の前の俺を見て、本当に錦山だと分からないようなのだ。最も遥の事も、100億の事も、綺麗サッパリ忘れてしまっているなら、最早この男には何の価値もない。堂島の龍ならいざ知らず、15歳の桐生なんて今の俺なら簡単にのせるはずだ。赤子の手をひねるように容易い。錦山は笑う。その様子を見て、男は少し疑るような視線を向けた。

    「…おっさんも俺を追ってきたのか」

    桐生の声は一見落ち着いて聞こえたが、しかしどこか、か細く聞こえた。まだ15歳だ。いくら桐生と言えど、子供だ。恐ろしいのだろう。この俺が、桐生に怯えられる日が来るとはな。今までのこともあるし、少しいたぶってやってもいいが、と銃口を振り向いた腹にぐり、とめり込ませる。その身体が少し震えている。

    「…錦には手を出さないでくれ、」

    男の言葉に、錦山の手がピクリと止まった。

    「おっさん。おっさん達は、俺達が極道に入りてえとか言うから、ナメられたと思って来たんだろ。俺は親っさんみたいになりたかった。それは親っさんに止められてでも、俺が選んだことだ。だからあんたにどうこうされたって仕方がねえ。でも、錦には妹がいるし、俺が誘ったからついてきただけだ。あいつは何にも悪くない。俺が死んだら、きっと組入りだって考え直す。だからどうか、手を出さねえでやってほしい」

    若い桐生は、何か勘違いしているようだった。だがその言葉は、錦山には面白く響いた。

    「…錦山に手を出すな、だと?」

    頼む、と項垂れて返す桐生は、酷く好ましい。それはその従順さゆえか、自身を庇う言動ゆえか。無論殺してやってもいいのだが、少し低いその背、上から見下ろすその様のなんと痛快なこと。今の桐生は俺に縋るしか手が無いのだ。そう、この何も知らない青年を、生かすも殺すも、俺次第だ。そう考えると、何だかとても愉快だった。充足を感じる。殺してやってもいいのだ。殺してやってもいいのだが、ならば少し遊んでも構わないだろう、と、錦山は思った。

    「なら、俺の所に来い」

    目の前の男の言葉に桐生は怪訝そうな顔をした。

    「錦山に会わせてやる。だからついてこい。大体このままじゃ、俺でなくても誰かがお前を殺す」

    少しの間があって、桐生は頷いた。その様子に錦山は目を細める。馬鹿な子供を言いくるめるのは、とても容易い。もはや逃げることもないだろうと、錦山は銃をしまう。そして自分の停めている車の所まで連れて行こうとして、流石に他の奴らに見られたら面倒だと思い直す。

    「少し見た目を変えたほうがいいな」

    桐生からグレーのジャケットを剥ぎ取って、投げ捨てる。これは捨てていけ、というと、桐生は少し名残惜しそうな目を向けた。それだけでは何なので、自身のジャケットを脱いで渡してやる。きょとんとする桐生に、それを着ろ、と言うと、いいのか?と不躾な物言いで問が返ってくる。

    「お前にやるよ」

    何気なく言ったそれに、あんた良い奴だな、と返事が返ってくる。

    「この白も悪くないな」
    「そうか」
    「…おっさん、どこかで会ってたか?何だかすげえ、懐かしいような、知り合いなような、気がする、ような―…、」

    そう言いながら、もたもたと少し苦戦しながらジャケットに袖を通す。その様を、錦山はただじっと見ていた。

    「さあな、」

    そう呟きながら、桐生が纏った目の覚めるような白と、投げ捨てられて地面に淀む灰色を見比べる。胸がすく。堪らない心地がする。

    ああ、そうか。
    本当はずっとこうしてやりたかったんだ。

    錦山は満足気に煙草に火を付けた。

    やっぱりお前には白が似合うよ、そう笑いながら。

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    Replies from the creator

    山瀬屋

    MAIKINGずっと考えている救いの書きかけ、錦桐なのかひまわり兄弟なのかなかなか自分にも分からないですが製造者は錦桐が好きな人なので滲んでいるかもです…
    正史の後に、救われてほしいという願いを込めているもの、あの錦の最期の表情をずっと考えてしまう
    無題轟音が、遠くで聞こえる。
    一体、何だ。
    ああ、それは、…水か?
    そうか、水が叩き付けられる激しい音がするのだ。


    ―覚醒。


    桐生が目を開くと、視線の先に大きな滝があった。
    苔生した堅牢な岩。流れる水は飛沫を上げて流れていく。どこから来て、どこへ行くのか。滝の向こうも、流れ落ちた川の先も、霧に巻かれているかのように白んで見えない。何とも不思議なものだ。桐生は横たわる身体を起こす。柔い草の感触。背の低いその碧達に混ざって、すうっと一本、伸びている緑。座り込んで視線だけ先を追うと、そのてっぺんに太陽のような大輪の花を一つ、戴いているのが見えた。花は桐生に背を向けて、つまりは滝の方を向いて咲いている。よく見知った向日葵は、この空間に異質だった。風も無いのにたなびく草の合間から、小さな花が咲いているのも見える。同じ花だ。淡い黄色や、水色のそれだって可憐で美しい。それなのにどうしても、その絢爛な橙に惹きつけられる。うねる草原に、何にもなびくことなく、一人そびえ立つその花に。
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    山瀬屋

    TRAINING錦桐。極で桐が謎スタミナン飲んで若返ってしまい錦と遭遇する?ご都合謎SS、尻切れトンボ。桐を囲う組長錦いいなっていうn番煎じ。若い桐と37錦だったらパワーバランス的にも錦の精神性安定しそうだなっておもったりする
    TOXIC「御託は良いからとっとと探せ!!」

    錦山は携帯電話越しの部下を怒鳴り付けた。その後も続く弁解を遮り、切電する。手元の端末を叩きつけたくなるのを、危うく堪えた。全くこれだけ手を尽くして探し出せないなんて大概どうかしている。桐生は間違いなく神室町近辺に潜伏しているはずなのだ。なのにどうして見つからない。クソ、どいつもこいつも、使えない奴ばかりだ。
    苛ついた気持ちを鎮めるべく、事務所を飛び出す。部下の静止は聞かなかったこととした。煙草に火を付け、紫煙を纏いながら、夜の街を彷徨う。一人で街を出歩くのは久しぶりだった。夜風が心地良いような気もする。だが頭の中は依然、沸騰しそうなほどに茹だっていた。

    足早に駆け抜ける歓楽街。雑踏と、ネオンの対比に暗む闇。そこに溶け込むような何の変哲もない路地。錦山が注意を向けたのは単なる偶然としか言えなかった。もしくは、何かの直感があったのか。ふと見つけた暗がりの奥に、あの見知ったグレースーツを捉える。背中を丸めて、どうやら逃げに逃げて走った後の一休みとでも言いたげだった。錦山はにやりと笑う。こんな偶然ってあるか。全く馬鹿げている。だが存外こんなものなのかもしれない。懐を弄ると、ずしりと重く、冷たい金属の感触が手に馴染む。足早に路地へと向かう。そしてそのままがら空きの背中に銃口を突きつけてやると、う、と小さく声を出した。
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    山瀬屋

    MOURNINGトンチキな錦桐(未満?)、0の前くらい
    カラオケの扱いとか当時の音楽事情が余り分かってないですが、なんかリリースされた新曲:審判がおお…って刺さる桐20歳かわいいなって思ったというトンチキ妄想でした
    金が無い。

    とりあえず家賃と光熱費を払うので精一杯。何でこんなに金が無えのか不思議だ、と桐生は思った。今月は取り立てやらカチコミやらもあったし、それなりに小遣いも貰ったはずなのに。暫し思考するが、答えは出なかった。そのうちに頭の中に見知った長髪が現れて苦言を呈し出す。

    『そりゃあ桐生、お前ェって奴ァ、あんまりにも金に頓着が無さすぎるんだよ。稼ぐのも、使うのも、もっと頭使ってやんなきゃ駄目だ。ちょっと立ち回りゃいくらだって稼げる時代だぜ。大体お前はよ、先月も俺がいくら飯食わせてやったと…、』

    くどくどと説教を垂れる脳内の赤ジャケットを振り払う。顔を合わせれば大抵しこたま言われるのだから、何も妄想でまで怒られることもないだろう。しかし確かに、(脳内)錦の言う通りだ。桐生は余り頭を使うことが好きでなく、集金のささやかな報酬や、暴力沙汰の後に貰う親父達からの小遣いで日々を賄っている。とはいえ取り立ての取り分なんてたかがしれているし、いくら極道と言ったってそう毎日荒事があるわけでもない。一方そんな収入ながら、桐生はさして金のやりくりに興味が無かった。最も特に欲しい物がある訳でもなく、高価なものに興味があるわけでもなく。ならば多少は手元に残りそうなものだが、と桐生は首を傾げる。実際、興味が無いというのが問題で、その頓着の無さから好き勝手使い、少ない持ち金がいつの間にか消えているというのが実情だった。兎に角思い付きで無駄な買い物が多いのだ。錦から度々指摘はされるものの、ついぞ直らない。そもそも兄弟から日頃甘やかされているこの男は、いざとなれば稼いでる錦に食わせてもらえばいいや、等と潜在的に至極甘いことを考えているのだった。
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