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    DONE学生ネロ×作家ファウストで、ネロがファウストに自分の片腕をひと晩貸してあげる話。設定は川端康成の「片腕」のパロディです。
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    ネロ×ファウスト現パロwebオンリー「ネオンの現に祝杯のファセット」開催おめでとうございます!遅刻してすみません!
    アンディーヴと眠って「先生、眠れないの?なら片腕をひと晩貸してやろうか」

     先生、と僕を呼ぶ彼は、右腕を肩からはずして、それを参考書のうえに置いた。僕はおもわずあたりをみわたす。旧い喫茶室は昼間でも薄暗く、煙草の煙で視界がわるい。おまけに狭い店内のあちこちによくわからない置物や観葉植物が置かれているせいで、僕らの席は完全に死角になっているようだった。(もっとも、この店の主人も客も、他人に興味を払うような性質ではないのだけれど)
     ネロは残ったほうの手で頬杖をつき、僕のほうをじっとみつめた。都内の私立にかよっているという彼は、大抵学校帰りの制服姿でこの店にやって来る。着崩した指定の上着となにかのロゴがはいったTシャツ、フィラのザック、履きつぶしたコンバース。けれども今日はそのシャツの片袖が、萎れた花みたいにうなだれている。僕はテーブルに置かれたものに眼をやった。どこをどうみても、それはやっぱりネロの右腕だった。中指にできたペンだこはみなれたものだったし、手首につけたリストバンドはいつも彼がしているものだ。だというのに、彼の手を離れたそれは、酷く馴染みのない置物のようにみえた。例えば博物館の硝子ケースに飾られた化石や恐竜の骨みたいに。いや、この場合、文字通り手が、離れたのか。ぼんやりとした頭で、つい、くだらないことを考える。
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    DONEムルの悪戯で右眼が石になったファウストと、石になった彼の右眼を磨いてあげるネロの話(ネロファウ)
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    ファウスト&ネロ全関係性内包Webオンリー『隣にいてもいなくても』開催おめでとうございます!
    Sweet Child O'Mine 朝おきたら、右眼が石になっていた。目蓋のおくがやけに腫れぼったくて重たく感じる。瞬きをすると睫毛が冷たい。新雪に触れたようだ。さすがに面食らって談話室へ降りていくと、おはよう、といったクロエの耳が綺麗な真珠貝になっていた。彼の隣で紅茶を淹れながら、ラスティカが真珠と海の歌をくちずさんでいる。白磁のティカップに触れた小指は、よくみれば青ざめたサファイアだ。どうやらムルの悪戯が原因らしい。
    「あの野良猫には後できつくいって聞かせますので」
     シャイロックはそう微笑んで、ゆったりとした仕草で煙管をひとくち飲んだ。美しい彫り物のされたそこを、ルビーの爪先が撫ぜる。言葉とは裏腹に、彼はこの状況を楽しんでさえいるようだった。相変わらず、西の魔法使いたちは不可解だ。これからお茶会だという彼らに丁重に断りをいれ、部屋にこもる算段をはじめる。呪いの類でないなら僕の専門外だし、なにより、あのムルが仕掛けたものに手をだすほど馬鹿じゃない。火花に手を突っこむようなものだ。それなら自室で嵐が過ぎるのを待つほうがいい。
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