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    mimi_w_story

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    mimi_w_story

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    ※企画もの
    ※紅蓮要素あります

    IFマヒルが那落迦を覗きにくるまでの話名前を呼ぶから返事をして
    呼ばなくなったら、目を取って
    体は朽ちても、いつも一緒よ

    マヒル
    マヒル
    私の太陽

    雛の囀りに微かに混ざる、ヒトの声。

    ハーイ

    それぞれの音は岩肌から滴り落ちる水とともに、暗がりに吸われて消えた。




    ----
    ある王国に、たいそう賑やかなお寺がありました。
    力強いモンク僧、祈る信者、彼らを世話する癒し手、職人、農夫。
    戦火から逃れてきた怪我人もいます。
    みな彗星を司る壊神ラールガーを信仰していました。

    たくましい体つきのヒューランやルガディンばかりですが、ひとり、ララフェル族の娘がおりました。
    よく働く農婦で、畑作業の合間に説法を聞く敬虔な信者でした。
    体の大きさは違えど、壊神の足元に集った仲間として厳しい世を励まし合いながら暮らしていました。


    とある日、この国の王様が言いました。

    我はニメーヤの代理人
    国民は王のみを信仰し、他の神々の崇拝を禁ず


    国のあちこちで反乱が起き、軍隊が民を殺しました。
    寺にも国軍がやって来ました。
    あたりを兵士で囲い込むと、中にいた人たちをみんな殺してしまいました。
    ひとり、小箱に隠れ逃げたララフェル族の農婦だけ、見落とされました。

    朝になり、また夜になった頃、兵士が誰もいなくなりました。
    農婦は箱から出て、腐り始めた仲間たちの亡骸から片目だけを集めると、暗闇へ逃げました。


    血の雨は降り続き、闇のなか隠れた農婦は母に、目玉は雛に生まれ変わりました。
    王は討たれ、民は斃れ、国は亡びました。
    外の興亡をよそに、闇産まれの雛達はすくすく育ち、歩くようになり、上手にさえずるようになりました。
    目を離すと陽射しの元へ転がり出ようとするので母の気は抜けません。
    軍靴の音はまだ聞こえていました。


    雛達が数えで4つになる頃。
    不思議な夜がありました。
    しんと静かな夜でした。
    鳥も魚も草木も、深く眠って目覚めません。
    星だけが眩く輝いていました。
    茨は闇にも忍び寄り、鳥たちを黒い眠りに誘いました。
    雛達は少しの間うたた寝をうちますが、元気に飛び起きていきました。
    母はその様子を横目に、ゆっくり眠りにつきました。


    雨は止み、森に大きな壁が立ちました。
    たまに賑やかな行進が通りますが、魔物たちには見向きもしないので、みなのびのびと過ごしています。
    雛たちはすっかり立派な羽になりました。
    狩りも上手にこなします。
    小さなブフートがたくさんやってきたので、暗闇は譲ってあげました。
    そうして長い月日を穏やかに過ごしていると、ある日突然1羽が消えました。
    いなくなったのは、いつまでも体が小さい末の鳥です。
    痕跡は、森の壁へ続いているようでした。
    末の鳥と仲良しだった二つ目の鳥が、群れを飛び出し追いかけて行きました。
    たくさんの目がその背中を見送りました。


    壁を横切り森を抜けて、砂の都へ。
    再び会えたのは、稀なる彗星の導きでしょうか。
    末の鳥と二つ目の鳥は盗品と強盗と呼ばれ都を追われましたが、当の羽たちは知る由もなく、石壁の外をのびのびと歩きます。
    砂の国は、今は遠い故郷に空気が似ていました。
    獲物は豊富で、肉には困らぬようです。
    2羽はしばらくここらにいることに決めました。


    豊かな黒毛の、石を食むうさぎ達と親しくなりました。
    そこらじゅうに石探しの穴があるそうで、2羽の鳥もあちこち覗いてまわりました。
    ある日、自ら穴を掘る痩せたうさぎのガンジャと会いました。
    石は食べず砂を好んで楽しむ彼は、掘った穴倉に色々な者を棲まわせていました。
    群れごとに一様な姿と暮らしが当然の鳥にとって、不思議な空間です。
    ガンジャは鳥の名を尋ね、掘った石をくれ、来訪を歓迎してくれました。
    鳥は喜び、寝食の合間に覗きに行くようになりました。
    悲しみ、苦しみ、怒っていたかと思えば、喜び、楽しみ、いそがしそう。
    彼らを見ていると、溶けて消えていた部分が形になっていく心地がありました。
    それは他の誰もが知っていて、二つ目の鳥は忘れ去った、昔の夢の続きです。

    さて、今日も晴れやかな一日のようです。
    朝の狩りを終えてお腹を満たしたら、暑く乾いた砂を浴びて、穴を覗きに行きましょう。
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