暗転「………ぁ」
「灰原っ!!!」
必死に腕を伸ばすも届かず、名前を呼ぶことしか出来なかった。
一瞬にして鉄骨が崩れ落ち、コンクリートの破片が辺り一面に飛び散る。
灰原と依頼主が中に取り残されてしまい、焦りながら私が鉈を必死に振りかざしている間に、もう一人の依頼主が居なくなっていた事に気付けなかった。
「どうか、生きていてくれ…」
✳✳✳
縋るような灰原の泣き顔を、初めて見た。
見開いた瞳からは止めどなく涙が流れ、腕に抱えている依頼主を見詰めている。
「ねぇ、…あの当主って言ってた人、この子置いて逃げたんだ。…ねぇ、どうしてかな?」
「考えるな灰原、こっちへ来い…早く」
今回は嵌められたのだ。私達はあの当主という男に、2級に依頼する任務にしてはおかしいと感じていたというのに。
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