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    usagi_is_kawaii

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    usagi_is_kawaii

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    夏五で都々逸ネタ
    学生時代に交わした約束を、夏が死んだ後にしっかり守る五。
    使用都々逸(?)は、
    “三千世界の鴉を殺し、主と朝寝がしてみたい”
    “お前死んでも寺へはやらぬ、焼いて粉にして酒で飲む”
    のふたつ。
    いつか漫画か何かにしたいけど、時間も気力もねぇからSSだけ先に書いた。

    #夏五
    GeGo

    傑とテスト前に日本史の勉強をしている最中、明治初期のところに差し掛かった時のことだ。

    「あぁ、そうそう。この時代、“ざんぎり頭叩いてみれば文明開花の音がする”という歌が流行るほど、髷を切り落とした者を先進的なものたちだという賞賛の声も増えてきた頃だね」
    と、補足の豆知識を教えてくれる。

    その今まで歴史で聞いてきた俳句や和歌とも違う音のリズムに少しばかり興味を抱く。

    「字余りすぎね?」
    「和歌でも俳句でもないよ。都々逸って言って、七・七・七・五の歌。有名なのだと、高杉晋作が遊女に送った“三千世界の烏を殺し、主と朝寝がしてみたい”とかかな」
    烏を殺しとは随分物騒なこって。

    「へぇ、高杉ってカラスに恨みでもあんの?」
    率直な感想を傑に言えば、きょとりとした後おかしそうに吹き出した。

    「違う違う!三千世界はこの世界全て。カラスは、遊女が客に【浮気をしない】という約束を神に運ぶ役割を担っていてね。約束を破ると三羽のカラスが死ぬらしい。世界中の全ての烏を殺してでも、朝寝、つまりはセックスして一緒に朝を迎えたい。お前を独占したい、みたいな内容の恋の歌だよ」

    神に約束を運ぶということは、カラスは神の眷属だ。神に喧嘩を売ってまで、愛する人と一緒にいたいとは随分情熱的な歌じゃないか。
    ひゅーっと口笛を一つ吹き、にやりと傑に笑みを向ける。

    「俺たちにぴったりじゃん。俺と傑に嫌がらせしてくるクソうぜぇ腐った蜜柑共をぶっ殺して、俺も傑とセックスしたいな♡」
    「うーん。悟が言うと情緒がないね。やり直し」
    「は?興奮しろよ。インポかよ」

    つれない恋人の言葉にむくれていると、笑いながら頭を撫でられた。
    そんなんで機嫌治ると思ってんの?

    「あぁ、でも」

    不意に傑が口を開いて、視線を傑に投げかければ、愛おしそうに目を細めた傑と目があった。

    「“お前死んでも寺へはやらぬ”」
    「は?」

    「“焼いて粉にして酒で飲む”」
    頭を撫でていた傑の手がかちゃりとサングラスを外し、俺の瞼を指で撫でた。

    「は、ッ!なに、すぐるってばそんな趣味あったんだ?なになに、俺食われんの?」

    「そういうわけじゃないけど。だって、悟が死んだら六眼とか術式の関係で五条家が回収するだろう?それならいっそ、私の手で燃やして、骨を砕いて、っていうのも一興だろう?」
    「ははっ!いいぜ。じゃあ、俺が死んだら、残さず全部傑が飲めよ?」
    「情緒もへったくれもない約束だね」
    「傑は繊細すぎんだよ」






    なんて、会話をしたのは何年の頃の話だっただろうか。
    「………オマエが先に死んでどうするんだよ」

    死んだ、
      ………いや。

    自分が殺した親友の亡骸を前に、ふと学生時代のそんな約束を思い出した。
    百名以上の非呪術師を殺し、京都と新宿で百鬼夜行をおこした大罪人。
    傑の亡骸は、上層部が術式の調査をした上で処分する。

    「約束、逆になるけど怒んなよ」

    守るべき生徒がいる以上、傑の亡骸全部僕が持っていくわけにはいかないけれど、一部くらいなら許されるだろう。
    なくなった腕が右腕でよかった。
    また情緒がないなんて言われたらたまったもんじゃないしね。



    東京にある自分の家のひとつ。
    そのバルコニーで、切り取って持ち帰った傑の左手の薬指をライターの火で炙る。
    「ははっ。くさ………」


    人の体の焼ける臭い。

    傑の体が焼ける臭い。


    脂が燃えて、皮膚が溶け。
    火の強さが足りないのかまだ焦げた肉の残るそれを前にしても、涙の一つも溢れてこない。
    恋人だったのに、随分薄情なもんだね、僕も。

    ポケットからスマホを取り出し電話をかけた。

    「あ、もしもし伊地知ー?今すぐガスバーナー買って僕の家に持ってきて」
    返事を聞かずに通話を切ってぽいと電話を投げ出し、自身もリビングのソファに身を沈める。


    三千世界の烏を殺し、だっけ。
    僕は、オマエが望んだら、多分、きっと、ついていったよ。
    オマエの思想を否定する烏を全部殺してでも、僕は………




    俺は、傑といつまでも一緒に朝を迎えたかった。










    伊地知が買ってきたバーナーで炙れば、傑の指はすぐに灰と骨だけになる。
    指の骨をハンマーで砕いて粉にして、灰ごと酒に入れて一気に煽った。



    「ははっ。まっず………」




    つっと頬に冷たい雫が伝った気がした。
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    usagi_is_kawaii

    MAIKING夏五で都々逸ネタ
    学生時代に交わした約束を、夏が死んだ後にしっかり守る五。
    使用都々逸(?)は、
    “三千世界の鴉を殺し、主と朝寝がしてみたい”
    “お前死んでも寺へはやらぬ、焼いて粉にして酒で飲む”
    のふたつ。
    いつか漫画か何かにしたいけど、時間も気力もねぇからSSだけ先に書いた。
    傑とテスト前に日本史の勉強をしている最中、明治初期のところに差し掛かった時のことだ。

    「あぁ、そうそう。この時代、“ざんぎり頭叩いてみれば文明開花の音がする”という歌が流行るほど、髷を切り落とした者を先進的なものたちだという賞賛の声も増えてきた頃だね」
    と、補足の豆知識を教えてくれる。

    その今まで歴史で聞いてきた俳句や和歌とも違う音のリズムに少しばかり興味を抱く。

    「字余りすぎね?」
    「和歌でも俳句でもないよ。都々逸って言って、七・七・七・五の歌。有名なのだと、高杉晋作が遊女に送った“三千世界の烏を殺し、主と朝寝がしてみたい”とかかな」
    烏を殺しとは随分物騒なこって。

    「へぇ、高杉ってカラスに恨みでもあんの?」
    率直な感想を傑に言えば、きょとりとした後おかしそうに吹き出した。

    「違う違う!三千世界はこの世界全て。カラスは、遊女が客に【浮気をしない】という約束を神に運ぶ役割を担っていてね。約束を破ると三羽のカラスが死ぬらしい。世界中の全ての烏を殺してでも、朝寝、つまりはセックスして一緒に朝を迎えたい。お前を独占したい、みたいな内容の恋の歌だよ」

    神に約束を運ぶということは、カ 1807

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    DONEGEGO DIG. AUTUMN 開催おめでとうございます。展示用の新作長編です。
    祓ったれ本舗の夏油傑と、祓ったれ本舗であるはずの五条悟、二人の舞台(世界)と過去の縛り。
    夏油目線でお送りします。

    夏五Forever……
    ☆作品の感想等は、スペースの書き込みボードか、当方のTwitterにあるwaveboxからお送り頂けますと嬉しいです(о´∀`о)
    あの照明(光り)を覚えているか「……、さとる」

     隣に佇む相方の肩を叩く。サングラスに隠された、日本人とは思えない蒼の瞳が瞬きもなく会場を見つめていた。

    「さとる、悟。行こう、呼ばれてるよ」
    「……すぐる、俺たち……」
    「そうだよ」

     たくさんの紙吹雪が舞い、歓声が響く。金色のテープも床や私たちの頭の上にまで引っかかってて、悟の頭のそれを取ってあげた。

    「私たち、優勝したんだよ!」

     念願だった。芸人としてデビューしてから今日まで長かったような、あっという間だったような。十年以上寄り添ってきた相方兼親友はまだ現実を飲み込めていないのか、一言と発さない。私は彼の手を引いて舞台の中央まで向かった。
     私たちが優勝したのは、若手芸人の登竜門とも言われ、全国で生放送されているお笑いグランプリだった。ずっとこれを目標に生きてきたのだ、嬉しくない訳が無かった。
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