幕引き「…お疲れ様、ゆっくり休んでね」
生徒達を車から降ろすと、灰原はそれぞれに労いの言葉を掛ける。
学生寮へと向かう彼らの、足取りはひどく重い。
「はぁ…」
見送りが終わり車に戻ろうと踵を返す。珍しく溜息をついた灰原は、自身も疲れている事を自覚していた。
今日の任務は事前に窓から聞いていた呪霊の数とはまったく情報が異なり、桁違いに多かったのだ。いくらか現場経験を積んでいる3年生でも、苦戦していた程である。
「無事で何よりです」
後ろに人の気配はしなかった。
「…っ」
突然の声に、灰原は咄嗟に前へと踏み込み間合いを取った。そして、注意深く後方にいる人物へと目を向ける。
「灰原、久しぶりですね」
「え、………な、なみ?」
「そんな顔をしなくて良いでしょう?」
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