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    藤 夜

    成人⬆️基本は夏五!書くのは夏五!!ほのぼのいちゃいちゃを日々妄想中^ ^

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    藤 夜

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    真ん中誕生日の七夕!!祓本軸で告白よりも躰が先になっちゃう傑クンと「気付けよ、ばーか」の悟クン。
    今週末開催の【GEGO DIG】に展示予定の色にまつわる両片想いの短編集から。

    #夏五
    GeGo

    【紫紺】 キス 腰掛けたベッドの上から、下で寄り掛かるようにして座っている悟へ、テレビに流れる先輩のコントから視線を転じた。いつも見慣れている開いた襟ぐりから覗く項が艶めかしくて、こくんっと唾液を飲み込んだ。
     くすりと笑った拍子に揺れた悟の体から、私と同じボディソープの香りが別の匂いのように鼻先をくすぐり、躰を刺激していった。
     我慢はしていたのに、ふとしたきっかけで箍は簡単に外れてしまうものらしい。
     滑らかな首筋に吸い寄せられるように身を屈め、唇を押し付けていた。
    「すぐる」
     驚きと戸惑いを含んで名を呼ばれ、我に返った。言い訳じみた返答は、動揺と自己嫌悪で上擦ったまま、取って付けたような言葉しか出てこなかった。
    「あっ、ごめん。呑み過ぎたかな」
    「シたいんだろ。いーよ」
     口に出したのは悟でも、態度に出したのは私で、煽られていい話ではない。きっと、後悔する。でも、振り返って、下から見上げたその表情と言葉は、そんな私の内心を知ってか知らずか、にやりと挑発的だ。踏み止まるために視線をテレビに戻して、早口で窘めるように言い募る。
    「何、悟も酔ってるの。私のカクテル、間違えて飲んだ」
    「酔ってるコトにしとくからさ」
     そう言って天使のようだと称される顔で、どこで覚えたのか妖艶に微笑まれ、ぷつんっと脳内で我慢していた欲が決壊した音が響いた。

    「ひとつだけ条件な。今はキスはしない」
     そう言われ、キスは交わさぬまま、何度も躰だけ重ねれば、気持ち善さの後に、やるせなさだけが残って、澱のように溜まっていく。今更気持ちを告げても、悪ふざけの崩した表情でオェ――なんて言われかねなくて、そうなれば躰だけでも欲しかった、なんて浅ましく思ってしまうのは、目に見えている。それにコンビとして良好な関係にもひびが入るのはなんとしても避けたい。悟の隣で、悟と笑って生きていきたい。れそは、何にもかえがたい願いだった。
     互いに声を掛けなくても、まとわりつくような眼差しだったり、逸らされた視線と共に色付く首筋だったり、艶を帯びて呼ばれる名前だったり、そんな些細な信号を違えることなく読み解いて、ベッドに転がり込む日々を過ごす。
     しんと静まり返った夜更けに布団から抜け出ると、煙草に火を点けた。蛍のように暗がりに浮かんだ灯が、儚い命のようだ。紫煙を燻らせて、煙と一緒にため息が零れた。
    「いい加減、やめないと、こんな関係」
    「こんなって、どんな」
     指から滑り落ちた煙草は、手にしていた灰皿に転げ落ちた。
     暗がりから聞こえた声は明瞭で、静かでも有無を言わさぬ響きをともない、寝言だろと言い訳にすら使わせて貰えぬ真摯さがある。
    「躰だけ重ねるのは、しんどい、な」
     疲れたような声は、自責よりも後悔が強く響いて、一層我ながら嫌になる。躰だけが、嫌なのに。心に触れられないのが、嫌なんだ。
    「ねえ、傑。俺はさ、キスは恋人としたいんだ」
    「だから、キスはだめ、か」
     やっぱり告げたところで、私の好きと悟の好きは、異なるものだった、ということだろう。
    「何で俺がわざわざ条件言ったと思ってるんだよ」
     苛立ちを含んだ滲んだ声色に、とくり、と胸の内で何かが跳ねる。
    「なんで、って。私が考えることだ、ね」
     手元の煙草を消して、蛍の灯のかわりにベッドライトとつけると暖色の淡い光に、凛とした眼差しを浮かべ、さみしげに体を起こした悟が浮かび上がった。やっぱりそうかと思い、隣に腰を下ろすと、抱き寄せたい衝動を抑えて静かに顔を合わせた。
     聞いて欲しかった、のか。
     何でキスはだめなのか。
     今でなければ、いつならいいのか。
     恋人なら、いい、てこと、なのだろう。
     えっ、ってことは。
     今はだめなら、いずれは、いいってことに、ならないだろうか。私でも。
    「悟」
    「気付けよ、ばーか」
     くしゃりと笑ったその顔は、私の大好きな屈託のない、飾り気のない眩しい笑顔だった。
    「悟、ごめん、好きだよ。大好き。ずっと、好きだった。付き合ってよ」
     言えずにいた言葉が堰を切ったように口をついて出た。こわいも恥ずかしいもなくて、ただただ、伝えたかった。
    「今日、何日だ」
    「えっ、急に何。七月六日、もう、七日か、って、あっ」
    「そう、傑が言ったんだろう。真ん中誕生日が七夕なんて、ロマンティックだね、なんて恥ずかしいこと臆面もなく。初めて抱かれた時、言ってくれるかと思ってたのに、何にも言わねーんだもん。俺の勘違いかと思ったら、何にも言えないし、けど、オマエはまた、手は出してくるしさ」
    「えっ、だって、悟、私がどーやって女抱いてるのか興味あるって、えっ、ごめん」
    「そんなの当て擦りに決まってるだろっ。……言わせんなよ」
     えっ、うそ。かわいすぎない。
     聞いてないけど。
     淡い光でもわかるほどに、朱色に染まった悟を抱き寄せると、耳元で囁いた。
    「悟の、返事、聞かせてよ。キス、させて」
     窓の外では天の川が煌めき、年に一回の逢瀬を楽しんでいるのだろうか。きっと私には、年に一度なんて耐え切れないな、なんて思いながら、星々よりも綺麗な悟の瞳を覗き込んだ。

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    Replies from the creator

    藤 夜

    DONE生徒たちのクリスマス会からの、ふたりだけで、一緒に過ごす、しあわせな時間。
    離反ifのクリスマス短編集、テーマはキスのひとりアンソロです(笑)
    キヨシキョシ 悟視点 
    【雪が融けるまで725秒】にあわせて支部に掲載したお話より再掲
    ◆五◆ 好き クリスマスケーキにシャンメリー、ケンタのチキンをメインにデリバリーのデリカが所狭しと並んでいる。悠仁と恵が飾り付けたのか、壁や天井に星を始めとした色とりどりのポップな装飾がなされ、楽しげな雰囲気満載だ。
    「先生も食べていけばいいのに」
     当然だと言わんばかりに声を掛けてくれるのは優しい悠仁ならではで、当然嬉しくもあるけれど、それはそれで少々困る時もある。
    「こういうのは学生だけの方が盛り上がるよ、ね、憂太」
    「ええっと、でも先生も」
    「気を遣うことないって。どうせこいつはさっさと帰りたいだけだろ」
     同じく優しさの塊と言いたいところではあるけれど言い切れない乙骨が、助けを乞うように視線を向け小首を傾げて微笑むと、隣にいた真希に、冷ややかな視線と共にばっさりと切り捨てられた。それでも目の奥が笑っているので、僕たちふたりの様子を見慣れた彼女たちは、またかと呆れているだけだろう。憂太に頷いて貰う前に角が立つことなく帰れるからいいけれど。
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    藤 夜

    DONE離反ifのクリスマス短編集、テーマはキスのひとりアンソロです(笑)
    教師if 伏黒視点 
    例年別々に過ごすイブを、珍しく伏黒姉弟と一緒にケーキ作りをする夏五のお話
    【雪が融けるまで725秒】にあわせて支部に掲載したお話より再掲
    ◆三◆ スカイブルー「それじゃ、僕と一緒に恵たちとケーキ作ろうぜ」
     故あって保護者の真似事のようなことをしている姉妹が私にはいて、毎年クリスマスには彼女たちと一緒にケーキを作ってささやかなクリスマス会をし、サンタクロースの真似事をしていた。それが今年は、
    「私たちだけで作ったケーキを夏油様に食べて貰いたいから準備ができるまで他所のお家で遊んできて」
     と言われてしまった。成長が喜ばしくもあり、寂しくもあり、ならば非常勤として働いている高専で事務仕事を片付けようと思っていた所に、悟に声を掛けられた。
     彼にも保護者と言うより後見人として面倒を見ている姉弟がいる。こちらはクリスマスに一緒にいても鋭い目つきで邪険にされるそうだが、それは表面上だけで、それなりに楽しんでくれているみたいだから、と毎年ケーキやらプレゼントやらを携えていそいそと出掛けていく。紆余曲折があった上でクリスマスは一緒に過ごしたい間柄になったにも関わらず、優先すべき相手がいることに互いに不満を言うことはない。私はそんな悟だからこそ大切だし、悟だって私のことは承知している。それでも世の浮かれたカップルを見れば羨ましくなるのは当然で、イブじゃなくてクリスマスに一緒に過ごすようになった。
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    藤 夜

    DONE離反ifのクリスマス短編集、テーマはキスのひとりアンソロです(笑)
    教師×教師 虎杖視点 
    クリスマスプレゼントにまつわる惚気のひと幕

    【雪が融けるまで725秒】の開催、おめでとうございます&ありがとうございます♪
    ひと足先にサンプルがわりに第1話を掲載します^^
    ◆一◆ 久遠「しょうがない、伏黒が迎えに来るまではここで寝てなよ」
     そう言って家入は空いているベッドを指差した。申し訳なさに仕事は、と問えば、
    「仕事納めはまだ先だから、私のことは気にしなくてもいいよ」
     積み上がった書類の奥で目元を細めて頷かれた。閉じたカーテンの向こう側にあるベッドに寝転ぶと、冷えたシーツが火照った肌に心地よく、横たわれば楽になった体に、疲れていたのだと実感した。
     クリスマス明け、最後の任務に出掛けたところでやけに暑いと感じたら、伏黒に思いっきりどやされた。どうやら珍しく風邪を引いたらしい。ただ、風邪なのか、呪霊に中てられたのか、イマイチ判断がつきかねるからと、怒鳴った伏黒に連れられてやってきた医務室で様子見と相成った。まあ、伏黒が俺の代わりにまとめて報告書を作成して、提出してくるまでの間、寝て待っていろ。と言うのが正しいのだろう。年末だから年内に提出しとけって言うなら、こんな年の瀬に駆り出さなくてもと思わなくもないけれど、年の瀬だからこそ、刈り取れる危険は摘んでおけと言う理屈も当然理解はできる。猶予があるからとクリスマスに予定を入れられなかっただけで、御の字なのだろう。
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