オベロン製プランパーリップ学パロ
付き合ってるオベぐだ♀
いちゃいちゃしてるだけ。
どう考えてもおかしいと思う。
伏せられた目蓋を縁取る長い睫毛に、艶々の唇。
それなりの格好をして街中に立っていたら、モデルの女性と勘違いされそうだが…
オベロンはれっきとした男だし、何なら藤丸リツカの彼氏だ。
「ヒアルロン酸とか使ってる…?」
「……は?」
昼休みの屋上。
二人はいつもここでお昼を食べているのだが、お弁当に箸を進めるオベロンをじっと見つめながらリツカはぼそりと溢した。
「…プランパーリップとかは流石に使ってないだろうし…」
「何?唇…?」
「うん…。羨ましいなって」
長い睫毛に艶やかな唇、サラサラのプラチナブロンドの髪は風になびき…童話の世界の住人に見間違う。
誰もが羨む容姿だ、と…リツカはオベロンに対してそう思っていた。
また、自分とは不釣り合いなのでは?とも…
自分がもっと可愛くて、スタイルも良ければ…彼の隣に立ってもその絵面に負ける事はないだろう。周りから何か言われる事だって……
「別に…リツカはそのままで良いと思うけど?」
「っ…でも!羨ましいものは羨ましいよ!」
そろそろ秋風も強くなり、本格的に寒くなれば乾燥する季節になる。唇は荒れに荒れ、ガサガサになった無残な唇に薬用リップが手放せなくなる事など、彼には無縁なのだろう。
「へぇ…なら、少し試してみようか?」
試す?
何を?
「…何か日頃からやってる事とかある、の?」
秘策でもあるのかとソワソワとしたリツカがオベロンの顔を覗き込むと、待っていた。と言わんばかりにオベロンの右手がリツカの後頭部を抱え込み…
その唇にキスをした。
「ッ〜〜?!?な、何して…」
「キスだけど?」
慌てて周りに視線をやるも、今日は自分達以外だれも居ないようで少しばかりほっとした。
…いや、いやいやいや!
違くて…!!
「何で唇ぷるぷるにするのにキスするの?!」
「したらうつるかな、って」
「そんなワケないでしょ!!」
またからかわれた。
リツカは真っ赤になった頬を膨らませ、食べ終えたお弁当箱を仕舞い込んでいく。
こっちは真面目に悩んでるのに…オベロンはいつもいつもリツカをからかい、慌てる姿に喜んでいる。
このドSめ…
「んー…あながちそうでもないと思うよ?
唇同士が触れ合えば血流も良くなってふっくらしたりするんじゃないか?
それこそ、プランパーリップって唇に刺激を与えてふっくらさせるんだろ?」
「…そう、だけど…。何でプランパーリップに詳しいのさ」
「話の種にどっかで聞いたんだよ。
ま、つまり…僕とキスし続けたらきみの望む艶々でふっくらした唇になるかもしれない、そうだろ?」
…確かに…。間違ったことは言ってない…気がする。
しかし、リツカが完全に納得するよりも先に。
オベロンの指は再びリツカの顔を自分の方に向かせ…
ちゅ…ちゅ…♡ちゅっ…♡
固まったまま動かぬリツカを相手に、何度も何度もキスを繰り返してくる。
「ん…っ…ちょ……だ、だめ…だよ」
「何で?リツカは唇をふっくらさせたいんだろ?」
「で、でも、まだ学校…だし……」
誰か来るかもしれない。
リツカはもじもじとオベロンの身体を引き剥がそうと両手を突き出したのだが、オベロンはそれを軽く払って再度キスをした。
「んっ…♡ん、ぅ…〜〜!!?」
話聞いてた?!
リツカが必死にとんとんと胸板を叩くも、オベロンは子猫の抵抗にしか感じず。何度も何度もキスを繰り返し…
それはリツカが酸欠を起こして、彼の胸板に倒れるまで続けられた。
「はっ…はぁ……んっ…」
「どう?変わった気がする?鏡見てみたら?」
だが、今鏡を見たところでそこに映るのはキスでとろとろになったリツカの顔だろう…。
「こ、これで変わるわけないじゃん?」
「ああ、確かに完全に変えるには継続的な刺激が必要だね。何?もっとシて欲しいって?仕方ないなぁ…」
オベロンの腕が再びリツカの体に伸びてきたところで、危険を察知した彼女は「もう!学校じゃだめだってば!」と今度こそ彼の腕を抑えた。
「だ、誰か来たら困るし…」
「じゃあ此処じゃない場所でシて欲しい?」
「あ、え…それ、は……」
多分…嘘だ、と思う。キスをし続ければ唇が艶々でふっくらするのは。
でも…自分とキスをする口実にそう言ってくれるのは…嫌な気はしない。
彼なりの、リツカの慰めというか……。
「……学校じゃなかったら…シて、欲しい…かな」
「学校じゃない場所って…?
何?放課後は二人きりになれる所行きたいって?今日はきみからのお誘いなワケ?」
「き、キスだけだよ!?」
「健全な男子捕まえといて馬鹿にしてる?キスだけで済ますワケないだろ…
ああ、シながらキスした方が効くんじゃないか?ほら、女性ホルモンが刺激されてる方がそういう効果上がりそうだし…」
よくもまぁつらつらと浮かぶものだ、と少しばかり感心してしまったが、リツカは目を細め。
「…なんか結局、オベロンがえっちしたいだけじゃん!」
と、不服そうに告げた。
「別に変な事は言ってないだろ?好きな女の子を抱きたいって普通の感覚じゃないか?」
「またそういう事さらっと言う…」
恥ずかしいが、嫌ではない。
オベロンは乾燥すればヒビ割れる唇のリツカの事が好きだ、と。そう言ってくれている。
変わる必要などない。
そのままのきみだから、抱きたいと思うのだ、と。
「まぁとりあえず…きみの興味が違う所に移るまでキスは毎日付き合ってあげるよ…」
「…ふっくらするのに興味がなくなったらキスしてくれなくなっちゃうの?」
からかわれてばかりなのは嫌だな、とリツカは少しだけ寂しそうにオベロンの瞳をじっと見つめた。
だが、オベロンは動揺などする事なく、余裕たっぷりに笑うと
「キスもセックスも…僕はきみとなら毎日したいけど?」
リツカの顎先を指で掬い上げながらそう告げ、ダメだと言われたばかりの唇に再びキスを落とした。