蓄光ネックレスの話軍事施設にいたとき罰として暗い倉庫に閉じ込められた茨、罰の終了時間に弓弦が迎えに行くと、中にはなにかから身を守るようにして頭をか変えて蹲っている茨が。
慌てて駆け寄り茨を抱きかかえると、茨は意識を失っていた。
それ以来観察していくと茨が無意識に暗いところや狭いところを避けているのを確認する。
その後暗いところや狭いところに行くときはさり気なく一緒についていきフォローするようになる弓弦。
別れの朝に餞別として蓄光のネックレスを、直接渡さず、茨の枕元にこっそり置いておく弓弦。
夜になってから一人になった茨は、枕元に優しい光を放つものを見つける。それが弓弦からの贈り物であることを悟った茨は、少し迷ってからポケットに乱暴に突っ込んだ。
それ以来、ネックレスを握ると暗所や閉所でも心を平静に保てるようになった。
そして、それは二人が再会してからも変わらず。
ある日今度参加するドラマの監督の作品を探す為倉庫に赴いた茨は、茨が中にいることに気づかなかったスタッフに扉を施錠され、倉庫の中に閉じ込められてしまう。
出ようとした時、扉が開かない事にパニックになる茨は、とっさに胸元に手をやるが、そこにお守りのネックレスは無かった。
その後運ばれた病院のベッドの上で意識が戻った茨は傍らで弓弦が無言で自分を見つめている事に気づき心臓が飛び出しそうになった。
(「な、なん、なんで、」
「酷く焦った様子で連絡があったので慌てて駆けつけると鍵の掛かった倉庫で倒れている茨がいた、と漣さまから連絡がございました」
「今は朝の5時47分、貴方が病院に運ばれたのは昨夜の22時過ぎだそうです。
精神的なショックでパニックになり気を失ったのだろう、とのことでしたが、それにしたって働きすぎでございましょう。せめて今日1日は入院してゆっくり休むこと、と巴さまから言伝を預かっております」
「……殿下、いらしてたんですか」
「巴さまだけではございませんよ。乱さまも漣さまも日付が変わるまで病室にいらっしゃいました。私は本日1日フですので、事情をお話してこちらに残った次第でございます。
……皆様、心配しておいででしたよ。」
弓弦は黙り込む茨に小さくため息を吐き、
「朝になれば乱さまがいらっしゃいますよ。私で不満でしょうが、我慢してくださいまし」
と言うと、茨は小さな声で、そうじゃない、と呟いた。
「……ネックレス。アンタがくれた、暗闇でも光るやつ。アレがあったから暗闇でも狭い場所でも大丈夫だったのに、気づいたら、失くなってた」
弓弦は茨が今もあのネックレスを大切に持っていてくれていたことを知り、愛おしさを感じながら
「失くしてしまったのならまた買えばいいでしょう。どうしてもあれがいいと言うなら、私も探します。今は、それができるのですから」
「ああでも、せっかくですし、今度はお揃いにしても良いかもしれませんね」
穏やかに笑いながら茨の頭を撫でる弓弦に、なにそれ、それじゃあアンタと俺が仲良しみたいじゃん、と零す茨。
おや、違いましたか、と弓弦がいたずらっぽく笑うと、茨はそっぽを向いて目を閉じた。
その頬が僅かに赤く染まったのを、弓弦だけが知っている。