情人节快乐！―２月７日、『同源茶店』にて

「情人节(ﾁﾝﾚﾝｼﾞｴ)？」
「あぁ…医生(ｾﾝｾｲ)は何かするのか？」
「まぁ……でも、特に変わったことはしないかな。『桃華』の料理を取り寄せて猫と一緒に夕飯食べて、猫が好きそうな宝石をプレゼントするくらいだよ。あ、翌朝に猫のご機嫌のためにフレンチトーストを作る、も入るのかな」
「そうか……(なぜ翌朝に追眠の機嫌を取る必要があるのかは聞かない方が良いだろうか…)」
「劉仁は？ そんなこと聞くくらいなんだから何か考えてるんでしょ？」
「………まだ、思案中だ」
「え、情人节って来週だよ？ 間に合うの？」
「……………………」



―２月１４日 、古物商『宝来』にて

「……誰かいるか？」
「あー！ わんわんだー！ いらっしゃーい！」
「マツリか……あの人渣(ｸｽﾞ)はいるか？」
「でかけてるよ！ すぐもどるって！」
「そうか……」
「あら、にぃさま！」
「愛玲(ｱｲﾘﾝ)？ なぜここに？」
「バレンタインだから マツリくんにチョコレートを もってきたのよ。だいじな おともだちだもの！ あとで にぃさまの じむしょにも いこうと思っているの」
「…まさか、お袋もいるのか？」
「いないわ！ だまって 出てきたの」
「またか！ 危ないから止めろと、いつもお袋が言っているだろう？」
「わたしに まかれる ごえいさんが わるいと思うわ！」
「それは………そうかもしれんが……」
「わんわんは、れーれーにバレンタイン？」
「…っ！」
「だからにぃさま、バラのはなたばを もっているのね！ ……あら？」
「どうしたの？あいりんちゃん」
「１、２、３……７本あるわ。だめよ、にぃさま」
「え？」
「７本は ダメよ。意味が まちがっているわ。ねぇ、マツリくん？」
「ななほん…？……あ、そうだね！」
「え？ いや、だが……」
「１本、わたしが もらうわ。これは わたしから 阿近に あげる！ うふふ！」
「ちょ、愛玲！」
「ただいま～……って、ワンワン居んじゃん。なんか用？」
「げっ！？ いや……あ～………」
「ファイトよ！ にぃさま！」
「わんわん、がんばれー！」

「……………………やる」

「にぃさま！ それは ぜんぜん ダメだわ！」
「ドンマイわんわん！」

「は？ バラの花束？ 今日何かあっ………あぁ～…」
「…………………」
「アッハ！ ちょーどいいや。ハイ」
「………え？」
「チョコ、やるよ」
「え？」
「非常食用、切らしてたから買いだめしに行ってたんだよ。だから、ひとつやるよ」
「……………え」
「よかったわね！ にぃさま！」
「わんわん、おめでとー！」
「お返しとか考えるのめんどくせーしな～」
「……あぁ、お前はそう言う奴だよな…」
「で？」
「え？」
「向こうじゃ情人节って言うんだろ、今日。そんな日にわざわざ来たんだから、他にも用事があるんじゃねーの？」
「いや……今日は、これから全部の店でバレンタインパーティーをやるから、その見回りに行かなくてはならなくて……」
「ふーん」
「…だが、その……………その後、お前が、良ければ……」
「それ何時に終わんの？」
「…日付は越えるだろうな」
「あっそ、分かった」
「だよな……ん？『分かった』？」
「仕事のあと来るんだろ？ さすがに表は閉めるけど裏口は開いてるから入ってくりゃいーじゃん。 起きてるかどうかは保証しねーけど」
「寝るなら戸締まりしろ人渣！ マツリもいるんだぞ！」
「うるさっ。で、来るの？ 来ねーの？」
「うっ………い、行く……」
「じゃ、夜にな」

「嬉しそうだね！」
「うふふ！ だから、７本じゃないって 言ったでしょ？」



終



中国のバレンタインである「情人节」は、『恋人の日』という意味だそうで。
まぁそう言うことです。





ちなみに薔薇7本は「片想い」、薔薇6本は「互いに愛し、分かち合っていきましょう」という意味だそうです。