迷い子の辿り着く場所 瓦礫の中から中也を引っ張り出し、太宰は溜息を吐いた。
いくらなんでもやり過ぎだ、この莫迦。
腹いせに頭を殴る。
中也は呻き声を漏らしたが、起きる気配は無い。
月明かりに照らされる光景を太宰は一人眺めた。
此処に居た人間は一人残らず死んだか、消失した。
ポートマフィアの威光を知らしめろと森が下した命令は達成された。
良くも悪くもこの噂は広まるだろう。
「僕、疲れたぁ」
太宰は伸びをして、空を見上げる。
視界に入った月に、何か、不自然に浮かぶものが見えた。
「……なにあれ」
凝視すればそれは徐々に大きさを増し、正体がわかった時には既に遅かった。
「ッ!!」
人智を超えた速度で太宰に接近して来たそれを避ける術は無かった。
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