そして、静寂がおとずれる。 倒れ込むように辿り着き、中也は玄関ドアを蹴りつけて閉めた。
外界からの灯りが途切れ、リビングへ続く廊下から僅かに差し込んでくる光だけが頼りになった。
「……ッさい、あくだ……!」
血が混じるような声が出た。
まだ喉に何かが詰まる感覚に咳き込む。
顔に張り付くような痒みを感じて乱暴に袖で拭えば、そこにべっとりと血がついた。
「……おい、生きてっかよ」
無我夢中で引き摺って来た物体に中也は声をかける。
「……最悪だよ……」
掠れた声が応えた。
髪色のせいで闇に溶ける事のない中也とは対象的に、そこに倒れる人物は真っ黒だった。
ごほごほっと苦しそうに咳き込んだ後、荒い息遣いのまま話し出す。
「中也、森さんに連絡だ」
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