──ああ、苛苛する。
身を隠すようにその体躯を縮め、瓦礫の陰で眠るロナルド君を見つめる。
その目の下には深いクマ。
血色はすこぶる良くない。
せっかく屋根のある寝床を確保出来たというのに、休まっているふうではない。
理由は明白。
日中(常闇だが)にかけられた言葉がロナルド君を苦しめている。
──お兄ちゃんは勇者様なの?
あどけない年頃の子供の、悪意のない問。
──違うけど、そうなれるように頑張るね。
そう返したロナルド君の胸の痛み。
命を共にする私にも、その痛みは伝わる。
まだ何か言いかけたその少女を、引き剥がすように連れ去った親らしき大人。
その目に浮かぶのは、嫌悪。
結局人間は、自分が理解できないものを忌み嫌うのだ。
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