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    よだか

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    よだか

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    ようやくアカシュ出てくるところまでかけた

    アム/ロトオ/ルは見なかったことにした2安室透は見なかったことにした2



    曰く。

    『君を連れていくにあたって最低限必要なものがこれなんだ。僕も個人的に持ってきたものはあるけれど、量が多ければ安心だしね。さ、行っておいで。待ってるから』

    唐突に安室さんによって出された『課題』は、沖矢さんの元へ向かうための下準備だった。
    何故そのセレクト。
    そもそも所謂『心霊』と呼ばれるものを信じたことがない自分には沖矢さんがそういうものに巻き込まれているらしい、ということが未だに半信半疑であるし、接触するにあたって準備してこいと言われたものにもピンとこない。

    塩はわかる。でもファブリーズってなんだよ。リセッシュでもいいのかよ。その線引きはなんなんだよ。

    諸々突っ込みたいことが頭を巡っている間にさあさあと体を阿笠邸へ向けられ、背中を押された。
    言われるがまま、阿笠邸へ入れば、食事の準備をしていたのか、キッチンに灰原が立っていた。

    「子供達とポアロに行ったんじゃなかったの?」
    「いや、行ったんだけどよ…まあちょっと…色々あって今から安室さんと一緒に昴さんを見舞うことになって…」
    「…どういう風の吹き回しよ、それ」
    「俺もよくわかってなくて…とりあえず色々入り用なんだ。博士いるか?」
    「ラボで実験してると思うけど…何がいるの?」
    「…塩と、水…あとファブリーズかリセッシュ…」

    絞り出すように必要なものをそのまま伝えれば、灰原は眉間の皺を濃くした。

    「何そのラインナップ」
    「俺が知りてえよ…」

    頭を抱えながらそう言えば、深いため息を吐いた灰原はコンロの火を止め、キッチンから出てくるとラボへと足を進めながらこう言った。

    「よくわからないけれど、入り用の物も多いみたいだし手伝うわよ」



    キッチンから塩を拝借して、先にラボへ向かった灰原に続けば、彼女から既に事情を聞いたのか、大量のスプレー型消臭剤を持ち出す博士の姿があった。

    「なんだよこの量…というかなんでそんな張り切ってるんだよ博士…」

    意気揚々と詰め替えの消臭剤を両腕に抱えた博士の目はキラキラと輝いていて。
    さながら発明品を子供達に発表する時のようだ。

    「このラインナップ!新一さては心霊案件じゃな!?ワシは詳しいんじゃ!!!」
    「どういうことだよ…」

    博士曰く、学生の頃から所謂「ちゃんねる」と呼ばれる電子掲示板を眺めるのが息抜きで。
    信じる・信じないは置いておいて、ホラースレッドというものが特段好きでよく見ていたらしい。
    そういった界隈では塩や塩水はもちろんだが、ファブリーズやリセッシュといったスプレー系消臭剤もそういったものに効くとされていたのだという。
    …本当だろうか。
    大量の消臭剤をどっさりと置いたまま、あとはこんなものも効く、これもいるのではないか、ついでにこの発明品を持っていけ、とヒートアップしていく博士を尻目にちゃんねるとやらが気になったのか、灰原はネットでホラースレッドを漁っていた。
    なんだこの状況。

    「おいおい、こんな量持ちきれねえよ…というかそもそもこんなもんが効くのかよ…居るともしれないもんに…」
    「信ずる者は救われる、じゃよ、新一。ワシは科学を修めてきた人間じゃから、理論として説明できないものを信じきれないという気持ちは充分理解しとるよ。ただ、『そういったものは居ない、存在しない』とも言い切れんじゃろ」
    「存在することを証明できないけれど、同時に存在しないことも証明できないー確かに博士がこういうのにハマる気持ち、少しわかるかも」
    「おいおい灰原まで何を…」

    パソコンへ向かっていた灰原が笑みを浮かべながら、足元に落ちていた消臭剤をいくつか拾って差し出してきた。

    「ねえ、これ各社のやつ持って行ってどれが効果強かったか調べてきてよ。面白そうだし」
    「お前なあ…」



    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



    「随分な大荷物だ。遠足に行くみたいで小学生らしくていいね」

    博士と灰原に持たされた大荷物を背中に背負い、工藤邸前に立っていた安室さんに声をかければクスクスと笑いながらそう返された。

    「…安室さんは随分身軽だけど、それで大丈夫なの」
    「僕は耐性が強いらしくてね。余程のことが無ければ大丈夫とのお墨付きをもらってるからそこまで準備はいらないんだ。とはいえ君は未知数だし何より子供だからね。念には念を、ってやつだよ」
    「子供だとなにか問題あるの」
    「ほら、七つまでは神の子って言うだろうまああれは子供の生存率が低かった時代にそれを表す言葉としての側面が強いとされているけれど…実際干渉は受けやすいらしいからね」

    そう言いながら安室さんはポケットから小さなスプレーを出した。

    「それファブリーズ」
    「いや。お清めスプレー」
    「おきよめすぷれー」
    「霊験あらたかだよ。お伊勢さんのやつだから」

    シュッシュと僕にお清めスプレーをかけたあと、自分にも念の為、とスプレーをかけている安室さんをじとりと見ていれば、『君もファブリーズか何かすぐに使えるように出しておいてね』と釘を刺された。
    しぶしぶリュックから博士と灰原に持たされたものを出し、首からかけて安室さんに向き直れば案の定彼は黙って小さく震えながら、腹を抑えてしゃがみ込んだ。

    「…笑うならいっその事ちゃんと笑ってよ。ファンも着いてるし広範囲に広がっていいだろうって持たされたのがこれなんだから仕方ないでしょ」
    「いや、ごめん…普段の君を見てると小学生であることをついつい失念しがちなんだけど、こうしてみると本当に小学生の男の子だね…ミニオン好きなの」

    ーそう。
    灰原と博士に持たされたのは2人によって消臭剤に耐えられるように改造が施された某テーマパークで夏場に売られるファン付きのスプレーボトル。
    ネックストラップも着いている上にファンがあることで便利だろうと押し付けられたのだ。

    しかもミニオン。

    震えながら「小さくてメガネかけてるしちょこちょこ動く感じが君に似てていいと思う」と自分で言ってツボにはいったのか更に笑いが止まらなくなる安室さんの背中をぺちりと叩けば、ごめんごめん、と笑いながら謝られた。

    「いっその事被り物もつけてきてくれたらよかったのに。心底心外だけどアイツの生存を確認しにいかなきゃならないこの状況で、いい清涼剤になると思うんだけどなあ」

    ちなみに僕はどっちかと言えば犬派だからスヌーピーが好きかな、と言いながら立ち上がってさっさと門扉を開けた安室さんはズカズカと工藤邸へと足を進める。
    慌てて追いかければ、玄関の扉の前で立ち止まった。

    「コナンくん、それ一瞬貸してくれない」
    「え、スプレーいいけどどうしたの」

    首から提げていたミニオンスプレーを手渡せば、安室さんはそのまま玄関扉の横にある窓の付近へと向けて吹き付けた。

    「さっき言ったと思うけど、ここに1匹張り付いてるんだ。…カウントの仕方が匹で合ってるのかとかは突っ込まないでくれると助かる」

    そう言ってスプレーを手渡してきながら鍵を貸してくれという安室さんに鍵を手渡す。
    ふと、なんとなくスプレーが吹き付けられた箇所を見れば、スプレーの散った跡の中にくっきりと足型の空白ができていた。

    ー安室さんの言う通り、ここに、何かがいたのだ。

    そう頭が理解した瞬間に背筋にぞくりと冷たいものが走った気がした。

    ーなにが『存在することを証明できないけれど、同時に存在しないことも証明できない』だ。

    たった今、見えない何かがそばにいると自分で確信してしまった事実に足元がグラつくような感覚がする。
    唐突にポンと肩に置かれた手に驚いて振り返れば、少し困った顔の安室さんがそっと頭を撫でた。

    「無理しなくていいよ。今からでも遅くないから帰りなさい」
    「…いや、行く。昴さんの身に何が起こってるのか、ちゃんと知りたい」

    ぶんぶんと頭を振って、しっかと安室さんの手を握れば深いため息をついて安室さんは扉の向こうへと目を向けた。

    「わかったよ。じゃあ、行こうか」



    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



    ギィ、と重い音を立てて開いた扉の音にこれほどまでに恐怖したことがあっただろうか。
    ここ暫く生活している家はここではないけれど、慣れ親しんだ自分の家だというのに、ずっと背筋を何か寒いものに撫でられているような、なにかに品定めするように見られているような。
    そんな気配がして後ろを振り返ることが怖い。
    咄嗟に横にいた安室さんの服の袖をぎゅっと掴めば、安室さんは困ったように笑った。

    「コナンくん、見えはしないけどやばいものは本能的にわかるタイプかもね」

    そういうと、安室さんは家の奥のほうへ向かって声をかけた。

    「そこにいるんでしょう。随分と面倒なことになってますね」

    ビクリ、と肩を震わせて勢いよく安室さんが声をかけた方向を見れば、随分とやつれた赤井さんが壁にもたれかかってこちらを睨んでいた。
    家の中だとはいえ、誰かに顔を見せるときは沖矢昴の格好をしていることがほとんどだったというのに、変装すら施せず、服もおざなりな様子だ。

    ーこんな状態になっていたのか。

    「何の用だ」

    普段、何事にも動じず余裕そうな赤井さんには珍しく、随分といら立っているような雰囲気に恐怖して一歩後ずされば、安室さんは眉間にしわを寄せた。

    「貴方のことを随分と心配した子供になんてこと言うんですか。怯えさせるような悪辣な顔しないでくださいよ、趣味の悪い」

    大きなため息をつきながらずかずかと赤井さんに近づいていく安室さんを止められるわけもなく。だからと言って手を放すほどの勇気も出ず。
    引きずられるように赤井さんの目と鼻の先へたどり着けば、背中に感じる視線が強くなったような気がして冷汗が噴き出る。

    「あは、こりゃすごい。随分とやられてますね。貴方それ立ってるのもやっとなんでしょう」

    ぜえぜえと苦しそうに息をする赤井さんを見つめる安室さんは口先では随分と軽い口調で話しているが、目が笑っていない。

    「いいから帰れ。この通り気が立ってるんだ」
    「おお怖い。貴方それ自分だけでどうにかできるとでも思ってるんですか?こんな異常なことになっておいて」
    「しつこいぞ、安室君」
    「うーん、女性だなあこれは。やっぱり痴情の縺れか。どっかで派手に女遊びでもしました?」
    「Get the fuck out」
    「わあすごい、four-letter wordだ。面白いぐらい気が立ってますね。あんまり暴れるとほら」

    声を荒げた赤井さんの体がグラリ、と揺れる。
    見越していたかのようにすかさず赤井さんの身体を支えた安室さんは大きなため息をついた。

    「コナン君、お風呂場の場所わかるかな?お湯溜めてほしいんだけど」
    「え、うん、わかる。溜めてくる」
    「あとそのリュックの中、阿笠博士がいろいろ準備してくださったんだよね?もしかしてなんだけどバスソルトとか入ってない?もし入ってたらそれお風呂に入れて。なければ塩でいい」
    「わかった!」

    煽るような口調とは裏腹に、案外優しく赤井さんを床に座らせる安室さんを尻目に、風呂場へ向かって走る。

    ー怖くないったら怖くない

    そう自分に言い聞かせながら。

    安室さんが言った通り、リュックに入っていたバスソルトをお湯に突っ込み、ある程度溜まった湯を確認して安室さんを大声で呼べば、今行くよ、と返事が聞こえた。
    しばらく待っていれば、安室さんが赤井さんに肩を貸しながら半ば引きずるように風呂場へとやってきた。

    「あー重たい。歩けないなら歩けないでせめてその長い脚どうにかしてもらえます?引っかかって鬱陶しい」
    「それは、俺の、親に、言ってくれ」
    「お、言い返す余力が生まれている。重畳重畳。さ、このまま湯に突っ込みますよ。男の服を剥く趣味はないので」

    そういうと安室さんは乱雑にバスタブの中へと赤井さんを放り込んだ。

    「ちょ、安室さん赤井さん溺れたらどうするの」
    「大丈夫だよ、この男無駄にしぶといし」

    言い争っていれば、ざばり、と音を立ててお湯の中から赤井さんが頭を出した。

    「…傷害未遂で訴えていいか?」
    「助けてもらっておいてよくそんなことが言えたな。訴えたいなら自国に帰れFBI」



    先ほどの険しい顔が嘘のようにいつも通りの様子に戻ったらしい赤井さんは水を吸った服の袖を鬱陶しそうに捲りながら湯に浸かっている。
    その横で安室さんがせっせと洗面器にお湯をためて塩を溶かしている。

    「安室君それは?」
    「今から貴方にぶっかける分の塩水ですけど」

    状況がわからない、とありありと顔に書いてある赤井さんに全く何も気にしていないらしい安室さんが『頭流しますね~』と美容師のような声音で声をかけながらザバリと赤井さんの頭から塩水(湯?)をかける。
    口に入ったのか赤井さんはしょっぱい、という顔で固まっていた。

    「よかった、赤井さんだいぶ良くなったみたいで」
    「さっきまでの身体の重さが嘘のようだ。助かった、安室君」
    「あ、勘違いしないでほしいんですけどそれでどうにかなったわけじゃないですから。貴方に話を聞かなきゃ始まらないので口が利ける程度になってもらうための一時的な処置です」
    「…このままこの湯に浸かっておけばどうにかなったりするか…?」
    「止めはしませんけど、皮膚のふやけが進行するのと比例してじわじわ元の状態に戻っていくだけですよ」
    「それは困ったな」
    「人魚にでも転職したらどうです?ふやけなくなるかもですよ」
    「困ってるのはそっちではないんだが」
    「ねえ、ちょっと話逸れ過ぎじゃない?これからどうすればいいの?」

    堪り兼ねてそう口を挟めば、赤井さんはのんびりとそれはそうだな、とつぶやいた。

    「まあそうだね、一旦諸々話を聞くとしようか」

    大きなため息をついて、風呂用の椅子に腰かけた安室さんは、赤井さんに向き直るとこう言った。

    「僕が貴方の異常に気付いたのは一週間ほど前。その近辺で何か変わったことはありませんでしたか」



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