交わって、溶けて、ひとつとなる。この状況の説明がほしい。
いや、理解はしている。
ここはダイの部屋。
今お互いにベッドの上で正座をし、向かい合っている。
お互いの間にはコンドームが一箱と、ローションが一本。
今日は週末。
"多少無理をしても明日には響かない"。
割と早い段階で""二度目のソレ"はやってきた。
なんだか精の付きそうな夕飯が出てきたとは思ったが、まさかそれを合図に夕飯にありつく前に「今日はお前とえっちしたいから」と言われるとは普通の人間なら思うまい。
それはまぁ、相手は若人だし?
こちらも求められれば悪い気はしないし?
ただなんだかんだと今日まで、相変わらず"昔なじみの相棒"と過ごしてきたことが災いしてか。
言われればそこで改めて"恋仲"になったことを思い出し、気付かされる。
日常を普通に過ごす感覚は本当に兄弟のような、友達のような。"ソレ"を忘れてしまうほどにお互い『昔』の様に過ごしているのだ。
今にも爆発四散しそうな鼓動をさせる俺の心臓は「自己犠牲呪文」を唱える間際の如くの暴れっぷりを発揮している。いのちをだいじにしたい。
申し出を行ったダイはと言うと、意外にも全身に力が入っており、ただじっと両の拳を膝の上に置いておとなしく座っている。視線を泳がせてこちらの様子を伺っては、ちらちらとコンドームとローションと俺とを目線が行き来していた。
しばらく沈黙が続く。
頭の中でゴメを数十匹数え終えた頃、ようやっとダイが口を開いた。
「えっと、抱く、から」
勘弁してくれ。
なんで改まって宣言するんだ。
もっと意識してしまうじゃないか。
それとなく雰囲気に飲まれていれば、ここまで意識したりせずに済んだのに!
意を決した様に、ダイは手をこちらに伸ばす。
その手の行方を追って、俺の視線が手に釘付けになる。
ダイの親指が、軽く唇に触れた。
たったそれだけなのに、切なさで胸がつまり、自分の目が潤む。
かすかに漏れる自身の吐息に困惑する。
こんな熱の篭った呼吸なんて、生きてきた中でしたことがないのに。
息を呑んだあとに口から漏れでたのは、恋人に抱かれる悦びを知ってしまった身体を制することが出来なくなり始めた人間のはしたない声だ。
「はっ、あ」
自分の喉から出た声にはもう驚かなかった。
それよりもこれからまた乱され掻き回される自身の姿を想像して酷く興奮してしまう。
このあと、どうなるかを知っている。
自分がどうなるか。
どう息をするのか。
どう身をよじるのか。
どのようにシーツを摑むのか。
どのように、乱れて狂わされてしまうのか。
そう思うと目眩がして頭もくらくらする。
規則正しく息をすることは等に叶わず、すでに小さく浅い呼吸を繰り返す。
熱を孕んだ声で思わず名前を呼んだ。
「ダイ」
こちらをまっすぐ見ていた向日葵が、僅かに蒼みを帯びて妖しく光る。
「そんなえっちな声で名前呼ばないでよ、ポップ。意地悪したくなっちゃうじゃないか」
そう言うと、俺の顎を持ち上げて、そして。
さて。
この二度目の営みでコンドームを一箱使いきったかどうかは、想像にお任せする。