「食事はみんなで摂るんですよ」
シンクレアが言うとヒースクリフは不満気に鼻を鳴らした。
「まどろっこしいことこの上ねぇんだけどな」
「まぁ、作ってるのはおちびちゃんだからね〜。シェフの言うことには従わないと」
戦闘能力のないシンクレアは調理などの雑務を担うことで間接的に連合の活動に貢献していた。EGO装備を入手して解放運動そのものに参加するようになってからも、料理はシンクレアの担当のままだった。
……交代できる人員がいないのだ。まさか食中毒で全滅などという情けない事態を引き起こすわけにはいかない。
もうちょいなんか書く
ヒースとイシュの口喧嘩
「け、喧嘩するようなら肉抜きにしますからね……!」
シンクレアのこの言葉は随分効いたようで、ヒースクリフとイシュメールは口をつぐんだ。叱られた子供のようにおとなしくなった二人を見て、ケラケラとロージャが囃し立てる。
「お肉を盾にされちゃ仕方ないよね〜。あ!おちびちゃん、もしその二人の肉が余ったら私のとこに入れてね」
ぎろり、とヒースクリフが睨むがロージャはどこ吹く風だ。気にすることなくシンクレアに昼食のメニューを聞いている。
その様子を見て、ホンルは心底不思議そうに口を開いた。
「みなさん……肉をよっぽど愛してるんですね〜」
「嫌いなやつはいねぇだろ」
だから抜くんじゃねぇぞ、とシンクレアに釘を刺しながらヒースクリフが答え、イシュメールが続ける。
「いないってわけじゃないとは思いますけど。まぁ、この中にはいませんね」
「愛してるも愛してるわよ〜。肉があるだけでサイッコーな気分になるんだから」
それから、肉の素晴らしさを口々に讃えあう。
ホンルを驚かせたのは、ヒースクリフとロージャが肉に関してだけはK社の技術を褒めるような発言をしたことだ。シンクレアとイシュメールが難色を示したことで、すぐに肉の味の話に戻ったものの、憎しみすらも凌駕する肉への欲求はホンルには理解できないものだった。
ホンルにとって食事は作業でしかなかった。栄養分の経口補給は非効率的であると廃止されて久しい。
培養槽の中で適切な補給を決まった時間に受けることがホンルにとっての食事だ。好き嫌いの入り込む余地はない。
後日
「……おい、それ食わねぇのか?」
ヒースクリフがホンルの皿を指差す。そこには、綺麗にピーマンばかりが残っていた。
「ピーマンが嫌いだったんですか?」
シンクレアの言葉にホンルは首を傾げる。嫌いだという自覚はない、ただ……
「そういえば、あまり食べたくなかった気がします」
食べる気にならなくて避けているうちにこれだけが残ってしまったのだ。どうするべきか、とぼんやり皿の中のピーマンを見下ろすホンルの目の前にフォークが二本飛び込んできた。
「ったく、ガキかよ?」
「いらないならもらっちゃうからね〜」
さくさくと次々にフォークに刺さっては口の中に運び込まれていくピーマンたち。
なんかもうちょいかく
その次の食事では、ホンルの皿にピーマンは僅か二切れが乗っていただけだった。