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    fraise_12s2

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    fraise_12s2

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    ○一左馬(1⃣はあまり出てきません)
    ※サイコパス。監禁。記憶喪失。メリバ。
    足りない色を探すサマ様と、兄の幸せを願う三男のお話。この後、幸せに山田家で🐴は仲良く過ごします。
    🐴→弱ってる。3️⃣→狂ってる。

    『鳥籠に兄の幸福を。』「ア"?」

    唐突に疑問が胸に生まれ、声が出る。
    俺は何かを忘れているような気がする。
    大事なことだったと思うがなんだったけかな。

    周囲に自分以外の人間は誰もおらず、何も無い空間。唯一目の前には、ピンクに緑、青に黄色。カラフルな色の硝子玉がキラキラと輝いて転がっている。
    綺麗なはずなのに、どこか物足りない。
    何がないのか分からず不安と焦りだけが募り、段々と息苦しくなってきた俺はゆっくりと意識を手放した。










    カチコチ、カチカチ。カチコチ、カチカチ。



    秒針の音が耳につき、目を開けると、時計の音だけが響く真っ白な空間。



    俺はさっきまで何かを必死に探し求めていたような気がするが、それは果たしてなんだったか。
    何も思い出せないが、なんとなく大切なことだった気がする。忘れてはいけない気がするそれを思い出すために、先程まで見ていた夢での出来事について、ゆっくりと思考を巡らす。



    カチコチ、カチカチ。カチコチ、カチカチ。



    ......あぁ、そういえば、ここはどこだろうか。
    辺りを見渡しても何も無い部屋。
    真っ白に統一された壁に床。大きな時計に今俺が寝ているベッドがあるのみ。
    そんな真っ白な空間の中に唯一違う色である黒の枷。
    すこし動くと、手首と足首についている鎖がジャラジャラと音を立てる。

    鎖は長く部屋を自由に歩き回ることが出来たのでベッドから降りて少し部屋を観察してみる。壁へと近づいてみると、壁と同じ色で遠目からは分からなかったが部屋を出入りするための扉があった。ただ、その扉まではわずかに届かないようだ。
    まぁ、特に急ぎの用事も思い当たらないし、出る必要もないからいいけどよ。
    しかし、一体なぜ俺はこんな所にいるのか。疑問ばかりが増えていくが、答えを見つけるには手がかりが少なすぎる。それになんだか考えることも億劫になってきて、なにもする気にならなかった。







    カチコチ、カチカチ。カチコチ、カチカチ。








    あぁ、暇だ。







    誰もいない、静かな空間は落ち着かねぇ。









    一人で居るのは嫌だ…。













    ガチャ。




    あれからどれくらい経ったのか。
    再びベッドで横になり、ぼーっとしていると、時計の秒針を刻む音とは違う、扉の開いた音が聞こえた。

    「左馬刻、ただいま。いいこにしてたか?」

    声のした方へとゆっくりと視線を向ける。
    目に飛び込んだのは生命力を感じる血のように真っ赤な瞳。そして宝石のように輝く、力強く鮮やかな深碧の瞳。


    あぁ、これだ。
    俺が夢の中で欲していたものは青でも、ピンクでも黄色でもない。この綺麗な赤と深碧だったのだ。

    二色の珍しく美しい瞳を持つ彼が、大きな手で髪を撫でてくれる。

    「寂しい思いをさせて悪かったな。これからはずっとアンタの傍にいるぜ。」

    そうか、俺は寂しかったのかもしれない。彼の言葉が腑に落ちる。その優しい声と手に愛おしさが込み上げ、撫でてくれる手に小さく擦り寄る。




    カチコチ、カチカチ。カチコチ、カチカチ。



    あぁ、やっと見つけた欲しい色。
    俺が探し求めていた彼はずっと一緒に居てくれると言ってくれた。その言葉に安心したからか、なんだか眠くなってきやがった。

    また起きた時、綺麗な瞳の彼を見失わないように。そんな想いから、撫でてくれていた手を、もう離れていかないようにと掴んで眠りについた。





    おやすみなさい。








    カチコチ、カチカチ。カチコチ、カチカチ。
    秒針の響く音。




    ガチャ




    「あれ、左馬刻さん眠っちゃったの?」

    「おい、声が大きいんだよ!もっと静かにできないのか低脳。」

    飲み物や果物などの差し入れを持って、扉から入ってきた二郎が眠った左馬刻に近寄り、その後ろから声が大きいと三郎が怒りながらも左馬刻の様子を伺っている。

    「あぁ、安心して眠りについたぜ。」

    弟たちに答えながら微笑み、一郎は左馬刻の額にキスを落とす。今は閉ざされた硝子玉のような赤い瞳を持つ彼を愛おしげに撫でながら答える。


    その様子を見ながら三郎は、ここに左馬刻を連れてきた頃のことを思い出す。






    中王区崩壊後、色々時間をかけて話し合った結果いち兄と左馬刻さんは和解した。
    それからは嘘のように頻繁に連絡を取り合っていたようで、今日はこんなことをした、こんな話で盛り上がったなど左馬刻さんとの出来事を嬉しそうにいち兄は話してくれるようになった。
    その後、しばらくしてお付き合いをすることになったと報告を受けた時は、複雑だったし理解が出来なかった。でも、付き合ってから山田家に遊びに来ることも増え、何度も左馬刻さんと会って話していく内に人柄を知っていき、少しずつ受け入れられるようになっていった。
    なによりも左馬刻さんと一緒に居るいち兄の嬉しそうな顔を見ると否定なんてできなかった。いままで何度も自分のことよりも僕たちのことを優先してしまういち兄には心から幸せになって欲しかった。




    いち兄は優しい。

    僕たち家族や自分の枠組みに入れた人間を大切にする。そして、自分のこと以上に相手のことを想って傷ついたり、喜んだりと感情を動かしてしまう。そんな尊敬できる兄は左馬刻さんのことも僕たち家族同然のように大切にしていて、さらに家族愛とは別の特別な感情までも持ち合わせている。

    その左馬刻さんは僕や二郎にとって面倒見がいい、もう一人の兄のような存在であったが、決して僕たちと積極的に深く関わろうとはしなかった。外では必要以上に会わないし、仕事のことも決して話さない。一度、敵対している組織との抗争に巻き込まれて、重症を負ったらしく、まだ左馬刻さんを攻撃した残党が捕まっていなかったこともあり3ヶ月程連絡が途絶えた。
    こちらからの連絡手段はなく、いち兄は突然連絡がつかなくなった左馬刻さんを心配して、夜遅くまで少しでも左馬刻さんの安否がわかる手がかりがないか探していた。自分の前から突然いなくなったこともあり、もう会えないのではないかと不安と焦燥感からか僕たちの前では気丈に振る舞ってはいたが、心も身体もボロボロに傷ついているのは明白であった。僕たちに心配かけまいといつも通りに過ごそうとするいち兄の姿は見ていてとても辛かった。
    きっともういち兄は左馬刻さんが傍にいないと心からの笑顔を浮かべることはなく、幸せにはなれないのだろう。

    それからしばらくして、身体が回復し組織同士のごたごたも片付いたからか、何事も無かったかのようにふらりと現れてまた左馬刻さんと会うことが出来るようになっていった。だが、きっとこれからまた何度もこんな風に突然消えることがあるのだろう。
    山田家に左馬刻さんは絶対に私物を置いていかないし、お皿やコップなど日用品を左馬刻さん専用の物として用意させてくれない。過去に一度用意したことはあったが壊されてしまった。その時はあんまりな行いに、壊すことないじゃないかと反論しようとしたが、その時誰よりも傷ついた表情を浮かべる左馬刻さんをみて何も言えなくなってしまった。それ以来、左馬刻さん専用の物を用意することはなくなり、お客様共有の物を使っている。

    それはきっといつでも消えられるようになのだろうとなんとなく察している。
    裏社会で生きる人間はいつ死ぬかわからないし、それに僕たちを巻き込まないために、いつでも縁を切れるようにとしているんだろう。
    彼もまたいち兄と同じように優しい人間なのだ。

    ふとした時、近い将来僕たちの前から本当にいなくなってしまうんじゃないかと怖くなった。

    いつかいなくなってしまうのなら、その前に僕たちの元に繋ぎとめておかなければ。いち兄の幸せのために彼は必要不可欠なのだ。
    例えば、鳥を鳥籠に閉じ込めるように。
    自由にどこにでも飛んでいってしまう鳥には鳥籠が必要である。当たり前のことだったのだ。

    そう結論づけた僕の行動は早かった。


    まずは、ネットで誰にも見つからないような土地の物件を探した。
    部屋が準備できると、二郎もいち兄も不在の時に「相談したいことがある。」とつたえて、部屋へと招待した。その際に出したお茶に睡眠薬と弛緩剤を混ぜて、薬が効いた所でベッドへと移動させて枷を填めた。




    ああ、これで安心出来る。




    次の日、目を覚ました左馬刻さんは怒り狂った。
    俺がいち兄の幸せのためには必要なことなのだと必死に説明しても「わけわかんねぇこと抜かしてんな!」「俺様に舐めた真似してんじゃねぇぞクソガキ!」と叫び、自身の身体に跡が残るのも構わずに暴れ回った。

    その後はなんとか落ち着いてもらえたが、話しかけても返事をしてもらえず、目も合わせてもらえない。食事にもあまり手をつけず、段々とやつれていく姿を見るのはとても心が傷んだが、いつか左馬刻さんならわかってくれると信じて待った。






    鳥籠に閉じ込めてから5ヶ月。




    ついに左馬刻さんがわかってくれた。



    だが、左馬刻さんは、ここに連れてこられる以前の『記憶』を無くしてしまったようだ。
    とある経路から入手した違法なヒプノシスマイクを使って、少し精神干渉をしたからだろう。そうしないと彼は意志を変えてくれなかったため仕方なく少し強引な手を使った。
    ただ、マイクを使っても精神力が強く思った以上に時間がかかってしまったのは計算外だったが。
    なぜここにいるのか、自分が誰なのかすらわからない。
    特にここに連れてこられた時の記憶は完全に無くなっている様子。

    しかし、記憶がなくても感覚で覚えているのかいち兄が部屋に入ってくると、目を見て微笑んでくれるようになった。左馬刻さんのその姿を見ていち兄は幸せそうに微笑み返していた。

    あぁ、良かった。
    いち兄の笑顔が見れて。

    左馬刻さんは現在行方不明となっている。

    相談したいことがあると呼び出したのと、山田家と関わっていることを組の人にも隠しているため、誰にも行き先を告げずに出かけてくれたおかげだ。僕は防犯カメラなどの情報を弄って彼の跡を追えないようにしたし、GPSなども徹底して消息を絶った。

    MAD TRIGGER CREWの警官と軍人は普段から連絡が取れないことは多々あったようだが、最近あまりにも長いこと連絡が取れないため異常を感じ始めたらしい。現在必死に左馬刻さんの行方を探しているようだが、事前に緻密に作戦を立てたから見つかるような証拠は残していないし、探し当てるのにはまだまだ時間がかかるだろう。まぁ、仮に見つかったとしても問題ない。
    もう、左馬刻さんには、いち兄の傍にいることがお互いの幸せなのだと理解してもらえたのだから。今は完全に壊れてしまったが、これから必要な記憶を入れて、元の左馬刻さんの人格を作っていけばいいだけなのだ。

    いち兄と二郎には左馬刻さんが組の敵対組織からの違法マイクをくらい、精神面に問題が出ているため、自傷癖などの様々な問題から鎖を仕方なく使用して閉じ込めている危険な状態であること。マイクは既に壊されていて明確な治療法はなく、極力人と関わらず安静にすることが大切であり、誰にも悟られることがないように秘密裏に隔離されているのをハッキングして見つけたことになっている。




    これでこれからは安心して、いち兄は幸せに過ごすことが出来る。
    求めていたハッピーエンドで物語りは幕を閉じるのだ。










    カチコチ、カチカチ。カチコチ、カチカチ。


    時計の音は変わらずなり響いていた。








    fin
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    B0NNoU

    DONEBy 左馬刻が長いこと贔屓にしているキャバ嬢

    一左馬/イチサマ推しのキャバ嬢にブロマイドを押し付けらる左馬刻を眺める銃兎の話。

    嬢はてでで時代から話しやすくて、ずっと贔屓にしてる子。互いに恋愛感情は無く、合歓ちゃんの扱いに困った時女心の解説をよく求めに左が通ってた。


    フォロワーさんお誕生日おめでとうイチサマの続き。前の話読まなくても大丈夫です。
    お節介「ハッ、馬鹿かよ」
    「ふふ、左馬刻くんに分かってもらえるとは思ってなかったけどはっきりそう言われちゃうと凹んじゃうわね」
    「微塵も凹んでねぇ癖によく言うぜ」

    タイトな紺のドレスを身にまとった女が口元に手を当てて笑うと、左馬刻は気分良さそうにシャンパンの入ったグラスを空にする。さすがキャバ嬢というところか。左馬刻の話を聞きながら程よく自身の話を織り交ぜて盛り上げていく手腕に銃兎はぼんやりと感心した。

    無理やり連れてこられたこの場は酷く退屈だ。二人に付いている嬢は二人とも左馬刻に夢中である。自分が構われないから暇という訳でなく、銃兎自身が構うなと隣に来た女から距離を取り逃げたからなのだが。左馬刻はそんな銃兎を愉快そうに笑ってやれやれと言わんばかりに突っぱねた女を自身の隣に座らせた。こんな事なら仕事がしたかった、と左馬刻へ冷ややかな視線を送る。そんな銃兎を無視して繰り広げられる楽しげな会話に耳を傾けながら左馬刻の反応を観察していたのだ。目の前の不機嫌な人間を空気のように扱えるのはある種の才能を感じてしまう。本人にそれを伝えるとしたら嫌味になるが。
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