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    千代子

    七五好き。

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    千代子

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    七海んお誕生日おめでとうぅぅうううぅううううぅううう!!!!!!

    ケーキトッパーズ家に帰ったらウェディングケーキがあった。
    意味がわからないと思う。
    私も意味が分からない。
    しかし、残念ながら事実である。
    疲れ目のせいかと目を擦っても消えないし、鍵が開いた時点で部屋を間違えている可能性は極めて低い。
    そして何より、三段重ねの真っ白いケーキの上に、自分と恋人を象ったケーキトッパーズが睦まじく寄り添っている。
    出張用の旅行鞄を手にしたまま深々と溜息を吐き出す。
    可能なら、溜息でこのふざけたケーキを吹き飛ばして仕舞いたい。
    「おいおいおいおいおいおい七海ぃ!せっかくのケーキを前になんて顔してんだよー」
    キッチンから出てきたやたらとテンションの高い恋人をぎろり、と睨むが、そんな事で怯むような細やかな神経はこの男には備わっていない。心底、備わっていて欲しかったが。
    「一体何事ですか、五条さん」
    「ん?お前の誕生日を祝ってやるってメッセージ送ったろ?」
    もう一度深々と溜息を吐き出す。
    確かに、メッセージは貰った。だから、嫌な予感がして釘を刺したのだ。
    『プレゼントは考えて下さらなくて結構です。料理だけお願いします』と。
    確かそのあとの五条の返事は『おっけ!じゃあご馳走とケーキ用意して待ってるね』だった。
    出張の疲れで、五条という人間の認識が明らかに甘くなっていた。ここでケーキも普通のもので、ともう一つ釘を刺さなかったのが敗因か。いや、しかし、普通……嗚呼この人に普通を求める事が最早おろかしいのか。
    がっくり肩を落とすついでに鞄をおろす。
    もう、なんでもいい。
    腹に入ってしまえば原材料は同じだ、たぶん。
    無言でスーツジャケットを脱ぎ、ネクタイを外し、ネクタイピン、カフス、腕時計と装備を解く。
    「感動して言葉も出ない?」
    「何処からくるんですか、そのポジティブ思考は」
    諦めただけです、と続ける私に彼はケラケラ楽しそうに笑って。
    「お風呂、先入ってきなよ」
    そういう、ずるい優しさを投げて寄越すのだ。



    料理はとても美味しかった。
    特に焼きたてのパンが絶品でどうしたのかと聞いたら、五条が自分で焼いたという。
    「お前拘り派だろ?
    だからさ、ちゃんと小麦粉から練って、発酵させて作ったんだからな」
    素直に感動した。そして感謝した。自分よりも多くを抱え、三足の草鞋を履きこなしている五条が、時間を割いて作ってくれた。
    それはどんなプレゼントより愛おしくて。
    勿体なくて、小さく千切ったパンを口に入れて嚙み締めると「冷めるからさっさと食えよ。まだおかわりあるから」と促されて、結果六つも食べてしまった。
    おかげで最後のウェディングケーキはかなりきつくて腹がはち切れそうだ。
    さすがの五条もあの量は無理だったと見えて、一番下の段の半分程が冷蔵庫に保管された。
    「ふぅ!」
    ぼすん、と降ってきた五条の体重にソファが揺れる。
    「すいません、片付けまで」
    「いいって!今日のお前はバースデーボーイなんだからさ」
    わしゃわしゃ、と犬でも撫でるように髪がかき回される。
    彼は整髪料をつけていない私の髪が好きだと言って、風呂上りはよくこうして私の頭を撫でる。髪が乱れるのは腹が立つが、恋人との戯れと思えば愛しくもなる。
    「しかし、これ」
    小皿に置いていたケーキトッパ―を持ち上げる。
    恋人を象ったそれは、少々デフォルメされているがよく似ている。
    「可愛らしいですね」
    小さな人形にキスを一つ。
    「あ、こら!」
    隣の彼がぷぅと頬を膨らませる。
    「どうしました?」
    「ここに!いるだろ、ホンモノが!」
    「嫉妬ですか?貴方が用意してくれたものなのに」
    笑って、丸い額に唇を寄せる。
    「確かに、貴方の方がこの人形より美味そうだ」
    高い鼻梁を甘く噛む。
    「お前っ」
    「今日は、私の好きにしても?」
    眼前の顔がぶわわ、と赤く染まる。
    「プレゼントは、いらないんじゃないのかよ……」
    「貴方がいらないとは言っていませんが?」
    右手の人形を小皿に返して恋人に体重をかける。

    図らずも、小皿の人形たちの体も重なり合っていた。
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    Replies from the creator

    recommended works

    Sssyashiro

    DONE【展示】書きたいところだけ書いたよ!
    クリスマスも正月も休みなく動いていたふたりがい~い旅館に一泊する話、じゃが疲労困憊のため温泉入っておいしいもの食ってそのまましあわせに眠るのでマジでナニも起こらないのであった(後半へ~続きたい)(いつか)
    201X / 01 / XX そういうわけだからあとでね、と一方的な通話は切られた。
     仕事を納めるなんていう概念のない労働環境への不満は数年前から諦め飲んでいるが、それにしても一級を冠するというのはこういうことか……と思い知るようなスケジュールに溜め息も出なくなっていたころだ。ついに明日から短い休暇、最後の出張先からほど近い温泉街でやっと羽が伸ばせると、夕暮れに染まる山々を車内から眺めていたところに着信あり、名前を見るなり無視もできたというのに指が動いたためにすべてが狂った。丸三日ある休みのうちどれくらいをあのひとが占めていくのか……を考えるとうんざりするのでやめる。
     多忙には慣れた。万年人手不足とは冗談ではない。しかしそう頻繁に一級、まして特級相当の呪霊が発生するわけではなく、つまりは格下呪霊を掃討する任務がどうしても多くなる。くわえて格下の場合、対象とこちらの術式の相性など考慮されるはずもなく、どう考えても私には不適任、といった任務も少なからずまわされる。相性が悪いイコール費やす労力が倍、なだけならば腹は立つが労働とはそんなもの、と割り切ることもできる。しかしこれが危険度も倍、賭ける命のも労力も倍、となることもあるのだ。そんな嫌がらせが出戻りの私に向くのにはまあ……まあ、であるが、あろうことか学生の身の上にも起こり得るクソ采配なのだから本当にクソとしか言いようがない。ただ今はあのひとが高専で教員をしているぶん、私が学生だったころよりは幾分マシになっているとは思いたい。そういう目の光らせ方をするひとなのだ、あのひとは。だから私は信用も信頼もできる。尊敬はしないが。
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