小指あぁ、死んでしまう。
死ぬなら今がいい。
熱くて苦しくて。
何よりこの美しい雄の独占欲で死ねるなら、これ程甘美な事があるだろうか。
「余所事ですか?酷い人だ」
胎の奥を熱で嬲られて、訳が分からなくなる。
堪らなくて爪を立てた広い背。
この背の椿に傷を付けるのは自分だけなのだと思うと、胸の奥がほの暗く満たされる。
事が終わった後、僕はいつも七海の左の小指を食む。
彼の左小指には第一関節が無い。
二年前だったか、七海が可愛がっていた男が組の金を持ち逃げしたせいだ。
男を捕まえた後で、七海はケジメにって。指詰めなんて、僕はいいって言ったのに。
真面目なコイツらしくて、悲しい。
だから、落とした指をさ、食べたいって思ったんだよ。
猟奇的かな?
七海に本気でドン引きされたから実行はしてないけど、こっそり保存してるのは内緒。
「悟さん」
唇から指を抜かれそうになって歯を立てる。痛かったのか眉間に皺が寄った。あ、と思う間にぐぅと指が根元まで押し込まれる。
小指でも、七海のがっしりした指は太い。
爪の無い、独特の感触で上顎を嬲られて腰が跳ねる。
緑がかった瞳に見つめられたまま。
燻っていたた熱を引き摺り出されて。また、七海の背に爪を立てた。