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    kanamisaniwa

    pixivメインに二次創作(刀剣乱舞、ツイステ、グラブル、FGO等)やってます。超雑食でオリキャラ大好き病を患う腐女子です。ポイピクにはかきかけだったりネタだけの文章を投げたいです。

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    kanamisaniwa

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    子供ネタ続き

    後に、スネージナヤの研究者はその運命の日をこう記した。
    『禍つ星の呪いが落ちてきた』
    と。

    浜に落ちたそれは水を纏い黒く禍々しい呪いの泥となってモンドを襲った。
    いち早く異常を察知した風神バルバトスとトワリンにより作られた風の障壁によって丸2日呪いの泥を押し止めたが、テイワットの人々、特にモンドの住人が事を理解するには短すぎた。
    バルバトスが力を使い尽くして自身が風となり消えたのち、呪いの泥はモンド城に迫り西風騎士団の大団長ジンを筆頭にした騎士達の奮闘をないもの同然に凪払い、飲み込み、ついにモンド城を飲み込んだ。わずかながらモンド城外に逃れた人々も、水源を伝って迫る泥から逃げ切れず、ほんの一週間の後には自由の国モンドの全土が滅びたのだった。
    モンド城の陥落頃同じように璃月港の沖に落ちた星の呪いは同じく水を纏って呪いの泥となり、やがて泥津波となって璃月港を襲った。もとより海に面した貿易港たる璃月港はモンド城のような城壁すらなく…ほんの一瞬ですべてを飲み込まれ破壊された。
    一度は神の地位を降りた璃月の守護者岩神モラクスは、この異常事態において不本意ながらも無理矢理神位を取り戻しその神力でもって呪いの泥を押し止めようと高く厚い岩の壁を築いたが、すべての海水が泥となって襲ってきているその状況ではなす術はなく、璃月港とともに沈んだという。
    同じように稲妻、スメール、フォンテーヌ、炎国…すべての国が禍つ星から落とされた呪いの泥に飲み込まれていくなか、最後に残ったのはスネージナヤだった。
    極寒の国であり季節が冬であったことから、スネージナヤにせまった泥はその水分がたどり着くまでに"凍りつき"、その動きが止まってしまったことで、スネージナヤは唯一泥の被害から免れたのだ。
    だがそれも一時のこと、スネージナヤとて夏が来れば氷は溶ける。それまでに打開策を打ち出さなくてはスネージナヤが、そしてテイワットが滅びる。
    スネージナヤの女皇は配下のファデュイ、ファトゥスのすべてを動員し、また他国から逃げ延びてきた難民達のうち神の目を持つものを召集してまで打開策を探った。
    テイワット大陸の存亡をかけた一冬の間に、確かに多くの知見が得られた。
    禍つ星から呪いが落ちる前夜に星が強くまたたくこと、それが落ちた後しばらくは星の光が弱まること、そして対抗手段たる七国全土の"対空武器"についてなど。
    だが、それをもってしても、空の上にある禍つ星を打ち落とす等前例のないことを成し遂げるには人材も時間も技術も足らなかった。
    もはや成す術なし。
    せめて残りの時間を悔いなく過ごすように、と痩せ細り気力も失せた女皇が口にしたとき、誰も声をあげることなく静かに受け入れるしかなかった。
    時は、スネージナヤに夏がくる直前の事だった。

    そんな中で、二人の青年が一つの決意とともに決死の行動にでた。
    『どんな形でも、一矢報いるまでは死ねない』
    その決意だけが、若い彼らを突き動かしていた。
    それぞれモンドと璃月の出身であり、自分達は偶然スネージナヤを訪れていたことで呪いの泥から逃れていたものの、家族も友人もいっそ故郷のすべてを殺され破壊された彼らは、それでも女皇が何かしらの反撃を計画するなら参加せんとその下知を待っていた。
    が、それももはやないならば個人であの禍つ星に復讐してやる、いや、復讐なんて大層なことができなくても『一矢報いるまでは死ねない』と足掻くことを決めたのだ。
    そして、彼らには一つだけ切り札があった。
    彼等が幼い頃迷い込んだ秘境、それは別の次元ではあるが過去の時間と繋がる不思議な扉を有するものだった。
    そして、その秘境はモンドと璃月の間にある高い山の中腹にあり、近くに水源もないことから運が良ければあの呪いの泥に飲み込まれていないかもしれない。
    だが、スネージナヤからその秘境までの道はすべて泥で塞がれているも同然、そこまで辿り着くまでに泥に飲まれて死ぬだろうと思われた。
    しかし、青年のうちの一人が半ば反則のような手段を持っていた。

    『覚えておけ。カーンルイアへ至る陰の道は星の目を持つ者にのみ開かれる。お前にはその資格がある……だが、お前が開くことがないよう願おう』

    多くの悲しみを目にし多くの罪を背負いながら、それでも慈しみ深く優しい男、ダインスレイヴはそういって影の道の使い方を青年に伝えていた。
    ダインスレイヴ自身は青年の両親とともにモンド防衛戦に参戦し泥に飲み込まれ命を落としていたため、テイワット動乱後の世界において三人しかいない星の目を持つ者、最後の一人が青年だった。

    『秘境までの道は僕が開く。最悪お前だけでも秘境に飛び込め。その後のことはわかってるな』
    『わかってる。空天の魔神を撃ち抜いた岩王帝君の弓を手に入れて、天衝山で禍つ星に向けて射つ。たとえ撃ち落とせなくても、いっそ届くことすらなくても…あの時代の人達への警告になればそれでいい』

    空天の魔神とは、魔神戦争のさなかに人間と敵対した空飛ぶ魔神であり、岩神モラクスがその神弓でもって打ち緒としたという伝説の存在だった。
    そして、その神弓は魔神戦争後璃月人によって神の御物として崇められ神殿を築き安置された。今となっては伝説ごと廃れその神殿の場所すら明らかではない。
    そのはずだったが、青年の護衛としてスネージナヤを訪れていたことで生き残った璃月の仙、魔神戦争においてモラクスに従った降魔大聖によってその存在がスネージナヤの女皇達生存者に知らされたのだ。
    そして彼は決死の覚悟でその弓を手に入れるために安全なスネージナヤから泥に沈んだ璃月に戻っていった。しかし、スネージナヤに彼が、ショウが戻ることはなかった。
    だが、遺跡の場所を知ることが出来たことで、この青年達の一矢につながる可能性を残してくれたのだ。

    『ああ、そうだ。…たとえ撃ち落としたところで、"僕達の世界の変わらない"。ならば、せめて別の次元ででも一矢報いてやる…!』


    □■
    「ディルックの旦那の偽物が出た?!」

    「もし、ディルックさんの偽物が璃月で嘘の契約とか結んだら、ディルックさんが大変なことになるんじゃ」
    「流石に直接責任を取るようなことにはならないよ。だけど、悪評に繋がりかねないね。アカツキワイナリーは璃月でも少しずつ名前が有名になり始めていて、しかも凝光が直接投資に乗り気だと噂になってる大注目の投資株だ」

    「そのそっくりさんが外見を利用して悪巧みしてる偽物なら千岩軍に通報すればいい。けれど、どうもその本人は毎回「人違いです!」と否定しているらしい」
    「うんんん??」

    エンヒの話がわからず、空とパイモンが首をかしげた。
    てっきりディルックに似ている外見を利用して悪巧みする悪党の話だと思っていたが、どうも方向性が違うらしい。

    「それは…他人の空似、じゃないの??」
    「私もそうおもう。だけど、一人二人のことじゃなく市中の噂になる程、"間違われて"いるわけだ。単なる他人の空似にしては噂が大きすぎるし、なによりそこまで似てるならそれこそ身内とかじゃないかと。それで、君達に頼んで"本物"を紹介して貰ったわけだ」

    「その偽物、いや、僕に外見が酷似している第三者の年齢はわかるだろうか」
    「年齢?いや、流石にそこまでは。だけど、モンドと取引があって君とも挨拶したことがある商人が間違えて声をかけたと言っていたくらいだ。少なくとも君と変わらない年頃に見える程度の年齢のはずだよ」
    「……そうなると、いよいよ僕には思い当たる所はないな。ラグヴィンドの一族は僕の祖父の代に伝染病が流行って殆んど血が絶えているんだ。傍系の縁戚は数えるくらいで、そのなかに僕と同じ年代で赤毛の男はいない」
    「なる程ね。」


    「おーい!ディルックの旦那ー!エンヒが腹ごしらえにモラミート奢ってくれたから一つ、」
    「違います!!人違いです!!!」
    「ふぉわぁっ?!?!」

    赤い髪、細く端正な顔、良く通る声、しっかりとした長身の体躯、身に纏う黒を基調にした仕立ての良い服。
    どこをどうみても"ディルック・ラグヴィンド"だった。
    混乱した空だったが、
    赤い目の中に浮かぶ星。

    「………あっ?!ステラ君?!!おおおおおきくなったね?!!」
    「はい!そうです、ステラです!お久しぶりです…って、空さんはお変わりないようで。というか、前に僕が"こちら"に来てからどれくらい時間がたってますか?」
    「半年、くらいかなぁ」
    「僕の方では10年たってます…」
    「大きくなるはずだねぇ…」




    「岩王帝君の弓、使ってみたかったけどこれは諦めるしかないかな」

    タルタリヤは手持ちの水を飲みつつぼやいた。

    事前に元の持ち主であるモラクス、もとい鍾離に弓について尋ねたところ、

    『あの弓は、魔神を倒した記念碑として祀りたいと当時の民に乞われて与えたものだ。すでに祀る者がいないなら好きにするといい。ただし、碑から持ちだせれば、な』

    とさらりと言われ、了承を取ったと思ってはりきったのもつかの間、碑の封印が解けず丸二日立ち往生している状態だ。

    フードの人物が碑に手をかざす。すると岩元素が浮かび上がり複雑に重なりあった菱形が空中を踊るように浮遊した。

    「よし!」
    「いや、よしじゃないんだよね、こっちとしては」
    「わっ?!」

    「うぉわぁぁぁっ?!」
    「え、なに…そこまで絶叫すること?ここに来るのに表のファデュイを倒すかすり抜けるかしたはずだろ?」

    フードの人物の声の高さ的に下手したら少年か?と軽薄な口調の裏でタルタリヤは慎重に彼を観察する。
    一方、フードの男は動揺丸出しでとんちんかんなことを叫びだした。

    「ほ、本当に男の人だ?!」
    「ーーーはぁ?俺をどう見れば女に見えるわけ?」

    ちょっと本当に頭がおかしいのか?とタルタリヤが疑い始めるなか、彼はあわあわと慌てながらなにやらいいつのりはじめた。

    「いや!貴方がそうっていうわけじゃなくて、でも、あの…、す、ステラ兄ちゃん!助けて、って今璃月港だ!」
    「……ステラ?」

    男から出てきた名前にタルタリヤは眉をひそめた。

    「そのステラって、赤髪赤目で瞳に星が入ってる?」
    「そう、そうだよ!なら俺のことも知ってるはず!」
    「?」

    「俺はステファン!子供、どっちかというと幼児の頃に貴方に会ってる!えーっと、別次元の女性の貴方と父様、ええっとこっちでは鍾離先生の子供!なん、だけど」

    フードを取り払った男は、青年というにはまだ少し早くしかし少年というほど幼くもない、まさに大人の階段を駆け上がる真っ只中の年頃だった。
    その全体的な雰囲気はタルタリヤに良く似ていた。特に幼さが残る顔の作りは明らかに血縁者だとわかるほどだ。だが、黄味がかった肌の色や濡れ羽色の黒髪が毛先にかけて大地の茶に変わっている所などは鍾離に非常によく似ていた。
    何より決定的なのは、左右の目の色だ。
    右が青で左が琥珀のオッドアイ。

    タルタリヤはあまりの事に間抜けにもあんぐりと口を開けて固まったのだった。

    ■□

    空のツボに関係者一同、といっても空とパイモン以外はディルック、ガイア、タルタリヤそして鍾離という両親勢揃いでリビングに集まることになった。



    「父さんがつけた璃月人としての名前もあるよ。輝頌(キショウ)だ」
    「おお、我ながら良き名をつけたな」
    「ちなみに、意味は?」
    「輝かしく褒め称えられる者、くらいの意味だな」
    「……期待が重くない??」
    「子の名には期待を込めるものだろう?」
    「そうだけどさぁ…」

    「そんなことを言い始めたら、女皇様がつけた『ステファン』も神冠って意味だから期待しかないよタルタリヤさん。魔神、というか七神は名前に期待を込めるのが好きみたいだ」
    「えっ?!女皇様がつけてくださったの?!」
    「む…」

    「ステファンの名前は沢山あるので…今でこそ璃月では輝頌、それ以外ではステファンで通ってるけど、昔は色んな名前で呼ばれて本人が混乱していたし…まあ、全部愛情ありきだから」
    「?????」

    「俺の名前全部言うと、ステファン・輝頌・マトヴェイ・ルドルフ・アレクサンドル・明綴・玉皇なんだ」
    「なっが!!!なんでそんなことになったてんの…」
    「俺が生まれたとき、色んな人がお祝いで名前をくれたから。順番に、女皇様、父様、母様、お爺様とお婆様、テウセル叔父様、璃月七星、三眼五顕仙人」









    『この世界は"持ってる"。あと少し僕達が来るのがズレていたら手遅れだった。
    最初の一撃だけは絶対に僕が焼き滅ぼしてみせる。例え命と引き換えにしても。この役割だけは譲れない。でももし、その後禍つ星が落ちずにいるなら、後の事は頼みます。この手紙の後ろに女皇様が集めた禍つ星の情報全部書き残しておくから』



    「禍つ星は呪いをおとした後に光が弱まる。それが一時的な弱体化であると推測したとすれば、帝君の弓で打ち落とすのはモンドへの最初の呪いが落ちた後が好機だ」
    「だが、その呪いが水を纏って泥となればモンドは滅びる。万が一禍つ星を打ち落とせたとしても泥が止まる保証はない…なら、落ちてきた呪いが水に触れる前に滅ぼすしかない。そのためには落ちてくるピンポイントで待ち構える必要があるな」

    「役割分担は簡単だ。ステラがモンドに落ちてきた呪いを水に触れる前に焼き付くし、ステファンが帝君の弓で矢を射て一時弱体化した禍つ星を撃ち落とす。そのタイミングは最初の呪いがモンドに落ちる時しかない」







    矢は確かに禍つ星に届いた。
    届いたが、びくともしなかったのだ。

    「まあ、そうだよね。……そうこなくっちゃ!」

    ステファンは母親譲りの戦闘狂の燐片をのぞかせて笑った。
    ステファンは無意識に水の元素を使って矢を形成し射たが、それはこの弓には不相応だ。
    タルタリヤの息子(人の子)ではなく、岩王帝君の息子(魔神)に自分自身を書き換える。
    それと同時に弓も変化した。硬く、大きく、

    真の姿となった空天落弓を引く。その手に、岩元素で黒金に染まった父と同じ腕に、岩神の血を引く魔神の体にヒビが入るのを自覚しながら、それでも強く強く弓を引き絞る。
    その弓に、矢に、自身の体に集う岩元素を一点に集中させながらステファンは叫んだ。

    「空天落弓よ、天衝山の大地よ、この地に満ちる岩元素よ、我が声に応えたまえ!我こそは岩王帝君の正当なる後継者なり!!」

    矢をつがえた手を離す。
    空へと飛び出していく頑強な岩の矢。

    ステファンは落ちていく禍つ星に中指立ててやろうと思ったが、すでに弓を放った反動で利き手の指どころか肘近くまで粉々に崩壊していた。
    すぐに全身がそうなって崩れ去るだろうとわかっているステファンはそれでも、楽しそうに最期の叫びをあげた。

    「ざまぁみろ!!!」

    自身の最期の言葉がまぎれもない『勝鬨』だったことを、ステファンは誇りに思った。


    □■

    しょりしょりしょり。

    「ほら、あーんだ」
    「…いや、あの、自分で」
    「死にかけた奴はおとなしく寝っ転がって口開けろ。ほら」
    「あーん…もぐもぐ」

    「ほら、こっちも」
    「あーん!もぐもぐもぐ」
    「こっちは素直だな」
    「食べて自分のエネルギーにしないと『くっつけた父さんの腕』がいつまでも馴染まないから。今のままだと重たくて。密度が倍以上違うから」
    「それで昨日ベッドから転げ落ちてたのか…神様の事情はわからん」


    鍾離は焦るあまり龍体となって天衝山に文字通り飛んでいき(当然ながら璃月港から丸見えであり多数の璃月の民が目撃して大騒ぎとなった。後々鍾離は事態収拾に走り回された半ギレの凝光にこれでもかと苦情を言われた)、頂上から打ち出された岩の矢が空の上にある不審な星を打ち落としたのを驚きながらも頂上にかけつけ…腕から崩壊をはじめているステファンを見つけて仰天しとっさに自身の神気を布状に織り上げそれにくるむようにして保護したのだ。
    普通の人間をそう言う風に保護すると神気に当てられて下手したら発狂するらしいが、そこは別次元とは言え実の息子なのでおくるみよろしくすっぽり収まってすやすや眠るステファンを抱き抱えて下山したのだ。
    その後も半死半生の二人のありさまに周りは半分パニックで、大急ぎで空がツボの中を病院仕様に作り変えてそこに運び込み、バーバラに頼み込んでステラを治療してもらった。
    その一方、体の崩壊こそ止まったものの矢をつがえていた右腕丸々崩れ落ちているステファン

    『モラはへそくりしておくのを忘れたのに、腕はへそくりしておいたのか…おいら神様がますますわからなくなったぞ』

    そんなパイモンの呟きに凡人一同は深く頷いたのだった。





    ※※※※※
    あとがき

    ここから入りきらなかった設定や解説など
    禍星はそれ自体に意識らしいものはない、ただそこにある『災害』。台風とか地震とか火山噴火とか、そこに意識はないけど人存在だけで間に絶大なダメージをもたらす、そういうモノです。
    ステラとステファンの禍つ星への『一矢報いる』作戦は、この時代のディルガイ+鍾タルに助力を求めない時点でリスク高過ぎで非効率的なのは本人達もわかってて無理を通してます。
    もしステラの力不足で浜に呪いが落ちたら?ステファンの弓矢が力不足かつ禍つ星に敵認定されて璃月港に早々に呪いをおとされたら?そういうリスク管理がまったくできてない、とにかく自分達が「一矢報いたい」という我が儘でかなり危険を犯してる。
    それは逆に言うと、非常時にそういう我が儘を通すくらい彼等はその時まで無条件にたっぷりと愛されて生きてきた裏返し。
    ガイアのように幼少期に親に捨てられていたら、ディルックのように父親を急になくした上で信じていた組織にその死を歪められたら、タルタリヤのように子供の頃に深淵に落ちて死にかけていたら、鍾離のように人ならざる魔神として長きの戦争を経ていたら、絶対にもっと慎重に動いたし他の仲間を巻き込んででも絶対に勝てる作戦を立てたはず。
    それをせずに両親友達故郷の復讐という感情優先で動いた(動けた)のは、それだけ失った人達から愛され過剰な苦労もなく真っ当に育ったある意味弊害だったのかもです。
    しかもメンタル的に彼等はまだどちらかというと"子供"。ステラはディルックの下でワイナリーの仕事を覚えてる頃だし、ステファンにいたっては人として生きるか魔神として生きるかも決められてない。しかもその日常がいきなり破壊されたのでメンタルも情緒もぐっちゃぐちゃ。
    そんな結果的に勝ったからよかったもののやり方が無茶苦茶なので心配割り増しであれもこれもとお土産()を詰め込んだ結果が、別れ際の餞別のツボ(中に山程の資材とモラを詰めて)でした。別次元とはいえ息子達が心配な両親()+空達仲間はこれでもか!!と詰め込んだことでしょう。それみてステラは「いくらなんでも貰えるか!!!!」と絶叫してるわけです。
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    kanamisaniwa

    MAIKING
    三ヶ月後。
    アズール先輩からの提案で参加を申請したアジーム家雇用希望者の選抜試験当日、私はジャミル先輩、エリムさん、そして面白がってついてきたフロイド先輩(本当は諸々ド素人の私を心配してついてきてくれたのをちゃんと知ってる)と一緒に熱砂の国にあるアジーム家所有の別荘の隣に設置された試験会場控えにいた。
    エリムさん曰く、アジーム家所有の不動産の中では中規模ながら市街から遠くて使い勝手が悪く最低限の手入れしかしていなかった別荘で、確かに選抜試験をするには丁度良い物件だとか。なんなら爆発させても大丈夫ですよ、と言ったエリムさんの顔はわりとまじだった。
    そしてその別荘の隣に建てられた仮設の集合場所兼待機場所で簡単な説明を受けた。といっても事前にアズール先輩が収集してくれていた情報と内容はほぼ同じで、あえて追記するなら試験会場である別荘のあちこちにライブカメラもとい監視カメラが設置されていて、その映像はリアルタイム公開されるので別荘内の様子はもとより他の参加者の様子を逐次確認できること、そして本当に魔法でもなんでも使用可、建物への損害も免責するから全力で目標を破壊してみろ、という言葉が説明担当からあったことくらい。
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