暗がりに満ちる低い囁きと甘い吐息──
夜の帳に二人の男。
馬乗りになって上下する腰を、下から伸びた手が鷲掴みにする。
「っんぁ……法正、どの、待っ」
火照った腰に"報い"の施し。
艶を帯びていく嬌声は徐庶のものだった。
仰向けの法正は妖しく笑って、彼をなお高く突き上げる。
……温和で鋭利なお前の本性、今夜も引きずり出してやる。
弓なりになって善がる背中もすかさず淫らに撫で回す。
調べの様な喘ぎ声だと胸の飾りを摘んでみれば、
遊ぶ手の甲に涙一粒。
「睨んだつもりか?その眼差しは」
弄ぶごとく問い掛ける。
徐庶は遣る瀬無く目を伏せた。
身体の悶えが止まらない。
ゾクゾク痺れて欲張りになってただひたすらに、どこまでも──貴方をより濃く感じたい。
気持ち良いものの悔しくもなって、蕩けた瞳で抗った。
強く見据えたつもりとはいえ……垂れた眉尻、濡れた睫毛。
増した硬さに失策悟るも八方塞がり打つ手無し。
抉らんばかりの報復に、大きく叫んで字を呼んだ。
夢中で乱れる徐庶。
普段は物腰柔らかで優秀な彼が自分の手腕で前後不覚に陥る様は、法正の優越感と独占欲を溢れんばかりに満たした。
快楽に声が漏れるたび申し訳程度の恥じらいを見せたが──
下の口に本音を促せばせきを切った様に吸い付き、遠慮なく悦欲を貪らんとした。
心底甘美なひと時に、悪党は舌鼓を打ちながら応える。
その間、怒涛の報恩が絶えず徐庶の身に押し寄せ続けた。
力尽きた徐庶を胸元で受け止めた法正は、その固くてふさふさの黒髪を優しく愛でると柔らかく微笑む。
小さくリップ音を鳴らすと、くったり溶けた徐庶をそっと抱き寄せ直して、それから眠りにおちた。