今宵も心ゆくまで互いを確かめ合った法正と徐庶。
激しいひと時もなりを潜め、二人の間にはゆったりとした空気が流れている。
「徐庶……そこばかり気にして何が面白い」
「だって法正殿の勲章じゃないですか、ここは」
そう言って徐庶は法正の右胸に残る矢傷の跡に口付けを落とした。それは漢中の戦いで一本の矢から劉備を庇った時に負ったものだった。今ではすっかり完治したが、肌を矢尻が抉った名残は残っている。
その辺りに頬を寄せて目を閉じる徐庶。程よく鍛えられた褐色の胸元を枕にして、幸せそうに呟いた。
「貴方も触ってくれませんか。俺の……」
法正はくっくとおかしそうに笑った。
「お前のは沢山ありすぎる。選ばせる気か?」
徐庶はおもむろに身を起こすと、法正をじっと見つめる。それから得意げな顔で微笑んだ。
「すみません……」
そう言って法正の頬に手を添え、親指の腹でスッと撫でる。
子ども扱いされた様で少々気に入らなかった悪党は、徐庶の首に手を掛けてぐいっと引き寄せた。
「えぇと、顔には──」
「ここには今から俺が跡をつけてやるよ」
そしてもう少し近づくと、徐庶の唇を甘噛みして見せた。やんわり歯を立てたり食んだりするのがくすぐったくて、二人は暫し同じ事をやったりやり返したりした。鼻先や髪が肌を掠め合う。
ひとしきり楽しんで気が済むと、法正がこう切り出した。
「……おい、始めからやり直すぞ」
徐庶にはそれがどういう意味か直ぐに分かって、再び身体を甘く疼かせた。
「いくらでもどうぞ──」
そして、全身のあらゆる場所を法正に捧げた。