秘密はそっと箱にいれたまま【むいこて】 手のひらに収まる小さな箱。左右に振ればカラン、と軽快な音が鳴る。
寄木細工の秘密箱。正しい手順で動かさなければ開かない箱に、彼は一体何を入れたんだろう。
「ねぇ、これ。何が入ってるの?」
カラカラと音を鳴らしながら尋ねれば、火男の面を付けた小さな彼は「あー……」とばつの悪そうな声を上げた。
ちょんっと隣座った彼は僕の手から箱を取り上げると「どこにありました? これ」と箱を指す。すぐそこの棚だと伝えれば「そんな所に……。意外と見てないもんだな」なんてひとりごちる彼に特段わかりにくい場所にあった訳でもないその箱はなんなのか尋ねる。
彼の小さな手にも収まる小さな小さな箱。
箱を懐かしそうに撫でる彼の姿になんだか胸がざわつく。一体、誰が作った物なんだろう。そしてそれに何を仕舞ったのか、気になって仕方がない。
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