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    Juliet

    @J_Juliet_ts2

    とりあえず表に出すのはちょっとな…(CPとか特殊エロ)なやつをここに。

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    Juliet

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    深松小説/全年齢
    不調の松本を、深津が立ち直させる話。
    全年齢だけどかわいいバードキス(だけ)します。

    #深松小説

    星を磨き、さらに輝かせて「松本!交代だ。……沢北!」
    「はい!!」

    「、はい」

    この一週間、誰がどう見ても松本は不調だった。


    3年生が先月引退し1・2年生だけの練習となり、以前より広々と使えるようになった体育館でバスケ部員のやる気は増していた。
    2年に上がるのと同時にレギュラー入りを果たした松本も例外ではなく、ベンチではなく試合に出られるように少しの時間でもボールに触れ、体力をつけようと朝晩走り込みを行い、部活の時間も手を抜かず真剣に取り組んでいる……のに。

    松本は近くに居たマネージャーに「顔を洗ってくる」と告げ体育館を出た。世間的にはまだまだ夏だが秋田県の夏はだいぶ涼しく、外にある蛇口で顔をあればぐちゃぐちゃになった思考がほんの少しだけスッキリした。

    「…俺に何が足りないんだ?」

    タオルを頭から被り蛇口から流れる水を見ながら無意識に口から出た言葉は、松本がこの一週間ずっとずっとずっとずっと心を蝕んでいた疑問だった。

    あと何が足りない?何をすればいい?
    …アイツにあって、俺にないものは何?

    思わず眉間にシワを寄せる。アイツって誰。いいや、そんなの自分がよく分かっている。アイツと自分を比べてるのか?比べなくてもいい。アイツはアイツ、俺には俺の強さが……、、


    俺の強さって、何?






    「松本」


    沈んでた意識がハッと戻る。いつの間に近くに来ていたのか、深津がすぐ隣で出しっぱなしだった蛇口を捻り水を止めていた。

    「、あ、深津、すまない、ボーッとしてた」

    「…」

    「…あ、部活、戻らなきゃな、」

    「監督宛に電話が入ったから、今は10分休ピョン」

    「、そ、うか。はは、聞こえてなかった」

    「……松本、今日はもう早退しろピョン」

    「…え?」

    松本は目を大きく見開いた。早退?何で?逆に残って練習をしなければならないのに?

    ……俺、邪魔ってことか?


    「松本!!」

    また、沈みかけていた松本の意識が深津の怒号ともとれる一声でハッと戻る。体育館の中にも深津のその声が響いた為、何だ何だと扉から数名顔を出し2人の様子を伺っている。

    「…」

    「松本、今日はもう早退しろピョン。先に風呂入って、ご飯食べて、宿題済ませて、俺の部屋に来いピョン。話がある」

    「…、話?」

    「ピョン。…早退の件は俺から監督に言う。荷物は俺が持って来るから、そのまま寮に戻れピョン」

    「……深津…何で…?俺まだ、」

    「練習、始まるから俺は戻るピョン」

    深津はまだ話している松本を遮り、背を向けて体育館へ戻る。恐ろしい顔をしていたのか、体育館の扉から2人を見ていた部員は「ヒィッ!」と声を上げ逃げていった。
    そして無情にも松本を外に一人残し、体育館の扉はガチャリと閉められたのだった。





    「オイ、あんな言い方ないだろ」

    扉が閉められた途端、一之倉が深津のTシャツを掴んだ。
    思いっきりコメカミに青筋が立っておりブチ切れ寸前なのは誰が見ても分かりきっていた為、マネージャーが2人の間に入る。

    「!、待て、一之倉、」

    「……イチノ、手、離せピョン」

    「松本が今どんな状況か分かってるだろ。何でそう突き放すようなこと言うんだ」

    「部活中ピョン。一旦この話は終わり。…言っとくけど、俺は松本のこと大好きピョン」

    思ってたこととは違う言葉が深津の口から出た為、一之倉だけでなくマネージャーも、ハラハラしながら見ていた野辺も、深いため息を吐いていた河田も、話を聞いていたその他部員も全員キョトン……となっている。

    「、はぁ?急になに?」

    「まぁ、俺に任せて欲しいってことピョン」

    真顔で「ヨシ!もう10分経つピョン」と言う深津に戸惑いながらも、練習を再開しようと全員動き出す。

    先程閉じられた体育館の扉を無表情に見つめていた1年生の男は、誰よりも早く練習に戻った。






    「一人の風呂ってこんな広いんだなぁ……」

    あの後、松本は固く閉じられた扉を無理矢理開けようとも思わず、深津の言う通りに寮へ帰った。いつも賑やかな寮は1・2年はまだ部活中、そして3年生の大半もこの時間はまだ進学や就職に向けての補習等で寮には帰って居ないこともあり、シンと静まり返っていた。

    共同の風呂も恐らく俺が一番風呂のようで、でも俺なんかが一番に入るのは申し訳ないなと四隅で小さく体育座りをしながら湯に浸かる。

    目を閉じると、先程の光景が瞼に浮かぶ。
    深津は1年からこの山王工業高校のレギュラーとなった男であり、その実力は申し分なかった。深津のプレイに圧倒され、追いつこうと、深津に並ぼうと、深津の“エース”になりたいと必死に努力をした。もがいてもがいて、こんなにバスケを頑張ったのは初めてだと笑える程に。

    そんな憧れの男に、突き放されたと思った。

    「上手く行かねぇなぁ……」

    目尻から涙が溢れ、ホワホワ湯気がたつ湯にポタポタと落ちていく。情けない。……せっかく山王に来たのに、バスケの練習を早退して風呂で一人泣くなんて…本当に情けない。

    でも松本は流れ落ちる涙を止めることができなかった。


    ・・・


    コンコン

    深津はノートから目を外し、己の部屋のドアを見る。

    「どうぞ、ピョン」

    そう声を掛けると、古びた蝶番がギー…と音を立ててドアが開き、遠慮がちに松本が顔を覗かせた。

    「…松本だけど、今大丈夫か?」

    「あぁ、来てくれてありがとピョン。あ、入ったら鍵閉めて欲しいピョン」

    「……お邪魔、します」

    パジャマ(と言ってもTシャツにジャージ)を着た松本が恐る恐るといった感じで入り、ドアノブにある鍵を捻った。

    「へぇ、キャプテンの部屋は2段ベッドないんだな…初めて入った」

    「一人だから布団ピョン。でも畳んだら広くなって皆で集まってミーティングできるから良いピョン」

    通常バスケ部の寮は二人部屋だがキャプテンは一人部屋になる決まりが代々あり、深津もそれに伴い一人部屋となっていた。通常2段ベッドが置いてあるスペースには布団が一組敷いてある。
    松本は学習机に座った深津を見て何処に座るか少し考えてたあと、布団の横にチョンと座った。

    「……で、話って…」

    「…まぁ、う〜ん。最近の松本の不調のことピョン」

    ――やっぱり。
    松本は深津から目線を外し、床を見る。何を言われるのか。レギュラーから外される?…可能性はある。

    「また松本の悪い癖ピョン。どうしてそう殻に閉じこもろうとするピョン?」

    深津はため息をつき、教科書を閉じた。
    椅子から腰を上げ松本の目まで行くと、固く握られた両手を包み込むように取って目の前にしゃがむ。

    「ここ最近、オーバーワークだ。身体に負担をかけすぎて、思う様に動けなくなってるピョン」

    「…」

    「それが、お前の良さを消してしまってるピョン。強気な姿勢も、それに反した丁寧で綺麗なシュートも、…俺への期待の眼差しも」

    松本はゆっくりと顔を上げ、目の前に居る深津を見る。
    数秒目が合ったが、責められてるようで…また逸らしてしまった。

    「……オーバーワーク?…はは、まさか」

    「お前の考えてることは分かる。……確かに、アイツは凄いやつピョン。でも、それでも俺は松本をエースとしたチームを構想してるピョン。松本の代わりは居ない」

    今まで軽く触れていた両者の手が、ゆっくり力が込められ恋人繋ぎのように絡まる。

    「、」

    「自分で殻に籠って、自問自答して、悪い方向に進んで…。俺は頼りないピョン?」

    「た、頼りない訳ないだろ!?…お前に並びたくて、頑張って、でも上手くいかなくて……、だから、お前にそう言われる程の人間じゃないんだ、俺は…」

    今まで喉で塞き止められていた本音であろう言葉が松本からポツポツと漏れ出す。誰にも…特に尊敬している深津に、こんな暗い感情を聞かせたくなかったのに。

    「沢北のこと、恨みたくないんだ。俺が練習不足なだけだから。……その不足を補おうとすることがオーバーワークなら、俺はもう沢北には勝てないのかもしれない」

    「…松本」

    「…いや、違う、別に沢北に勝たなくてもいいんだ。沢北には沢北の強み・俺には俺の強みがあって、2人でチームをいい方向に導けば……、…でも俺の強みが分からなって、どれだけ練習しても苦しくて、重たくて、」

    段々と息が上がり、松本は思わずギュッと目を瞑る。
    怖い、怖いんだ。俺からバスケを取ったら、何もないから……



    目を強く瞑り下を向いていた松本は顔を無理矢理上に向かされ、唇に柔らかい何かがチュッと当てられた。

    「、へ?」

    思ってもみなかった感触に思わず目を開けば、目の前に深津の顔があった。松本が何か反応を示す前にまた深津は顔を近付け、また先程と同じチュッという音と感触があった。

    松本は2回目は目を開いていたから、その感触が何なのかハッキリと分かった。キスだ。

    「、へ?」

    「はは、さっきと同じ反応ピョン」

    深津は笑いながら松本の頬に手を当て、唇を合わせる。チュッという音がまた鳴った。さ、3回目。

    「……、?、??」

    「ボーッとしてたら、またしちゃうピョン」

    松本は肩を押され、コロンと布団に転がった。
    色んなことが起こりすぎて呆然としていた為すぐ起き上がることもできず、深津から上から押さえつけられる。

    「松本は考え込みすぎることが欠点ピョン。もっとお気楽に…とは言わないが、そんなに塞ぎ込んだらできるモンもできなくなる」

    松本は目を真ん丸にしながら静かに聞いている。

    「肩の力を抜け、今までの俺たちの努力を信じろ。…お前は強いピョン。何せ、俺が山王に来て一番最初に目を惹かれたのはお前だから」

    深津は松本の上から退き、松本の手を引いて身体を起こす。未だに目を真ん丸にしいるが、その目にはうっすらと水の膜が張っている。

    「お前はこんな所で終わる男じゃないピョン。俺が目指す最高のチームの為に力を貸して欲しい」

    「…当たり前だ。その為に山王に来たからな」

    「……そこは“深津の為に頑張る”って言う場面ピョン」

    プク!と頬を膨らませた深津が、松本とおでこをくっつけ合う。先程までオロオロと迷子の子供のような目をしていた男が、今は眩しいほどキラキラと輝く目を深津に向ける。

    「深津、ありがとう。少し、分かった気がする」

    「…全く、俺が居ないとダメピョン?」

    「うん。ダメかも」

    顔がいい男の優しい笑みを真正面からくらい、不意打ちの右フック(くらいの衝撃)がキマった深津は思わず固まってしまう。

    「だから、これからも俺のケツ叩いてくれよ!」

    ピッカピカ・キッラキラの純新無垢な笑顔を前に、深いため息をつく。全く、俺が守らなきゃこいつすぐ食われるピョン…。

    「……ハァ〜〜〜〜〜〜。任せろピョン。叩いたり打ちつけたりは得意ピョン(たぶん)」

    「…?おう!深津なら任せられる、ありがとな!」

    2人はそのまま布団に寝転び眠りについた。
    明日には松本の本来のプレイスタイルが見れることだろう。














    「なんだ。そのまま潰れて辞めるかと思ったけど」

    松本のプレイをベンチで見ながらポツリと呟く。飛び散る汗すらも魅力的に引き立て輝きを放っている男。綺麗な顔して、意外と荒いプレイもするんだな。深津サンとの連携もバッチリだ。今まで会った事ないタイプの選手だな。いいな、いいな、

    「おもしろいな、松本サン」
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