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    mitotte_kazu

    @mitotte_kazu

    自機ルガオスとエタバン相手のヴィエラとかよそよその話とかNPCよその話とか置いとく場所。
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    mitotte_kazu

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    ナイトさん(@haruorigin )の誕生日を祝うレドリアさん(@ryudran663 )の話。

    生誕祭Ⅲ 少し慣れてきた依頼をこなし、帰ってきた家の扉を開けるといやに焦げ臭い。眉間に皺を寄せたナイトが焦げ臭さの元を辿ると、台所だった。敢えてもう少し詳細を述べるならば、台所で炭化した何かを手にして泣きそうな顔をしていた英雄殿だった。
    「……何やってんだよ」
     どっと増した疲労感に顔を顰めると、目の前の彼は更に悲壮な表情になる。しどろもどろな彼の供述を要約すると、ケーキを焼きたかったらしい。
    「卵と小麦粉と、砂糖でできるって……」
     なるほどよく見ればレシピが広げられ、その周りには英雄殿が不慣れな戦場で奮闘した様子が伺えた。粉々に砕けた卵の殻と散らかった粉類、レシピの見出しからすると彼の手の上の物体はシフォンケーキになるはずのものだったらしい。思わず笑いが込み上げてきた自分に彼はまた萎縮した。
    「とりあえずそれ置いて、ちょっとこの辺拭いとけ」
     襟元を緩め、それだけ伝えて手を洗いに洗面台へと向かう。頷いてしおらしく片付けを済ませた彼に合流して、袖を捲った。
    「で?きちんとメレンゲは泡立てたか?オーブンの余熱は?」
     畳み掛けるような質問に彼が目を回す。英雄殿の滅多に見れない混乱状態に口元を歪め、軽量器と大振りなボウルを用意する。
    「まずはオーブンの余熱。十分温まってないと上手く焼き上がらないからな」
     手早く余熱の設定を済ませ、ボウルと材料に向き直る。
    「で次に生地の準備。卵を白身と黄身に分けて、
    卵白は使う直前まで冷やしておく」
     保冷庫にボウルに分けた卵白を保冷器にしまい、卵黄の入ったボウルに測った砂糖の1/3量を加え、白っぽくなるまで混ぜて彼に手渡す。彼に混ぜ続けるよう促し、オイルを加えてから全体が白っぽく馴染むようになった辺りで更に牛乳を注いだ。残りの砂糖は入れなくていいのか?と不思議そうな彼を無視して、小麦粉を追加して混ぜ続けさせる。
    「で、一番ダルいがシフォンケーキのキモのメレンゲ作り」
     よく冷えた卵白をほぐすようにゆっくり混ぜてから残りの半量の砂糖を入れ、軽く息を吸って一気に泡立てる。全体が柔らかく泡立ってきた辺りで残しておいた砂糖を全て加え、ツヤが出るまで泡立て続けた。こんなもんかと手を止めると、見入っていた彼と目が合う。気まずそうに目を逸らした彼にボウルを寄越すよう手で示すと、慌てたように差し出される。スパチュラでメレンゲをさっくり4分割した内の一塊を受け取ったボウルに落とし、泡立て器でしっかり混ぜる。残りのメレンゲも加え底から馴染ませるように切るように混ぜる。
    「こうやって切るように混ぜるとメレンゲの泡が潰れない。やってみろよ」
     この泡がケーキの食感と膨らみになる、と付け足すとぎこちない手付きで混ぜていた彼が縮こまった。泡立て器で混ぜ続けたなと思いつつ、全体が馴染んだ辺りで止めさせる。型に生地を流し入れ、平らに軽くならして余熱を終えたオーブンに放り込む。 
    「さて、」
     焼き上がりを待つ間に尋問してやるかと彼に向き直ると、何かを察したのか縮こまったままの彼がこちらの言葉を待っていた。何した?と尋ねてみると、分けずに砂糖を入れただの全部泡立て器で混ぜただの英雄殿の貴重なやらかしが次々と出てくる。
    「焼き上がったと思って取り出したら膨らんでなくて、焼きが甘いせいかと焼き直そうとしたらナイトからもうすぐ帰るの連絡が来て……急いで焼き上げようと、その、ファイアを、」
     火力調整はしたんだと手をわたわたと動かしながら弁解する彼の最大級のやらかしについ笑ってしまった。
     一通り笑っている内に焼き上がったケーキを取り出し、型の中央部に開いた穴を手近にあった瓶に立てて冷ます。
    「逆さにして冷ますと縮まないんだよ」
     何をしているんだと怪訝そうな彼に説明すると、なるほどと納得された。それにしても、と改めて彼に向き直る。
    「急に菓子作りなんて、どういう風の吹き回しだ?」
     珍しいこともあるもんだと揶揄う口調で言ってみると、彼が口籠った。その、と聞き取りづらい声でボソボソと喋られ、つい顔を近付けた。
    「ナイトの誕生日だったから……」
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    mitotte_kazu

    PASTバレンタインなのでチョコ渡す🐇さんとチョコ食べる🦍の短い話
    片割 この海の街にもイベントの余波が来ているようで、浮ついた雰囲気が漂っていた。幸せそうな人を見るのは嫌いではないが、この空気の中独り歩くルガディンはどこか居た堪れなさを感じていた。
    それでもイベントのおかげで普段ならあまり手を出さないようなチョコレートが並んでいる店頭を眺めるのは楽しいものだった。買ったところで勿体なくて食べられないのは目に見えているし、貧相な自身の舌はどれを食べても美味しく感じるのだろう。折角だからと思いつつ平凡な板チョコレートを手に取る。と、掌からチョコレートが消えた。目線を掌から上げるとルガディンから取り上げたチョコレートを興味深そうに眺めるヴィエラがいた。

    「買うの?」
     握ったチョコレートをひらひら翳しながらヴィエラが首を傾げた。まぁ、とルガディンが頷くとふぅんと数回頷いた彼女がそれを棚に戻す。買うと言ってるのに、と棚のチョコレートに伸ばされた彼の手をヴィエラの手が掴んだ。ルガディンが何なんだと困惑している間に人気の少ない通りまで引っ張り出される。されるがままだったルガディンの離された掌にちょこんと小箱が載せられた。どこか見覚えのあるデザインの小箱をしばらく眺めてから、目の前のヴィエラに視線を向ける。にんまりと意味深に笑った彼女が覚えてる?と首を傾げた。ルガディンが数回頷いて開けても良いか了承を得ると、勿論、と微笑まれた。
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