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    mitotte_kazu

    @mitotte_kazu

    自機ルガオスとエタバン相手のヴィエラとかよそよその話とかNPCよその話とか置いとく場所。
    リアクションとても嬉しいですありがとうございます

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    mitotte_kazu

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    瀬島さん(@Doggy_t_ff14 )が素敵な台詞をくださったのでそちらから派生した🦍の短いお話

    報酬 ルガディンは鬱蒼とした黒衣森から空を仰ぎ見る。木々の隙間からやや傾いた太陽の位置を確認してから、手元に視線を戻した。ここでしか手に入らない薬草と香草の束を数え、必要量揃っているか再確認する。良く似た毒草もあると聞いたこともあり、かつて目にした文献の内容を思い返す。葉の裏や花弁の色、葉の産毛の有無や茎を折った際に滲む液体の状態を記憶と照らし合わせ、念入りに薬草を見極め直した。依頼内容と相違ない量と素材なのを確認し、彼は森を後にする。

    「待たせたな、ご依頼の薬草と香草を揃えてきた」
     接客が途切れたタイミングを見計らって声をかけると、依頼主であるミューヌは嬉しそうに顔を綻ばせた。
    「うん。良質な薬草と香草、ありがとう。とても助かったよ」
     通りがかったカーラインカフェを覗き込んだ際に目が合った店主に頼み込まれ、薬草と香草集めの依頼を請け負ったのだった。目を伏せ香草に鼻を寄せた店主が歌うように呟く。
    「今夜にでも入り用だったんだけど、少なくなっていて困ってたんだ」
     よく使うから本当に助かったと微笑みかけてくる店主につられて、彼も目を細める。普段からお世話になっているからこれぐらい幾らでも、と頷いて答えると、心強い、と嬉しそうに返ってきた。そうそう、と忘れていたように店主が皮袋を差し出してきた。信頼はしているものの、ヴィエラに不用心だと諭されたのを思い出し念の為中を確認する。

    「……あぁ、こんなにいいのか?」
     いくら困っていて、顔馴染みだからとはいえ謝礼にしては少々多過ぎた。首を傾げつつ数え直し、色を付けてもらうには貰いすぎだと店主に伝えると、
    「たまに良く似た毒草も混じってる時があるけど、それもなかったから」
     それにとても助かったからね!と晴れやかな表情で返ってきて閉口してしまった。それに、と前置きした店主は片目を瞑って続ける。
    「また、お願いしやすいようにね?」
     ここまで言われたら引き下がるわけにも行かなかった。多目に貰えた分どこかしらで還元すれば良い話だ。皮袋を懐にしまいながら店内に何気なく視線を走らせる。と、見慣れない商品が目に留まった。

     艶やかにコーティングされた彩り豊かなフルーツをたっぷり載せたタルトだった。ナパージュだったか、とかつて姉に教わった単語を思い返しながらまじまじとタルトを眺める。少し前にヴィエラが言っていたのは恐らくこれだろうなと上に載っているフルーツで判断する。今が旬のフルーツは艶やかで、香ばしく焼き上げられたタルト生地はコーヒーにも紅茶にも合うだろう。
    「どうかしたかい?」
     首を傾げた店主にあぁいやなんでもない、と反射的に返してしまう。
    「……いや、なんでもなくはないか。それを、」
     失礼な言い方だったと首を振り、件のタルトを指差す。普段ならもう一つ、違う種類のケーキなりを一緒に買って彼女と分けるところだが、彼女の力強い説明と実物の魅力には抗えなかった。
    「……二切れ」
     指していた指を一本増やして店主に向けると、にっこりと微笑んで箱に詰めてくれた。折角なら違うのが良かったと言われるだろうか。箱を持っていない方で後頭部を掻いた後、リンクパールでの通信を試みた。
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    mitotte_kazu

    PASTバレンタインなのでチョコ渡す🐇さんとチョコ食べる🦍の短い話
    片割 この海の街にもイベントの余波が来ているようで、浮ついた雰囲気が漂っていた。幸せそうな人を見るのは嫌いではないが、この空気の中独り歩くルガディンはどこか居た堪れなさを感じていた。
    それでもイベントのおかげで普段ならあまり手を出さないようなチョコレートが並んでいる店頭を眺めるのは楽しいものだった。買ったところで勿体なくて食べられないのは目に見えているし、貧相な自身の舌はどれを食べても美味しく感じるのだろう。折角だからと思いつつ平凡な板チョコレートを手に取る。と、掌からチョコレートが消えた。目線を掌から上げるとルガディンから取り上げたチョコレートを興味深そうに眺めるヴィエラがいた。

    「買うの?」
     握ったチョコレートをひらひら翳しながらヴィエラが首を傾げた。まぁ、とルガディンが頷くとふぅんと数回頷いた彼女がそれを棚に戻す。買うと言ってるのに、と棚のチョコレートに伸ばされた彼の手をヴィエラの手が掴んだ。ルガディンが何なんだと困惑している間に人気の少ない通りまで引っ張り出される。されるがままだったルガディンの離された掌にちょこんと小箱が載せられた。どこか見覚えのあるデザインの小箱をしばらく眺めてから、目の前のヴィエラに視線を向ける。にんまりと意味深に笑った彼女が覚えてる?と首を傾げた。ルガディンが数回頷いて開けても良いか了承を得ると、勿論、と微笑まれた。
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