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    mitotte_kazu

    @mitotte_kazu

    自機ルガオスとエタバン相手のヴィエラとかよそよその話とかNPCよその話とか置いとく場所。
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    mitotte_kazu

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    料理作る🦍と🐇

    ##ディンエラ

    アヒージョ ルガディンが客室でアイテムの整頓も兼ねて革細工の制作に励んでいる時だった。けたたましく叩かれるドアに居留守を決め込むわけにもいかず、嫌な予感がしつつドアノブに手をかける。
    「やっほー」
     ノックのために握られた拳を緩めたヴィエラが軽やかに微笑んでいた。何事かと尋ねると反応が薄〜い、と唇を尖らせられる。とりあえず中に入れて、と断る隙も与えずするりと滑り込んできた彼女は定位置のようにベッドに腰掛ける。改めて用事を尋ねるとにんまりと微笑んだ彼女が鞄から何かを取り出してきた。

     じゃ〜ん、と焦らすように取り出されたのは細やかに描かれたラベルの貼られた瓶だった。彼女の様子とラベルの絵や文字に目を走らせて酒か、と呟くとそう!と嬉しそうに耳を立てられる。
    「美味しいって話題の果実酒なんだって!」
     ようやく手に入ったんだぁと嬉しそうに瓶に頬を擦り寄せたヴィエラに、それはよかったなとルガディンが返す。1人で飲むには多いから付き合えとでも言われるのか、はたまた単に嬉しくて見せびらかせにきただけか。彼女の真意を図りかねていた彼にぴたりと動きを止めた彼女がこちらを見上げてくる。
    「美味しいものは共有したいじゃん?」
     前者だったか、と思った彼にヴィエラはにっこりと微笑んで続ける。
    「美味しいお酒には美味しいおつまみ、でしょ?」

     全てを察したルガディンが溜息を吐いて頷くのを、ヴィエラは満足げに眺めていた。ホテルのスタッフにワインクーラーとグラスを言付けた彼が自身の鞄の中を眺め、少し考え込む。メニューが浮かんだのか数回頷いて鞄から材料を取り出し、並べた。
     何種類かの茸を大きさを揃えて切り分け、海老の背腸と殻を取り除いていく。細かくニンニクを刻み、温めたスキレットにオリーブオイルと一緒に加える。
    「アヒージョだ!」
     嬉しそうに声を上げたヴィエラに御名答、とルガディンは目を細めた。
     ニンニクを焦がさないよう気を付けつつオイルに香りを移すように弱火で加熱を続け、火の通りにくい食材から投入していく。ふわりと漂う美味しそうな香りを堪能するように彼女が深呼吸をし、頬を緩ませた。

     遠慮がちなノック音の対応をヴィエラに頼み、バゲットを薄めに切り、軽く炙ってトースト代わりにする。届けられたグラスとワインクーラーに果実酒を入れて冷やし、嬉しそうな彼女がワゴンごと室内に運び入れてくる。早く早く、と落ち着かない様子で席に着いた彼女の前に温め直したアヒージョともう一つのスキレットとバゲットを並べる。おお、と歓声を上げた彼女につられて口角が上がってしまった。冷めない内に食べよ!とはしゃぐ彼女に頷いて応え、席に着いた。こんがり焼き上がったバゲットを一口サイズに千切り、具材と共にニンニクの風味が移ったオリーブオイルをかける。その間に彼女が手慣れた様子で瓶を開け、グラスに果実酒を注いでこちらに差し出してきた。礼を述べて受け取り、アヒージョの載った皿を代わりに差し出す。
     茸を口に運び美味しそうに身悶えする彼女に目を細め、自分の分を咀嚼する。オイルの染みたバゲットを噛み締めると、口の中にじんわりと具材の旨味が溶け込んだオリーブオイルの風味が広がった。彼女の反応も含めて、とりあえず人に食べさせて大丈夫なものには仕上がっていたようで安心する。
    「なんで調理師始めようと思ったの?」
     その様子を見られていたようで、ヴィエラに尋ねられる。自身の味覚や料理の腕前に自信がないことは彼女には伝えてあるし、確かに謎だなとバゲットを咀嚼しつつ考え込む。
     料理によって戦闘などに異なる効果が発揮されるのはわかっていたし、敵を倒していく内に気付けば溜まっていた素材の消費も兼ねられるなら、という軽い気持ちで始めた記憶が蘇る。
    「……実用性、とか?」

     首を傾げつつそう返すとふぅん、と呟かれた。こっちも食べていい?とそのまま続けたヴィエラがもう一つのスキレットを指差す。その中にはこんがりと焼かれたチーズが蜂蜜とレーズンに浸されていた。
    「バゲットに載せて食べるといいらしい」
     へぇ、と興味深そうに呟きつつ、言われた通りにバゲットにチーズと蜂蜜を掬って載せ、ヴィエラは口に運ぶ。美味しそうに声を漏らして嚥下した彼女がなにこれ!?と顔をこちらに向けてきたが、ルガディンは苦笑してさぁなと返す。
    「どこかの店の前に置かれたメニューで見かけてな。美味そうだなと思って適当に再現してみただけだ」
     チーズと蜂蜜だから不味くなるわけは無いだろうが口に合ったのなら良かった、と目を細めた。チーズなら果実酒とも合うだろうという感覚的なものだったがその認識は間違ってなかったようで、美味しそうにもう一口齧る彼女を眺めグラスを傾ける。こういう風に相手の反応を見るのが好きだからかもしれない、という理由は少し甘すぎるように思える果実酒と共に飲み込んでおいた。
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    mitotte_kazu

    PASTヴァレンティオンを満喫している🦍と🐇の短いお話
    贈呈 毎年恒例になりつつある、海都でのヴァレンティオンの催事場巡りに今回も付き合っていた。ヴィエラに付き添っていただけの当初に比べて多少慣れてきたルガディンも、露天を覗き見比べる余裕が出来てくる。
    「これは今年の新作か」
    「そう〜!去年から定番になったこっちも美味しいよ!」
     少しわかってきたと思っていたが、やはり彼女の知識量などには勝てない。真剣な顔で次の店の品定めをする彼女の手から、戦利品の入った紙袋を苦笑しながら受け取った。ありがと、と身軽になった身体で手早く会計をすませる彼女を遠巻きに眺めていた。
    「ここの好き」
     何軒目かを巡っていた時に彼女が呟いた店のチョコレートや包装に見覚えがあった。以前貰ったものだな、と何気なしに視界に入った価格を二度見して、目を剥いてしまう。横に書かれた説明を流し見て、ブランド物のククルビーンを手間暇かけて加工してウルダハで販売している有名店だとようやく把握できた。通りで高価で美味いはずだと1人納得している横で、また真剣な表情で陳列されている商品を吟味している彼女が頷いた。これとこれください、と慣れている彼女の指がチョコレートの上を滑っていく。彼女が選んだ商品が丁寧に包まれていくのを眺めながら、パッケージまで可愛いな、などと思った。
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    recommended works

    mitotte_kazu

    PASTバレンタインなのでチョコ渡す🐇さんとチョコ食べる🦍の短い話
    片割 この海の街にもイベントの余波が来ているようで、浮ついた雰囲気が漂っていた。幸せそうな人を見るのは嫌いではないが、この空気の中独り歩くルガディンはどこか居た堪れなさを感じていた。
    それでもイベントのおかげで普段ならあまり手を出さないようなチョコレートが並んでいる店頭を眺めるのは楽しいものだった。買ったところで勿体なくて食べられないのは目に見えているし、貧相な自身の舌はどれを食べても美味しく感じるのだろう。折角だからと思いつつ平凡な板チョコレートを手に取る。と、掌からチョコレートが消えた。目線を掌から上げるとルガディンから取り上げたチョコレートを興味深そうに眺めるヴィエラがいた。

    「買うの?」
     握ったチョコレートをひらひら翳しながらヴィエラが首を傾げた。まぁ、とルガディンが頷くとふぅんと数回頷いた彼女がそれを棚に戻す。買うと言ってるのに、と棚のチョコレートに伸ばされた彼の手をヴィエラの手が掴んだ。ルガディンが何なんだと困惑している間に人気の少ない通りまで引っ張り出される。されるがままだったルガディンの離された掌にちょこんと小箱が載せられた。どこか見覚えのあるデザインの小箱をしばらく眺めてから、目の前のヴィエラに視線を向ける。にんまりと意味深に笑った彼女が覚えてる?と首を傾げた。ルガディンが数回頷いて開けても良いか了承を得ると、勿論、と微笑まれた。
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