ロランベリーシロップ ジャム作りで余ったロランベリーを分けて欲しい、と切り出したルガディンにいくらでもどうぞ、とヴィエラは返した。
「独り占めするの?」
彼女の問いにそんなつもりはない、と彼は苦笑した。
「腐らせるぐらいならシロップでも仕込んでおこうかと思ってな」
シロップ、と繰り返した彼女が難しいの?と首を傾げる。いや、と必要な器具を準備しながら彼は返す。
「火を使わない分、ジャムより手軽だとは思う」
砂糖に手を伸ばした彼を眺めながら、見てていい?と彼女が尋ねる。ご自由に、と彼は笑った。
細かく賽の目に刻んだロランベリーをスプーンで掬い、煮沸消毒した瓶に入れていく。瓶の底一面に満遍なく敷き詰めた上を埋めるように砂糖を加え、またロランベリーを均等に詰めては砂糖で埋める。詰めて埋める作業を刻まれたロランベリーがなくなるまで交互に繰り返した。
「あとは出てきた水分が全体に行き渡るように揺するようにして、数日間待てば完成だ」
使用した調理器具を洗いながらルガディンが呟いた。
「めっちゃ簡単じゃん……」
「水分のある果物ならベリー以外にも使えるからな」
柑橘類でも作れたぞ、と彼は笑って続ける。
「加熱しない分、果物によっては綺麗な色のシロップができるのもいい点かもな」
へぇ、と呟いたヴィエラが砂糖塗れのロランベリーが詰まった瓶を見つめながら訊く。
「このシロップ、出来上がったらどうするの?」
「なんでも使えるぞ」
炭酸や酒で割ってもいいし、砕いた氷にかけてもいい。この間の紅蓮祭で食べたかき氷を思い出したのか、頬を緩めていいねと呟いた彼女にルガディンは頷く。
「試してはないが、紅茶やヨーグルトに入れてもいいかもな」
「それ美味しそう!」
わぁあと目を輝かせたヴィエラに、ルガディンが瓶を一つ差し出す。いいの?と目を丸くした彼女にお礼代わりに、と彼が目を細めた。
「ベリーの?」
「それもあるが、日頃の礼の方が大きいかもな」
簡単なものだが、と苦笑した彼にありがと、と彼女は瓶をかざす。ベリーから染み出した果汁が砂糖に浸透し、微かに紅く染まっていた。